ログ分析とデータ分析

ログ分析とは


むかしIT業界にいたころ、ログ分析という業務がありました。(今もありますが)


今でいうところの「データ分析」とは少し異なり、ITシステムのログを元に下記のような業務を行うことです。


・システムリソースが枯渇していないかの確認
バッチ処理など定期的かつ自動的に実行される処理の稼働確認
不正アクセスやイレギュラーな使用がされていないかの監視とその保全


目的はITシステムをユーザが適切に利用できる状態に維持すること(品質担保)で、分析を行うのもデータアナリストではなく、ITシステムの運用担当者です。


基本的には各種監視項目を自動検知してアラートを上げる仕組みが実装されていたり、ログの管理ツールで状況がわかりやすく可視化されていたりするので、担当者が生ログを目検で分析するということは何か異常がない限りあまりありません。


当然専門的な統計の知識も不要です。


特に現在の様々な業務はITシステムの利用がほぼセットになっているため、ITサービスが使えないと業務が停止してしまう恐れがあり、安定的な稼働・供給は欠かせません。そのためそれを支える(運用業務の一環としての)ログ分析も重要な仕事です。


ただ、ログ分析自体は通常売上増加などにつながるものではなく、なかなか投資対効果の図りにくい業務でもあります。


もちろん優秀な運用担当者であれば、何か問題が起こったときにいち早く要因を特定し問題解決を早期に実現することが可能なので、それが引いてはシステムの停止時間を短くし機会損失の極小化につながるという金銭的な効果も見込めます。


しかし、基本的にはそうした属人的な対策に費用をかけるよりも、最初から問題が起こらないように予防する仕組みにコストをかける方が実用的とされています。


ログ分析をデータ分析に取り入れる


一方データ分析においては、データマイニングのイメージのせいか、売上改善やコスト削減などが期待されることが多いです。


そのためマーケティング、広告・宣伝、販売(レコメンド)などの売上に直結する効果の最大化、あるいは製造・調達・流通などの領域のコスト削減のために使用されるケースが多いようです。


しかし、周知の通り上手く成果を出せていない企業も多々存在します。


そうした企業は、データ分析に問題があるのではなく、業務そのものに問題があるのではないかという気がします。


業務が属人化しており担当者によって成果が大きく変わる、しかもそれを形式知化できていないため横展開できないなどといった状況に覚えはないでしょうか。


そうだとすると売上も優秀な担当者の活躍や企画が偶々ヒットするかどうかといった偶発性の高い要因しか見込めなくなり、データ分析はあまり役に立ちません。


あるいは逆に業務のやり方やプロセスが過去の慣習からからずっと同じで、変えようとしてもリスクやコスト面で非常に変えにくくなっており、情勢の変化に柔軟に対応できないという状況であれば、おそらく戦略を練ったりデータ分析したりをいくら行ってもそれが実務に反映されないので、大した効果は出ないでしょう。


「一発当てる」のを狙うのもよいですが、それしかないとビジネスがただの博打になってしまうので、構造的な改革も合わせて取り組むべきではないかと思います。


そのためには、まず各種業務の進捗やプロセスが定量的に可視化されている状態が必要です。そしてPDCAを回していけば、構造的な面での改善も進めていけるのではないでしょうか。


とここでようやく冒頭のログ分析の話とつなげますが、ITシステムのログ分析のように、データ分析が期待される各種業務のログもきちんと収集・管理して分析する仕組みを実装することで、適切に回っている状態を維持できることが期待できないでしょうか。


また何か問題が発生したときに、その要因をつきとめ対策をとることもスムーズかつ柔軟に行うことも可能かもしれません。


データ分析にとって、ログ分析を参考にそれを取り入れることも有用ではないかという気がします。


しかし、特に売上に直結する業務などでは全てがシステム化されていないことが多く、ログを収集することでさえ一筋縄ではいかないことが多々あります。


顧客や案件等のリストをいまだにエクセルで属人的に管理しているところも多いでしょう。


昔からそうした領域で業務の標準化&システム化を進めるためのソリューションとして、マーケティングオートメーション(MA)やCRM、SCM、SFAなどの導入も進められていますが、合わせてそのログの収集・管理・活用も進めていきたいところです。


データアナリストとしても、ありもののデータしか分析しないのではなく、業務改善等の目的に即して、新たなデータ収集の必要性を提案するなど広い視野を持ちたいものです。