産休・育休中の学び直しについてデータを使って考えてみる(続き)

先日書いたブログ記事について、私の分析の甘い点についてのご指摘とアドバイスを頂きましたので、そちらについて追加で記事を書いてみたいと思います。


custle.hatenablog.com


育児に費やす時間のところです。

またちなみにですが、6歳未満の子供を持つ夫婦の育児に要する時間は以下のようです(2021年)


妻・・・4時間
夫・・・1時間


https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2022/011556.php


前の記事では上記のデータを紹介していましたが、ここでポイントとなるのは「6歳未満」という部分です。


育休の取得条件は基本的には子供が1歳までということなので、6歳未満のデータとなるとちょっと幅が広すぎないか?とのご指摘でした。


確かにごもっともで、1歳未満の子供であっても上記の数字と同じくらいの育児時間と見なして良いかというと、そんなことはなさそうですね。


ちなみに上記データは「乳幼児」のデータとなっており、乳幼児とは「乳児(1歳未満)」と「幼児(1歳から小学校就学まで)」を合わせた言葉とのことです。


乳幼児 - Wikipedia


残念ながら乳児、すなわち1歳までの子供に関する育児時間というのは、そのものズバリのデータはちょっと探してみても見つかりませんでした。


とはいえ子供は幼ければ幼いほど手がかかるものでしょうし、少なくとも1歳児と5歳児の育児時間に差があることは想像しやすいことでしょう。


ご指摘下さった方からは、乳児の場合一日の睡眠時間が長く、しかしその間は育児不要というわけではなく、乳児は頻繁に目を覚ますので、都度世話が必要になり、結果的に育児に相当の時間がかかるとのことでした。



赤ちゃんの睡眠時間 | まとまって寝るようになるのはいつ?-おむつのムーニー 公式 ユニ・チャーム


ただ上記の画像などは、おおよその目安という意味では参考とみなせるのではないかとは思います。


たしかに0~3か月ないしは6か月目くらいまでは、細切れの睡眠になってしまっているので、夫婦サイドもまとまった時間をとるのも厳しそうです。


ということで、実態にそぐわないデータで話をしてしまった点は、自分としても反省です。


以上より、育休期間中(特に子供が生後3か月ないしは半年くらいまでの間)にリスキリングしたいとか他のことに時間を費やしたいと言っても非常に難しいだろう、と考えられます。


とはいっても、前回の記事でも紹介したように、復帰後の仕事やキャリアに不安を持っている人も一定数いるのは事実のようなので、そうした方々への不安解消も必要になると考えられます。


となると、リスキリング云々以前に、育児に対する負荷をどう下げられるか?(育児時間を減らしてその他の時間を確保できるか?)が課題となりそうです。


育休というのは時間確保のひとつの方法ではありますが、あくまでそれまで仕事など他に費やしていた時間を育児の方に振り分けられるようにするものであって、育児時間そのものを減少させるものではありません。


育休をとることでその後の仕事やキャリアに対する不安が生じるのであれば、それらに関して多少なりも悩んだり対策をとれるなら取りたいと思うのは不自然なことではありません。


しかし、育休中にそのための時間が欲しいと思っても、それはなかなか叶わない可能性が高いので、「如何に育児時間を節約できるようにするか」のサポートが政府として優先度を上げて取り組んでもらうべきことなのかもしれません。


生後0~3か月ないしは6か月の間はかなり手がかかるのでそこへの介入はなかなか難しいかもしれませんが、それ以外の期間になってくるとベビーシッターや保育園などの活用が可能になってくるでしょうから、そうした施設等の活用促進というのはキーになると思われます。


ただ昨今話題になっているように、保育士の人手不足などによって、保育園に入れたくても入れられず待機児童が増加しているといった問題は少し前からよく聞こえてきました。


自分はこの問題はまだそれほど解決していないのかと思っていたのですが、しかし少し調べてみると実際にはこの問題に対する改善は年々進んできているようです。



https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000979629.pdf


まだまだ完全に解消されたというわけではないのでしょうけれども、年々待機児童の数は減少し、待機児童のいない自治体も増えてきているようです。


保育園は最短で生後2か月から預けられるそうなので、保育園預け入れが可能になってそれ以降時間的余裕が多少なりとも確保できるようになってくれれば、ようやく仕事やキャリアの不安を持つ方々もその悩みに取り組むのも可能になってきそうですね。


政府としてもこうした目処が立ってきたから、次に彼らの復帰後の仕事やキャリアのサポートにも取り掛かろうということなのかもしれません。


引き続きこうした待機児童への対応や育児の負荷低減の対策は進めて頂くことを期待しつつ、ただ、とはいっても前の記事でも少し触れましたが、そうした方々が政府に求めているものが「リスキリングの後押し」なのかは疑問が残るので、そこはしっかり調査・検証した上で優先度も考慮し、適切な施策を順次実施していただきたいとは思うところです。



さて、ちょっと本テーマのデータ考察について、少し振り返ってみようと思います。


ひとつ反省点としては、この記事の最初にも書いたように、実態とズレのある可能性の高いデータで議論してしまっていた点、こうしたことは今後も起こり得ることなので、データの定義や範囲については極力最初に気に掛けるようにしたいところです。


もう一つは、データで考えるということ。今回炎上の件では「政府の考えは育児してない人の発想」という意見が出ていました。


確かに実際に経験している人でなければわからないことがあるのは然りです。


そうした経験から発想される課題感や対策などの意見は無視できないものかとは思います。


ただ逆に経験者が、その経験や考えを全てと思い込んでしまうのも危険なことではないかと思います。


どうしても声の大きな人や反対意見というのが目立ってしまい、そうではない意見を持つ人は実はたくさんいるのに黙っているだけ、ということもあり得るからです。


サイレントマジョリティというやつですね。


なので、目立つ意見とは異なる意見や逆の意見はないのかとか、反対意見が多数ならばなぜそうした意見がそもそも発生したのかとか、そうした裏側も気にしてデータを調べてみることは重要ではないかと思います。


今回で言えば、リスキリングに肯定的な人はいないのか?とか、


そもそもどうして政府にリスキリングの発想が出てきたのか?とかそういったイメージでしょうか。


リスキリングに関しては元々別で動いていた取り組みで、育休中の人も対象にできるようにするというだけの話だったようですが、育休の部分が変に切り取られて過剰に反応されてしまった結果のようですね。


いずれにせよ、なるべくバイアスのかかった見方にならないように、データを集める際にも一面的な観点でデータを探していないかとか、見るべきデータを見逃していないか、といったことは気を付けたいところです。