DXの最初の壁
前回はDXの最初の壁とそれを避けて第一歩を踏み出してしまった場合の末路(!)について紹介しました。
DXを進めるにはまず最初にASIS(現状の姿)とTOBE(あるべき姿)を定めます。そして次にそのためのロードマップを作成します。こうした準備を整えてようやくプロジェクトが開始できるようになります。
しかし兎にも角にもプロジェクトを始めることを優先してしまうと、手段ありきで進んでしまい大抵がPoCの段階で次にどうすれば良いかわからなくなってしまうという事例が多発しています。
今回はまずDXを成し遂げた先にあるTOBE像を描くにはどうしたら良いか、何かヒントのようなものはないかを考えてみたいと思います。
自社以外はどう変わっているか
Transformation(変革)の主語について考えてみましょう。
DXの定義にあったのは、「製品やサービス、ビジネスモデル、業務や組織、プロセス、企業文化、風土」などですが、どれも「自社」目線のものです。
ここでもう少し視野を広げて3C視点で考えると、「競合」や「顧客(マーケット)」の変革にも目を向けられます。
例えば世の中では、シェアリングエコノミーが流行しています。
UberやAirbndなどに代表される新興企業が提供したサービスによって、消費者の間ではモノを買うよりもシェアしようという意識の変化が顕著に表れてきています。
またそうした流れからか、所有するよりも定額で使い放題という利用権の方を好む人たちに応じたサブスクリプションビジネスも広がりを見せています。
他にも未来の都市構想のスマートシティを実現するために、IoTや次世代通信システムなど様々な先端テクノロジーを活用に関する々ニュースは時々目にします。
労働力不足の解消や様々な都市問題の解決のために、自動運転カーや無人店舗、ロボティクス、キャッシュレスなどの実証実験や取り組みが様々な企業で進められています。
さらに昨今の新型コロナの影響もあって、様々な業務やサービスのオンライン化も急速に進んでいますね。会議、営業、教育、商談、飲み会、イベントなどなど。
オンライン会議ツールを提供する企業はもちろん、それらを活用してサービスを持続的に提供できる仕組みやサポートを行う企業も業績を伸ばしているようです。
自社単独で変わろうとするのではなく、これら世の中の既に変わりつつある動向やキーワードを元に、自社ならどう関われるか/どういった立ち位置にあるべきかといったTOBEイメージを具体的に考えてみるのもひとつのヒントになるかもしれません。
小売業界の変革
ちなみに私が案件等で携わった経験の多い小売業界の変革というと、やはりオンライン化の進展でしょうか。
スマホの普及等により消費者がオンラインで過ごす時間が増えたことで、オンライン上もマーケットの場として注目されるようになりました。
Amazonや楽天といった巨大なECプラットフォームも誕生し、オンラインでのモノやサービスの流通はますます盛んになっています。
扱う商品やサービスも増加の一途をたどり、おそらくもうAmazonさえあれば生活するのに困らないという人もたくさんいることでしょう。
小売業からするとこうした風潮は大変な脅威です。
そのためコンビニなどの小売業者もオンラインでのマーケティング活動にも力を入れており、アプリ等を使っていかに自らの店舗に呼び込むかというO2O(Online to Offline)施策を繰り広げています。ポイントでの還元やクーポン発行などが代表的ですね。
また店舗を商品やサービスを販売する場ではなく、ブランディングの場として活用しようということでショールーム化を進めているところもあります。
家具・家電のモデルルームを設置したり、体験型のサービスを提供したり、インスタ映えする店舗作りを行ったりして、顧客を店舗へ誘致する施策が行われています。
さらに小売業は足元では人手不足の影響を大きく受けている業界の一つとして騒がれています。その解決のためにセルフサービスの導入や、業務の自動化・省力化などの研究開発も着々と進められています。
3C観点で代表的な課題をまとめると以下のような感じでしょうか。これらの課題に対してデジタルを含む様々な取り組みが進められているのが実情です。
【Competitor】
Amazonのような巨大プラットフォームの競合にいかに打ち勝つかあるいは協調するか
【Customer】
オンラインとオフラインをいかに活用して顧客とのリレーションを強化するか
【Company】
人手不足の解消と人件費削減をいかに進めるか
まずはこのように自社を取り巻く環境を網羅的に分析し、その上で自社が目指すべき方向や注力すべき課題を定めることが、DXを進めた先のTOBE像を具体化する上では必要なのではないかと思います。
次回はDXのロードマップの作り方を紹介します。