前回のブログ記事では、衰退産業におけるデータ分析について考えてみました。
ということで、今度は逆に成長産業におけるデータ分析について考えてみたいと思います。
今だと、AIやデジタル技術を用いた分野などが想像しやすいのかもしれません。
実際にそのようないくつかのスタートアップ企業の業績を見ていると、毎年数十パーセント以上の成長率で事業拡大してるところも珍しくありません。
こうした業界では、果たしてデータ分析はどのような役割を担っているのでしょうか?
いきなり結論から述べてしまうと、こうした業界ではデータ分析は「不要」と見なされていることが多いようです。
正確に言うと、データ分析よりも優先度の高い仕事がたくさんあるので、後回しにされているといった方が良いかもしれません。
とにかく行動第一、スピード重視で動けば新たな顧客も増えるし、売上は拡大していくのです。
悠長にデータを集めて分析して次のアクションを考えるなどしていたら機会損失してしまいます。
どんどん人も雇って、新規顧客の獲得や販路の開拓をする方が重要視されるのは不思議なことではないでしょう。
もちろんエンジニアも増やして、プロダクトやサービスの改善もスピード感を持って進められます。
ただし、こちらもデータでログを分析して改善ポイントを見極めるなんてことはあまりしません。
直接ユーザの声(VoC)を聞いて、いち早くそれを反映するように開発が行われていきます。
とにかく売れそうな機能、逆に放置すると離脱されそうな不具合、重要顧客の声などは高い優先度となり、データ分析の出番はあまりありません。
しかし、そうした高成長率もずっと続くわけではありません。
どこかのタイミングでユーザの離脱が増えたり、規模拡大が伸び悩んだりしてくる可能性があるので、そうした際に備えてデータ分析の導入が検討され始めます。
これまで成長産業ということもあり、勘と経験でやってきてもほぼ失敗することはなかったが、今後はそういうわけにもいかないだろう、データをちゃんと分析して精度を上げていくことが必要だ!と考えられるようになるといったイメージです。
この辺りの時期がいつかは微妙なところです。
営業やマーケティング部門はまだまだイケイケの考えを持っている人が多かったりするでしょうし、この辺りの意識は部署や人によってバラバラだったりするので、どの時期からデータ分析が必要になると明確に言い切れるものでもないでしょう。
またデータ分析が必要という意識だけが先行してしまうと、それはそれで問題です。
これまでデータ分析がなくてもやってこれていたなら、喫緊の必要に迫られているわけでもないので、成果を出しづらい可能性があります。
そうしてよく聞く、データサイエンティストなどの専門人材を雇って、データ分析基盤を作って、BIツールを導入したけれど、特に効果が見えず投資対効果が全くない、という状況に陥りやすくなったりします。
こうした状況に陥らないようにするには、環境を整えるだけでなく、データ活用の文化の醸成や実際にデータを活用した業務改善も並行して必要になってきます。
特に最近のスタートアップ企業などは、こうした点も見越してか、採用の際にデータ人材でないポジションであっても、データ活用経験や数字への感度や意識の高い人材を好んで採用しようという動きもあるようです。
私が所属しているところも成長途上のスタートアップなので、自分も今まさにそうした状況で、データ基盤等の環境整備とデータ活用の促進の両方に取り組んでいるところだったりします。
あまり詳しくは語れませんが、データ分析以前の雑多な課題が多かったり、分析のニーズや依頼もたくさんあるわけではないので(データに興味ある人が多いので、データ見たいという話は多かったりしますが)、課題やテーマが明確に示された分析の仕事以外はやりたくないという人には向いてないと思います。
ただ、そもそもデータ活用未着手の業務や取り組みが多かったりするので、まだ目に見えていないビジネス課題やまだ顕在化していないリスクを分析したり、新たなデータ活用案を企画したりと色々なトライアル&エラーが試せたりするので、主体的にどんどん動ける人にとっては新たな刺激を受けることも多いのではないかと思います。
ということで、成長産業におけるデータ分析の考察は以上となります。
一応念のためですが、あくまで今回の内容も一例ですのであしからず。
他にももうちょっと色んな業界のデータ分析よもやま話が世に増えてくると色々参考になっていいんですけどね。