神は細部に宿る

データに関わる仕事をされている方は、当然ながらデータに触れる機会は日々あると思います。


しかし、その多くは「そのとき担当する業務に関するデータだけ」ということはないでしょうか。

例えば、売上が急に下がったり逆に上がったりするとその原因を調べるために関連するデータを調査したりすると思います。


しかしそうしたイレギュラーな時以外であっても、普段から関連するデータをチェックしていたりするでしょうか。


例えば、自社の主力プロダクトやサービスの売上金額や顧客数のおおよその規模感は聞かれればすぐに答えられるでしょうか。


例えば、最近売上が伸びているプロダクト、伸び悩んでいるプロダクト、なぜそうなっているのかなど把握されているでしょうか。


例えば、自社にとっての売上シェアの上位数社の顧客名くらいはすぐに出てくるでしょうか。(BtoBビジネスの企業の場合)


またここ数か月でその順位に入れ替えがあるかどうかは把握されているでしょうか。


もし、プロダクトや顧客に何か問題が起こった場合、その対応をするのはその時の担当者です。


なので、少なくともその担当者さえそうした数字を把握していれば良い(だからデータ分析担当者は必ずしも知ってなくても問題ない)というのもひとつの考え方です。


しかし、データのモニタリングを日々継続して行うというのは意外と難しいものです。


特に誰かに指示されたり、報告の必要もなかったりするようなMustの仕事ではなかったりするとなおさらです。


担当者であっても、それが担当業務のKPIであっても、皆が皆、普段からデータのモニタリングをきちんと行っているとは限りません。


そのため、何か明確な問題が起こってから初めて対応を検討するとか、新たな企画や施策が必要になってから改めて様々な調査に乗り出して肝心の検討が遅くなるとか、後手後手になってしまうことが起こります。


世の中的にデータ活用の気運も高まっていますから、普段から業務に関連するデータは把握しておいてほしいと考える経営者や管理者も少なくないでしょう。


メールやチャットでKPIや関連の数値を定期的に自動配信したり、オフィス内でみんなの目につきやすい場所にそれらをモニタで表示したりするなど、プッシュ型の仕組みを導入して半強制的に目に入るように工夫してる企業もあるほどです。




データ分析は、目的の実現・課題の解決・仮説の検証などのために行うものですが、それらとは直接的に関係のないデータを見る必要は全くないかというと、そうでもありません。


もちろん、なんとなく見てみたいと思っただけで、誰かの工数を使ってまでデータを集め、いったん見て満足したらあとは放置する、なんてのはあまり宜しくありません。


ひどい場合は、様々なデータを誰かに依頼して集めるものの、まるで積読のように見ることさえせずに放置している人もいたりしますが、それは論外でしょう。


継続的に見るべきデータとそうでないデータを見極める目は大事です。


前者は、例えばKPIに関連するデータなどです。


ただ、KGIやKPIに影響する要素は、小さいものも含めればそれなりの数になったりします。


上述した通りモニタリングの面倒さから、それら全てを定期的にチェックしている、といった人はおそらくほとんどいないでしょう。


チェックしていたとしても、KGIもしくは上位のKPIだけをたまに、という程度ではないかと思います。


ただ上位KPIやKGIが順調でも、下位KPIが下がっているなんてことはよくあることです。


この場合、それとは別の下位KPIの数字が良いために、トータルとして上位KPIの数値も悪いものではなかったりすると、問題のあるKPIが見過ごされてしまう可能性もあります。


皆が皆そうしたデータへのアンテナを高くして極力気に掛けるようになるというのは、かなりハードルが高いのではないかと思います。


だからこそ、それをデータ分析担当者が補うというのも役割としてあって良いのではないかと思います。


まあデータ分析の本業とはやや異なるものなので、役割といっても明文化されているなどでなければ、本人の考え方や意識次第になってしまうのかもしれませんが。


私の経験で言えば、以前とある細かい指標に関して、それがKPIの予兆として影響のあるものなので、なんとなく気になって毎日チェックするのを日課にしていました。


ある日その指標が異常値になっていたので、それが間違いなどではなく本当の数値なのか、担当者に連絡しました。


担当者はその状況には気づいておらず、私からの連絡で初めて知ったとのことで、念のため実情を確認してもらいました。


すると、その指標の数値は確かにその通りで間違いなどではなく、後々KPIに影響が出るものであることが判明したので、早めに手を打ってもらうことができました。


社内で最初に自分が気づいたのですが、もし自分含め誰も気づかなかったら、当然早めに手を打つことなどもできず、KPIへの悪影響を招いてしまったかもしれない出来事でした。


このようなことは他にもよく経験してましたが、改めてデータに関する感度(アンテナの高さ)や、モニタリングの最後の砦としての役割、などもデータアナリストとしてバリューを出しうるポイントなのかもしれないな、と思った次第です。