データサイエンティスト系職種の年収事情

データサイエンティスト系の求人情報


現在のデータサイエンティストやその関連職の給料の相場については、検索すると求人情報がたくさん出てくるのでそこから大体の数値感は確認できます。


データサイエンティスト系は注目の職業として求人も増えてきつつありますが、日本では数年前までは特別高給というわけでもなく、ほとんどは通常の総合職としての範疇であったと思います。というのも、大体の求人情報には給与面の条件は「前職での経験を考慮する」というような記載がされており、私も実際過去にいくつか内定を得たとき提示された給与も前職の年収から大きく外れるものではありませんでした。


そもそも、もしデータサイエンティストとして採用されたとしても、前職でも経験者であれば同様の仕事をしているのに前職と転職先とで給与面での評価が大きく異なるということは考えにくいですし、未経験者であれば肩書がデータサイエンティストになっただけで急に給料が上がるということも通常ない話なので、特に違和感は感じていませんでした。


企業側の事情による給与の構造


それに元々それなりの企業であれば人事制度も整えられているので、どのくらいの職位になればどれくらいの給与になるかという給与テーブルというものも用意されています。この給与テーブルは、営業職とバックオフィス職では異なっているなどはあるかもしれませんが、データサイエンティストを新たに求人するからといって、彼ら向けの特別な給与テーブルもあらためて用意するといったことなども通常なかったのでしょう。


ただ最近は主にエンジニア等で人材獲得競争が進んでいるおかげで、データサイエンティスト系の求人情報の毛色も少し変わってきているようです。想定年収をしっかり記載したり、好待遇を謳っている求人もよく見ます。最初から年収1000万円以上と条件に記載されている高額案件もちらほら見かけるようになりました。(おそらく相当な高スペック人材に限るのでしょうけど)


データサイエンティストおよびその関連職の給与相場が上がることは歓迎ですが、基本的に人件費というものは企業の懐事情を無視して決まるものではないので、通常は儲かっている企業であれば高くなり、そうでない企業であれば安くなる(青天井はあまりないので規定範囲内で)のが自然です。最もその職種の人数がそもそも市場全体の中で少ない場合は、需要が供給を上回るので他の職種よりも相場がやや上がることもあるかもしれませんが、他の職種の何倍もの金額を出してまで雇うということはあまりしないでしょう。(外注や内部育成やコンサルなどより安価な他の手段を考える方が普通は先決なので)


つまり今のところは、たくさん給料を払える企業に雇われたならば高額になる、ということかと思いますので、高年収を目指す人はやはりそうした企業を目指すことが近道なのかもしれません。そうした企業で代表的なのはGAFAなのでしょうが、他にもそこそこ高額な求人を提示しているところもあるので、色々と調べてみるのも良いかもしれません。


今のうちはどちらかといえば事業会社でのポジションよりも、分析の委託やコンサルなどのサービスを提供している企業の方が高給な気がします。まだまだ内部での育成が進んでいるところは多くないので、外注に頼らざるを得ないところが多いせいでしょう。


またシニアやリーダークラスの給与条件が募集要項やヒアリングなどで確認できるところがあれば、若手の方がその企業で順調に出世したときの将来の年収をイメージしやすいので、そうした中から今後の給料に期待できそうなところを選ぶのもありかもしれません。また今はあまり見かけませんが、外資系企業の営業職のようにインセンティブボーナスの比率が高い雇用形態が可能ならば、多大な利益に貢献したと評価されることができた上で年収数千万円といったことも可能かもしれません。


今後の動向


一方でデータサイエンティスト系のスキルに需要と希少性を評価されている現在はともかくとして、今後もそうした傾向が続くとは限らないことも気にかけておくべきことかと思います。


この種のスキルを身につけた人たちは特に若い人たちにどんどん増えていますし、この種のスキルを持つ人でないとできなかったことが新たなWebサービスやソフトウェアの開発によってコモディティ化されつつもあります。そうなったときには需要やニーズも変わってくると思われますので、それに対応できるようなスキルや経験を身に着けておけるかどうかで今後の給料も左右されてくるようになるかもしれません。その道の第一人者であるくらい専門性が高くまた周りからも高く評価されていればまた事情は異なるでしょうが、そうした道を目指すのとどちらが難しいか、あるいは各人の志向に合っているかももちろん考慮すべきとは思います。


ちなみにある程度柔軟性の高いスキルとして代表的なのは、事業開発やマネジメント、営業スキルのような「モノやサービスをつくる、より良くする、売る」スキルかと思います。それらとデータサイエンス系のスキルと掛け合わせた経験などは重宝されるかもしれません。例えば、データ分析関連の技術を使った事業やビジネスを立ち上げた、その運営を効率化してコストを削減した/規模を拡大した、そのサービスを多くの顧客にセールスおよびデリバリーしたというのは、基本的なビジネスの形態が変わらない限りは今後も求められるスキルではないかと思います。


突き詰めれば、世の中のニーズが変化したとしても、それをいち早く察知して、手持ちのスキルや経験で実際に解決することができるかどうかを気にしてれば、仕事は見つかるような気がします。クライアントや所属企業から見ると、データサイエンティストに求めることは、データサイエンティストであることではなく彼らの役に立つことです。専門性を磨くことも重要ですが、それ以上にそれがビジネスシーンで活用できることかどうかが重要だと思われます。ということで、データ活用周りのニーズや課題には常にアンテナを高くしておく方がよいと思います。


もう一つ、今後に備えて目指すべき方向性の一つとして考えられるのは「生産性の高さ」です。優秀なエンジニアの給料がなぜ高額になるのかというと、一人で何人分もの仕事ができるからです。同じようにデータ活用等に関して、一人で何でもできるとか何人分もの役割をこなすことができる人がいれば、数人分の人件費を一人でまかなえるので高額な給料を支払うことも可能になります。もちろん色々できるといっても中途半端な器用貧乏状態は好ましくはないので、それぞれのスキルをそれなりのレベルにまで昇華させるには一朝一夕にできることでもないでしょう。ということで、データに関わる仕事は色々やってみつつ、派生する複数のスキルを伸ばしていこうという意識をもつのも良いと思います。