豊かで幸せな人生100年時代に向けた、恋愛の役割は何か

表題のレポートがニュースで取り上げられてるのを見ました。


ニュースでは、恋愛教育に「壁ドン」を組み込む(下記スライド)という提案について議論されていました。



このレポートは内閣府男女共同参画局で実施された「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」の資料です。
https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/11th/index.html


レポート全体はこちら


ニュースでは、壁ドンはフィクションの世界のもので現実でやる人はいないとか、女性が実際にやられてもうれしくないとか、否定的な意見が主に報道されていたかと思います。


壁ドン自体は筆者の小林教授が例として挙げられている中の一案にすぎないので、一案以上のものではないのですが、なかなか世間的には賛同を得にくいようでした。


さて、そもそもこのレポートは、壁ドン云々の前に「豊かで幸せな人生100年時代に向けた、恋愛の役割は何か」を考察するレポートのようです。


そして壁ドンの話の前に、そもそも恋人がいない人より恋人がいる人の方が幸福率が高いというデータがまず示されていました。



恋人が多いほど幸福率が高いとはちょっと読めないですが、恋人の有無(0人と他)で幸福率に差があるとは言えそうです。

・恋人なし→幸福率 約2-3割
・恋人あり→幸福率 約5-6割


なので、幸福率を上げる(幸福な人を増やす)ためには恋人のいない人に恋人ができるように支援するのが良いという主張なら受け入れられやすいのではないかと思います。


下記スライドではそのような意図にとれるような記述がみられます。



ただ上記のスライドでは合わせて恋愛チャンスに格差があるとも主張されていますが、だからといって恋愛できるようにするため(格差をうめるには)になぜ壁ドンが良いのかについては、特にその根拠が述べられていません。


例えばもし壁ドンすれば恋愛成就しやすくなるなどといった因果関係があってそれがデータなどで示されていたなら、壁ドンを恋愛教育として取り入れるという案ももう少し受け入れられたのではないかと思います。


ちなみに今回とりあげたレポートは研究会という枠組みでの成果物なので、なるべく幅広い意見や案を集めて、継続的に検討が続けられていくものでしょうから、現時点のもので終わりとか全てというわけではないのでしょう。


しかし、民間企業での対クライアント向けの報告となると、そのアウトプットが全てになってシビアな評価が下されることもあります。


クライアント向けの分析レポートでも、今回のように原因の解明(幸福率アップには恋愛が重要!)まではデータを使って主張するが、手段(どうやって恋愛させるか)に関しては仮説止まりで特に根拠まで示されずに終わっているパターンのものをよく見かけます。


このパターンだと肝心の手段や提案の部分が実現性や納得感に乏しくなってしまい、クライアントからはなかなか良い評価を得られず次の展開に進まずに終了した、ということも多いのではないかと思います。


その主張に根拠はあるか、データを拡大解釈していないか、論旨展開に無理がないか、などは常に気にかけたいものですね。