結婚している人のほうが幸福度は高いのか - データ分析による検証方法の考察

以下の記事を読んで「これはデータ分析事例として興味深い」と思い、私も今回記事にしてみました。


「結婚している人のほうが幸福度は高い」約90万人のビッグデータ分析でわかった"日本の幸福度の実態" 50歳前後で最低になるが、その後は上昇していく | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)


紹介した記事では、結婚している人のほうが幸福度は高い、として以下のグラフが紹介されています。



グラフを見ると確かに、男女とも未婚よりも既婚の方が幸福度は高くなっています。


一般論としても未婚より既婚の方が幸福度は高そうだという話も聞かなくもないので、違和感ない方も多いかもしれません。


ただし、このグラフから「結婚している人のほうが幸福度は高い」と言い切ってしまって果たして良いのでしょうか?


データ分析してる人ならば、因果関係ではなくただの相関関係かもしれない、と考えたりするのではないでしょうか。


グラフでは既婚と未婚に分かれていますが、既にその時点でバイアスがかかっている可能性があります。

例えば、男性の既婚と未婚では、年収を比べると数十万円から100万円以上の差があるというデータもあります。


【未婚・既婚男性の年収分布】中央値、割合、都道府県別年収がわかる|年収ガイド


上記は婚活サイトのデータなので20~30代後半までのデータしかありませんが、少なくとも20~30代の男性に限って言えば、既婚と未婚で年収に差があるので、この違いが幸福度に影響を与えているのかもしれません。


もし年収が同じグループの既婚・未婚同士で幸福度を比較したデータがあれば、年収の影響を除外した分析が可能になります。


もしそうしたデータにおいても、いずれのグループでも既婚の方が幸福度が高いというデータがあったならば、「結婚している方が幸福度が高い」という説にうなずく人も増えるのではないでしょうか。


なお他にも幸福度に影響を与えそうな要素を考えてみると、色々ありそうです。


例えば、仲の良い友人の数、所属しているコミュニティの数、趣味の数、健康状態、などなど。。。


以上の要素においても、もし既婚と未婚で偏りが出ているならば、幸福度はそちらの要素の影響が混ざっている可能性も考えられます。


とはいえどこまでこうした要素を除外して分析できるか、というのは非常に難しいかもしれません。


ランダムサンプリングによるABテストを複数繰り返し、その結果をもってしても、完全に偏りを排除できているとは言えないかもしれません。


なのである意味きりがないものでもあります。


実現場ではコストや時間的な制約などもあるでしょうから、分析者によってもどこまで納得性を追求するかはまちまちでしょう。


しかし、分析者であれば分析対象が偏っていないか疑う意識は常に持っておきたいものです


さて、ここからもう少しこのテーマについて深堀りしてみましょう。


先のデータにより、婚姻状況は幸福度に好影響を与えていることがわかっています。(ただの相関で婚姻とは別の交絡因子の影響かもしれませんが)


それは「なぜ」なのでしょうか?


結婚すると伴侶や子供といった家族が増えます。


大切な家族がいれば幸福度が上がるのでしょうか?


であればそうした家族が多くなると、幸福度はさらに上がるのでしょうか?


ひょっとすると、結婚していなくても仲の良い兄弟や親戚がいれば幸福度は上がるのでしょうか?


いやいっそ家族や親戚でなくても、仲の良い友人や頼りになる先輩、慕ってくれる後輩、彼氏彼女、尊敬できる人などがいれば幸福度は同じように上がるのでしょうか?


こうして考えていくと「他者との関係性」といったものが幸福度に影響を与えているのではないだろうかという仮説を立てることができます。


このようにいわゆる帰納法のような考え方をすると、より高い視座や抽象性を上げた仮説を考えることができるようになります。


また「他者との関係性」以外の要素も考えてみましょう。


人は欲求が満たされると幸福を感じるものかと思います。


欲求というとマズローの欲求階層説」なんかは有名ですね。



【図解】マズローの欲求階層説(5段階欲求)とは?わかりやすく解説


先ほどの「他者との関係性」は承認欲求や社会的欲求などに当たる部分なのかもしれません。


他の階層などの欲求が満たされると、結婚以外にも幸福度が高められるヒントが見つかりそうです。


例えば、お腹がすいてるときにおいしいごはんを十分食べられれば幸福を感じることでしょう。


例えば、継続的な収入が得られていないときに、安定な職につくことができれば幸福を感じる人もいるでしょう。


特に昔のように貧しい人が多く社会制度も整っておらず治安も良くない世の中などであれば、生理的欲求や安全の欲求が満たされることで大きな幸福を感じる人も多かったのではないかと思います。


またさらに自己実現や個人を越えた社会的貢献などを果たした際にも、幸福度が上がる可能性は高そうです。


そもそもこうした幸福度の高低のデータに注目が集まるのは、やはりみんな幸福度を上げたいと思っていて、どうすれば良いのだろうかと考えたりするからではないでしょうか。


幸福度を上げるためのヒントになるような分析結果を導くことができると、分析の評価も高まるのではないかと思います。


分析者は、分析結果がどのような効果や評価をもたらすかも意識した上で、どこまでの分析を行うか常に考えるようにしたいものですね。