データ活用とは具体的にどうすれば良いのか

データ活用の失敗パターン


データ活用とはデータ「を」効果的に使うことですが、あくまでデータは主体ではなく別の何かのために補助的に使うことを指します。


しかしこの「別の何か」が暗黙の了解とされてしまったり、あるいは省略されてしまうということが頻繁に起こります。


そのためにデータ活用の対象や目的が関係者間でも統一されず、何らかの分析を行ったとしてもそれが実際に役に立ったのかどうかの評価も定まらないということに陥ってしまいます。


そうなると結果的に成果が挙げられていないと判断され、失敗とみなされることが多くなります。


まずはデータを活用する対象である「別の何か」を明らかにし、それによって期待される「効果」を具体的にイメージすることがデータ活用の第一歩ではないでしょうか。


データ活用を行うための前提条件


私はこれまで色々なデータ分析の仕事をしてきました。


KPIの設計とモニタリング、仮説の検証、今後の見立てや見積もり作成、施策の分析と改善、リソース配分の最適化、KPI増減の原因調査。。。


ここから考えると、常に何らかの業務ありきでデータ分析を行ってきたといえるのではないかと思います。


もちろん特定の業務とは関係なしにただ単にデータを見せてくれとか、何らかの示唆を出してくれという依頼もありました。


しかし当然ながらそうした依頼で次のステップに進んだということはほとんどなく、振り返るとおそらくそれらはやらなくても問題ない依頼だったのではないかと思います。


ただ、業務ありきといっても最終的にその業務に何らかのフィードバックができる形にもっていけないと、データ分析を行った意味がありません。


おそらくここがデータ活用と呼べるかどうかの境目のような気がします。


つまり、データ活用を進めるにはまず「対象となる業務が定量的に評価可能な状態にあること」を満たし、実際のデータ活用とは「その業務の評価、改善、フィードバックといったPDCAを回すこと」ではないかと思います。


この前提部分があいまいだとまずもってきちんとデータ活用の「評価」ができなく、そうすると当然期待される効果である「業務の改善」もできたかどうか不透明ということになります。


データ活用はこの前提部分が非常に大事なのではないかと思われます。


逆にいえば、この前提部分がしっかりできていればあとはデータを見てどこに手を打つべきかを判断するだけで、それほど難しいことではないといえるのかもしれません。


業務とデータのリンク


そうした状態になっていないということは、この前提部分に問題があるということになります。


例えば「営業」であれば、目標売上xx円という定量的に評価可能な指標を設けているところはほとんどだと思います。


現状の売上がデータで評価可能な状態で、もし予定と進捗に乖離がある状態がわかれば何らかの改善が必要ということで、次の手を打つべしという判断が下せます。


ここで終わると基本的なデータ活用例として成功ですね。


しかし、実際にはこの「次の手を打つ」の内容が定まっていないと、結局営業担当者にハッパをかけて危機感を煽るなど「本当に効果的かどうかわからない手段」しか取れず、とたんにデータ活用から遠ざかってしまいます。


もし営業担当がサボっていることが判明しているならハッパをかけるでも良いのかもしれませんが、そうでないなら別の手段をとらなければ問題解決につながりません。


上記で述べた「対象となる業務が定量的に評価可能な状態」は業務のざっくりとしたレベルだけで終わらず、どの手を打つべきかといった判断が必要な粒度まで対象とできるかどうかでデータ活用可能な範囲も決まってきます。


そのため各業務におけるKPIの設計が重要となります。


そのKPIは当然ながらデータとして計測可能なものでないといけないので、その元となる業務ログをデータとして取得する仕組みも必要になります。


そうして業務とデータがリンクできた状態を構築できれば、データ活用によって業務状態の正しい評価を行い、適切なタイミングで改善を図ることも可能になるというわけです。


データ活用を進めやすい業務


主にバックオフィス系の業務は、ある程度マニュアル化が進んでいて、業務内容も標準化されていたり業務ログも収集されていたりするので、データ活用しやすい環境にあるのではないかと思います。


そうした業務ではサービスレベルの一定品質を担保するためにワークフローを可視化して、ボトルネックを検知したり必要に応じてリソースの再配分を行えるように調整することも可能でしょうし、さらなるコスト削減を目指して業務プロセスを分析して効率化や省力化・自動化といった改善を施すなどのデータ活用イメージが想像できます。


データ活用を進めにくい業務


一方でなかなかデータ活用が進まない業務の代表は、営業やマーケティングなどでしょうか。


これらの業務は、顧客や市場といった移り変わりの激しいナマモノを相手にするため、たびたび柔軟で臨機応変な対応が求められることが多いようです。


特にベテランの人間などはこれまでそれでうまくいってきたとか、そうした環境だったからこそ成長してきたと主張するかもしれません。


そのためなかなか自動化・定型化するといったことも難しく、結果として各担当による属人的な業務に陥ってしまいがちです。


実はこれはこれで間違ってなくて、個人的には営業やマーケティングのような業務は全てをガチガチに自動化・定型化させるまでは必要ないかもしれないと感じています。


もちろん自動化・定型化はコスト削減や品質の安定化にはつながるので、ある程度は進められるとそのメリットを享受できるでしょう。


しかし、そうしたシステマチックな業務からは、新たな知見・ノウハウ・クレーム(顧客の課題やニーズ)といった業務改善のヒントも得られにくくなるのではないかとも思います。


もちろん現場が完全に担当任せになっていても、そうした新たな知見やノウハウはせいぜい個人やチームの中くらいで閉じてしまうので同じようなものかもしれません。


現場の知見やノウハウを正しく評価し、効果的と見なされればそれを全体に共有・実践・管理する仕組みがあるだけでも業務の改善が進みやすくなるかと思います。


そのときにデータ活用の出番も出てくるでしょう。


データ活用のかたち


一例として、バックオフィス系業務と営業・マーケティング業務でのそれぞれのデータ活用の形を紹介しましたが、決まった正解があるわけでもないのでこれで全てでもないと思います。


一方で、上記で紹介したデータ活用の前提条件や業務とデータのリンクなどはデータ活用を進めるために欠かせないポイントだと思うので、抑えておいてほしいところです。


なお、データ活用を進めるにはさらに大きな壁(社内の抵抗勢力や予算交渉など)がまだありますが、それらの乗り越え方はいずれまた。。。