データ活用やDXがどこまで進んでいるかの現状診断

こうしてブログ等でデータ分析について情報発信していると、ありがたいことに無名の私にもご相談をいただくことがあります。


しかし、業務でデータ活用やDXなどを任されたけれどどうしてよいか困っているとか、データ分析のスキルを身に着けたいけれどどうしてよいかわからないとか、ざっくりしたレベルのご相談も多く、私としても相談者の状況や課題などが具体的にわからないため、なかなか回答が難しいということが何度かありました。


ふと最近、IT企業で昔プリセールスエンジニアをしていたときにも似たようなことがあったなと思い出しました。


ITシステムやソフトウェアなどを販売するときは、顧客にその特徴や良さだけをアピールしてもなかなか購入にはつながりません。


顧客の課題やそのときに困っていることが解決できるなどのわかりやすいメリットやそのとき購入すべき理由がないと検討の土台にものらないということがほとんどです。


しかしそうした顧客の事情については、ヒアリングしてもあまり詳しく教えてもらえないとか、顧客自身もよくわかっていないということがよくありました。


そこで、まず無償のアセスメントサービスを提案するということを行ったりしていました。


アセスメントサービスとは、顧客のシステム環境の現状の診断・評価を行うといったものです。


対応範囲は診断・評価までです。そのため、これだけでは問題解決には至りません。


そもそも顧客側は何か問題があると認識されていなかったり、具体的なところには気づかれていなかったりするので、本当に問題があるのかないのか、どこに問題があるのかはっきりさせるといった位置づけのサービスです。


例えていうと、病院でどこか悪いところがないか診断してもらえるようなものです。


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最初に問診票などでいくつかの質問に答えてもらい、それを元に詳しくヒアリングしたり実際に調査させてもらうなどして、診断・評価を下すという流れになります。


なお、DXについていえばいくつかのITベンダーやコンサルもこうしたサービスを提供しているようですし、IPA情報処理推進機構)でも自己診断が可能なサービスが公開されています。


IPAのDX推進指標 自己診断結果入力サイト


このIPAのサービスでは、最初に顧客自ら記入してもらう問診票も公開されています。(EXCELファイル)


記入した問診票を送信すれば、全体データと比較できるといったベンチマーク的な診断結果を返してもらえるそうです。


ただし自己診断で記入する項目は60個ほどあって結構多く、各項目もきちんと詳細に記入しようとするとなかなか大変そうです。


それでも2020年10月時点では約500社ほどのデータが集まっているようなので、結構すごいですね。


ただ9割以上の企業はDXにあまり取り組めていないようなので、そうした企業の診断内容がどのようなものかは気になるところですが。


しかし何はともあれまずはこうした現状診断を行っていないのであればそれに着手してみる、というのはおすすめです。


ただし、こうした調査では最初の問診票はどうしても全体的、網羅的になってしまうので、おおまかな課題箇所は見えてくるかもしれませんが、では次に具体的にどうすれば良いのかまでは面倒を見てもらえないようです。


ASIS(現状)はわかったけど、TOBE(あるべき姿)は自分たちで考えないといけないですし、ASISとTOBEのギャップをどう埋めればよいのかも通常は現状診断サービスだけで明らかになるものではありません。


民間のITベンダーやコンサルだとそこからが自社のご飯のタネになるので、TOBE像およびそこに至るギャップを埋めるために必要なこともサービスとして提案・対応してくれます。


とはいえ、彼らもビジネスなのでそのTOBE像は自社サービスを活用したものが基本形ですし、そちらに誘導する方向で提案してくるのも否めないでしょう。


そのためただ彼らに流されるだけでなく、彼らの提案内容と自社にとってのTOBEがきちんと一致しているものかどうか自ら見極めれらないと、当初思い描いていたDXとは異なるDXの形になってしまっているなんてことも起こりかねません。


またTOBE像は得てして抽象的な表現で表されることも多く、もっと具体的にしないとギャップをどう埋めれば良いのかわからないということもよくあります。


TOBE:デジタルを活用した新たな事業を創造する
TOBE:デジタルを活用して既存のビジネスモデルを変革する
TOBE:既存の業務をデジタル化する


ここは現状診断の延長で考えてみるのもひとつのやり方ですね。


新たなことを行うならば、その新たなことが具体的でないと進められないので、まずはできていないことをできるようにするという考え方です。


ある業務がデジタル化できていないなら、それをデジタル化する、などですね。


単にひとつの業務をデジタル化するだけならばDXとは言わないだろうという意見もあるかもしれませんが、そもそもその業務をデジタル化することでどのような効果や変革がもたらされるのかを検討して、優先度をつけた上で行えば、TOBE像が見えてくるケースもあります。


個人的におすすめしたいのは、KPIマネジメントです。


現状のKPIマネジメントがどこまでできていて、どこができていないか、あるいは課題があるかなどを明らかにすることで、目先のやるべきことが見えてきます。


KPIマネジメントがうまく回ると、業績指標が改善されるということなので、まずはこの土台をきちんと作ることがポイントではないかと思います。


またKPIはデータという定量的なもので計測できないと進められないので、優先すべきデジタル化やシステム化のところも見えてくるでしょう。


どこかひとつ中心(コア)となる部分を決めて、そこを足がかかりにするというやり方です。


そういう意味で、コアとなる部分の現状診断を徹底的に細かくやってみるというのも良いのではないかと思います。