仮説の立て方1 何の仮説を考えるのか

データ分析とデータ見物


データ分析において、仮説を立てることは非常に重要です。データをとりあえず抽出・集計して見やすくした後で、そこから何かを読み解けないだろうか?と数字をただじーっと見物しているだけで何かの気づきや示唆を得られることはあまりありません。


何らかの気づきや発見を得たい場合には、そもそもその数値が良いのか悪いのか「評価」できなければなりません。数値の「評価」を行う術を持たないと、ただじっと見ているだけか、あるいは数値を並べ替えたり、軸を切り替えたり、むやみたらと比較してみたりと見る角度を変えることしかできないので、そのうち諦めて時間を無駄にしてしまって終わり、ということになりかねません。


そもそも数値の「評価」ができるようになるためには、「指針・基準」といったモノサシが必要になります。モノサシを用意をするためには、前提として何の評価をするのか、何のために評価をするのか、どのように評価をするのかなどもあらかじめ検討されている必要があります。そして、その上でデータの評価が良かったらどうするのか?悪かったらどうするのか?といった次のアクションを考えておかないと、データを見て評価できても、「ああ、そうか」「なるほど」で終わってしまいます。


データ分析と仮説立案


例えば、とある商品の販促施策が実施されたとして結果を分析してくれと言われたらどうするか考えてみましょう。


とりあえず集計可能なデータをむやみやたらと集めても、おそらく途方にくれます。


まず商品の販売目標があるのであればその数値を確認し、販売実績データから売上を集計して目標値を超えたかどうかをはっきりさせるということは必要になるでしょう。次に、もし目標値を超えられなかったならば原因を調べる、もし目標値を超えていたらなぜよかったのか調べてみるといった展開は想定されます。


ひとまず目標値を下回っていた場合で考えます。ここで「目標値を下回っていた理由」についての仮説を立てます。目標値がもし前年同月の数字であった場合、前年同月との比較をしているということなので、前年同月との違いを考えます。


なるべく漏れなく検討した方が良いので、フレームワークなどは役に立ちます。なおフレームワークといっても特殊なものでなくても良く、例えば5W1Hなども汎用性は非常に高いです。


When 実施時期は同じだが、時間帯/曜日などに違いはないか?
Where 対象エリアや店舗などに差はないか?広告媒体に違いはないか?
Who ターゲットは異なっていないか?
What 訴求する商品の違いは?
Why インセンティブの違いは?
How キャンペーンの条件、インセンティブの獲得方法、キャッチコピーなどの違いは?


ちなみに上記の内容は施策の企画段階で明らかになっていて然るべきものばかりです。本来は企画段階から異なる要素(変えたい要素)を洗い出しておき、目標値を設定する際にはその違いを考慮するのがベターです。(例えばそもそも昨年よりも店舗数が減少しているならばそれによる売上減の影響が考えられるので単純に前年同月の数値を目標にするのではなく、1店舗当たりの売上で前年同月を超えた値の全店分を目標に持ってくる、など)


よって、施策後にその結果の解釈について仮説を立てるのは遅すぎということになります。実際、終わったことの分析を依頼されることは非常に多いです。(愚痴)


仮説立案のタイミング


さて、売上目標を下回っていた原因の話に戻ると、前年同月との違いがもしひとつしかなかった場合はそれが原因である可能性が高いです。しかし、事前には知りえなかった外部環境の変化などもあるため、たいていは複数の違いがあることが多いです。


そうなると売上が目標値を下回った理由は、外部要因も含めてそれら複数の要因のどれかの可能性が高くなり特定するのが難しくなります。ひょっとすると、データを細かく見ることでそれらのいくつかの違いに差のない範囲で比較して原因の一部をつぶすことはできるかもしれませんが、確実ではありません。


ではどうすれば良いのか?


そもそも仮説とは何に対する仮説だったのでしょうか。売上目標未達の原因は何か?の仮説を考えていたはずです。では元々売上目標達成のために何をしようとしていたのでしょうか?


おそらく施策の企画段階で売上増につながる仮説を立てていたはずです。そしてそれを実装するために新たに導入する各種の工夫点が検討されていたのではないでしょうか。その工夫点の効果の測定方法や評価方法をあらかじめ検討しておくと、施策の立て付けを調整しておくこともでき(工夫をした店舗としない店舗を用意するなど外部要因の影響を排除して検証できる環境作りなど)、いざ施策実施後にそれら仮説の検証(評価)も可能になります。


こうした検討が事前になされていないままだと、工夫点の評価ができないばかりか、売上結果に工夫点の効果と外部要因などがごちゃまぜになって、要因など正しく評価できなくなってしまいます。


しかし、企画を考える際に、内容の各要素のKPIを立ててその測定方法まで事前に設計しているというマーケターには私はあまり出会ったことがありません。なぜなら彼らのメインミッションである企画を考えること自体が多くの時間を要することですし、その他にも彼らは多くの関係者との交渉・調整や販促物の作成・調達等で忙しいので、そこまでの余裕はあまりないのだろうと思われます。(できているマーケターももちろんいます)


そのため、データアナリストも施策の結果が出てから取得可能なデータで分析を行うのではなく、施策の企画段階から仮説の検討およびその評価のやり方をマーケターと一緒に考え、それをもとにデータ収集のための分析設計も立てておく、そのために新たなデータが必要であればそれが取得できないかシステム側と調整まで行う、といった行動ができていると意味のある分析ができる可能性が高まるのではないかと思われます。



仮説の立て方第2弾
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