AIスキルの教育/トレーニングのやり方

データ分析、というよりAIやデータサイエンティストをテーマにしたトレーニングはよく見かけるようになりました。


数年前は統計知識や簡単な機械学習の使い方を教えるものくらいしかなかったと思いますが、現在は模擬プロジェクトやワークショップなどもカリキュラムに組み込まれて、より実践的なスキルを身に着けられると謳っているところが増えてきているようです。


そんな中、社内教育の先進事例としてダイキンの事例がニュースで紹介されていました。


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新入社員を100名2年間教育するというのはかなりのコストがかかっているでしょう。当企業の覚悟と意気込みも強く感じます。


今年(2020年)には第一期生が現場に配属されはじめたようですが、現場で新たな問題も生じているとのことです。

PBLでは1年間学んだ100人の新人AI人材が各現場に入り、課題を解決しようとするわけだが、必然的にさまざまな問題が発生する。特に新入社員だと現場のニーズを的確に把握できるとは限らず、現場のベテラン社員もAIで何を改善できるのか十分に理解を示しているとは限らないからだ。


 新入社員はAI技術でこんなことができそうだと提案するが、現場のニーズに合わない。ニーズを見つけても分析に必要なデータセットがそもそもなく、それをそろえるところから始まる──などの壁に直面する。こうした課題をうまく解決できる新人もいれば、なかなかうまく解決できず悩みを抱える新人もいる。


せっかくAIの知識を身に着けた新人が現場でそれを活かすことができなかったとすると、くさってしまうかもしれませんし、果ては別企業に転職すら考えてしまうかもしれません。


ダイキンでは、新人だけではなく、AIをどのように活用するかを考えるマネジメント層や現場のベテランを対象としたトレーニングにも力を入れていくそうです。


さて、といっても「AIを活用できるようになる」にはどのようなトレーニングが必要なのでしょうか?


実際のところ上記のスキルを身に着けた人材は世の中にもまだまだ少なく、短期的なトレーニングで身につくものなのかどうかは未知数ではないかと思います。


業務経験の豊富なベテランや管理・企画能力に長けたマネジメント層とはいえ、本業の合間に「ちょっとトライしてみる」くらいで簡単にAI活用ができるものではありませんし、本業をさしおいてAI活用の研究開発に専念するというわけにもいかないでしょう。


また書類やハンコなどアナログなツールを使って業務を行っているところでは、AI導入といってもそれ以前に業務をデジタル化してデータを収集するところから必要になり、かなりの時間と労力がかかります。


AIに欠かせないデータ、それが既存の業務においてどこまで活用されているか、それによってAI導入のスタート地点も変わってくるため、画一的なAIのトレーニングだけでは十分ではないでしょう。


まずはその企業のデータ活用の習熟度を見極め、その習熟度をひとつずつ上げていくというアプローチでないとなかなかAI導入の実現にはたどり着けないのではないかという気がします。


そもそもデータ活用が全くできていない企業が、一足飛びにAIを活用できるかというと余程の条件が整わないとほとんど無理ではないでしょうか。


データ活用の習熟度に応じて、その段階での課題と改善方法を検討し、実際に対応しながらスキルを身に着けていくという着実なやり方がやはり効果的かと思います。


もちろんAIの知識や事例を学ぶことも将来的なロードマップを描くことにもつながるので無駄ではありません。


ただし、最終的に学んだことを活かすにはやはりその環境がないと厳しいので、今の状況と課題をまずきちんと把握して、そのために必要なトレーニングなり教育なりを優先して行うほうが良いかと思います。


そのほうが最終的にAI活用の近道になるかもしれません。


ちなみに、データ活用を進めていくとAIを使わずとも多くの課題が解決できるようにもなります。業務の進捗状況が可視化されることで、課題が見つけやすくなるからです。


データの有用性はAIだけではありません。データ活用のための戦略を考えることもおすすめです。