ID-POSデータの分析と活用の方向性

ID-POSデータとは


POSデータはPoint of Salesの略で、いつ、どの商品が、どれくらい販売されたかが分かるデータです。


ID-POSデータは顧客を特定するIDがPOSデータに紐づいています。


POSデータとの違いはそれだけですが、ID-POSデータであれば「誰が購入したか」も分かるようになります。


IDはあらかじめWeb等で顧客に会員登録をしてもらったり、ポイントカードを発行することでデータとして管理されています。


ID-POSデータのメリット


POSデータだけでは商品の販売傾向の分析しかできませんが、ID-POSデータであればそこに顧客軸も加えて分析することが可能です。


例えば、この商品はよく売れているがどのような顧客が購入しているのか、商品の販売数が減少しているときに購入しなくなった客はどのような客なのかを調べたりできます。


また同じ顧客が繰り返し同じ商品を買っているかどうかも分かるので、リピート購買が判別できます。


リピート購買の多い商品かそうでないかで今後の売れ行きの傾向もつかめます。


さらには顧客について深堀った分析も可能になります。


特定期間の間に、何回来店してくれているのか、どれくらいの金額の買い物をしてくれているのか、よく買う商品は何か、よく来る時間帯や曜日はいつか、最近来なくなってはいないか、などなどを調べることも可能です。


こうした情報を販促やキャンペーン、品揃えや棚割りなどに活かしているところも多いでしょう。


ID-POSデータの分析は結構ポピュラーなので、扱ったことのあるデータアナリストもたくさんいると思いますし、ネットでも多くの活用事例や分析手法等が見つかることと思います。


ID-POSデータの課題


一方ID-POSデータを活用する上で課題もあります。


IDを識別できるPOSデータ以外のデータに対しては、顧客軸で分析するといったことができません。


全てのPOSデータにIDが紐づいているなら別ですが、IDが紐づく顧客がごく一部しかいないということになれば、それ以外の大部分のデータはただのPOSデータとなります。


一応IDが紐づく顧客の割合が低くても人数がそれなりにいれば統計的に有意な分析は可能です。


ただ、IDが紐づく顧客に偏りがでてしまっている場合はその限りではありません。


IDが識別できるのは何らかの形で会員登録してくれている顧客ですが、どのような顧客も等しく会員登録してくれているとは限らないでしょう。


わざわざ会員登録してくれているということは、そうでない顧客と比べてバイアスがかかっている可能性があります。


会員登録をする顧客は今後もそのお店やWebサイトを利用するつもりがあるなど、最初から顧客としてある程度「良いお客さん」であったりするかもしれません。


顧客側からすると今後も利用するならともかく、たまたま来店しただけで次また利用するかどうか不明ならばわざわざ手間をかけて会員登録したいとは思わないのではないでしょうか。


つまり、一見客やバイアスの低い顧客についてはIDが取得できていない可能性が高くなります。


そのためID未取得の顧客の中にはそうした顧客が多く、逆にID取得顧客の中にそうした顧客が少なければ、偏りが出ていることになります。


その状態で手持ちのID-POSデータで例えば1か月の来店回数ごとの人数分布や平均来店回数などを集計しても、実態(顧客全体のデータ)とはズレが出てしまうかもしれません。


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そうした点をきちんと踏まえて分析等に使用しているなら問題ないのかもしれませんが、そうでないとミスリードしてしまう可能性もあるので要注意ですね。


またビジネスモデル等にもよりますが、むしろバイアスの低い顧客について分析したいというニーズもあるので、その点でもID-POSデータは限界があります。


バイアスの低い一見客のような顧客を分析して、どうすれば彼らに再来店してもらえるのか、どうにかして再アプローチできないかなどを気にする事業者も多いと思いますが、彼らはそもそもIDがないからデータも取得できないしこちらからコミュニケーションもとれない、もしIDがあっても購入回数が少ないのでデータが1~数件しかなく傾向もつかみづらい、など如何ともしがたいという経験のあるアナリストもいるのではないでしょうか。


ID-POSデータの可能性


ECサイトWebサービスでは、顧客管理の観点からも会員登録が必要なところが多くなっています。


ただし購買や利用において会員登録必須としてしまうと、会員登録を面倒に感じる人々や個人情報保護やプライバシーを気にする人々などが離れていってしまう可能性が高くなるので、機会損失も増えてしまいます。


そのため多くの事業者は会員登録を極力簡単にしたり、多くの顧客が既に持っているSNSのアカウント等を利用できるようにしたり、個人情報保護法の遵守をアピールしたり、キャンペーンなどによるインセンティブで会員化を促したりと色々努力されています。


リアル店舗においても、共通ポイントカードを導入したり各種電子マネー等に対応するなどID顧客を取り込む動きがなされています。


もちろんこれらは単純に会員を増やすためというのが目的ですが、それによって一見客や見込み客のID付きデータが増えてくれば、顧客全体の傾向がとらえやすくなったり、それらの顧客についての分析も可能になってきます。


また購買情報のPOSデータだけでなく店舗やサイト内での行動履歴データなど他のデータもIDと紐づかせて活用しようという取り組みも進められており、より顧客を深く知るための分析も可能になりつつあります。


あと個人的に期待したいのは、商品データの充実です。


家電などではスペックなどの商品の詳細データもそろっているかと思いますが、低単価のものやアナログな商品であればカテゴリや値段といったデータくらいしかなかったりして、分析軸も制限されてしまいます。


分析や集計のために独自にタグ付けするということも不可能ではありませんが、データ管理上のコストやデータの客観性がどこまで担保できるかなど課題も多く、あまり現実的でない場合が多いです。


ただデータが増えると分析軸も増えて新たに見えてくるものもあるかもしれないので、少しだけ期待を持ちつつ、、、といったところですね。

DXとデータ分析人材の関係

デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めようとして、外部からそのための人材を採用しようとするとき、まずデータサイエンティストやデータエンジニアなどを求める動きがあるようです。


おそらく彼らデータ分析関連人材には、データを使って業務を効率化するとか、データを使って新たなサービスを開発するとか、そういったことを期待しているのではないかと思います。


しかし彼らは何らかのデータを予測する(その精度を上げる)とか、大規模データの管理基盤の開発・運用をするのが主な役割であったため、上記の期待に応えるにはおそらくアンマッチとなるでしょう。


もちろんDXを進める上でデータ分析関連人材の役割が明確に必要と分かっているならば彼らを求めることに問題はありませんが、どのような人材や役割が必要かも不明なままとりあえず人を採用してもアンマッチとなる可能性は高いでしょう。


またDXは通常業務の一環としてではなく複数部署を横断したプロジェクトチームが組まれることも多いので、それらを束ねるプロジェクトマネージャやコンサルタントが求められるケースもあります。


この場合もプロジェクトの目的が明確であり、関連部署との調整などが進んでいる状態なら、彼らは自らの知見を活かしてプロジェクトの推進に注力できると思われますが、そもそも目的や予算なども固まっていない状態でプロジェクトの立ち上げから任されるとなるとまたまたアンマッチが発生する可能性が高まります。


いっそのこと、DXについてそもそも何から始めればよいのか、どのように進めれば良いのか、企画から人材まで何もかもコンサルティングファーム等に丸投げするつもりで、彼らに提案を求めるところもあるかと思います。


そうしたコンサルファームやITベンダーからのDX関連の求人もよく見かけるので、やはりそうしたニーズもそれなりにあるのでしょう。


ちなみにコンサルファームなどに丸投げの提案を求めた際に、企画、体制、人材調達、予算見積もり、プロジェクト化、スケジュール、場合によっては現状調査やPoCなどが中身に含まれてくると思います。


事業会社の視点から見ると、上記と同じようなことを準備できる社内人材がいるなら外部に丸投げしなくてもよいわけです。


ただ、全体的なDX推進計画だけ作っても、いざプロジェクトが始まると現場との軋轢や摩擦等でうまく進まないというのはよく聞く話です。


DXともなると関わる部局が多くなるので、既存の業務やシステムとの兼ね合いをどうするかなどある程度細かいレベルでの現場との調整も多々踏まえた上で、最終的には全体最適の観点からの企画にまとめる必要があるのではないでしょうか。


そのため個々の業務のデジタル化の企画・設計などができる人材もチームに必要となると思います。


データ分析人材もデータ活用が進んでいる現場や、データの整備を進めようとしていた現場などでの経験はあると思われるので、そうした個々の業務レベルでのデジタル化のためにチームに入ってもらうこともありかと思います。


ただしあくまでも業務の企画や設計が本業ではないので、適所適材かというと微妙な気がします。


ただ、データ分析人材の中にはそうした企画や設計が得意な人もいます。


データに関わる職種が増えてきている昨今、差別化のために特定業務領域での経験が豊富であるとか、コンサルやPMの経験もあるとか、業務改革にまで関わった経験があるとか、データ分析プラスアルファの知見やキャリア構築に注力する人も増えてきているようです。


業務がデジタル化されるとデータがたくさん生まれることになるので、データ分析人材の活躍の場となる可能性は高いでしょう。


そのためデータ分析人材側としても、DXの推進やそのためのプロジェクトは全くの無関係ということはないと思います。


こんな業務データがあったらなあとか、こんなデータを業務に自動的にフィードバックできたらもっと効果的なのになあ、などと考えたことのある人はいないでしょうか。


DXプロジェクトに自ら関わっていくことででそれを実現できる方向に持っていけるかもしれないので、ある意味チャンスでもあります。


データをさらに活かす環境の構築につながる可能性はありますので、DXを主とした立場で推進していくのは厳しいでしょうが、積極的に関わりを持っていくことは良いのではないでしょうか。


データ分析プラスアルファのキャリアにつながる可能性もあるかもしれませんし。

商品開発のためのデータ分析

あまり多くないケースかもしれませんが、今回は商品開発の際に行うデータ分析について紹介してみようと思います。


商品開発を行うときには参考として各種市場データを参照されることは多いようです。


そうしたデータを元に、今後のトレンドなどを判断して複数パターンの商品開発(プロトタイプ)が進められます。


そして実際の商品化や販売の企画チームが入ってどれを商品として販売するかを決めていく流れのようです。


商品開発の現場ではデータ分析の専門家が入るということはあまり多くなく、データも調査機関や部材メーカー等から提供される統計データをそのまま活用するようです。


いわゆる一般的なマーケットの全体傾向であったり、部材自体の仕様に関するデータであったりなどは見せてもらったことがあります。


特に自社で収集が難しい他社やマーケットのデータなどは参考になるでしょうから、そうしたデータを参考にすることで商品の改善が進められたり、今後のヒット商品が生まれる可能性はもちろんあるでしょう。


こうした状況において、データアナリストがチーム入りした際にどのような分析ができるでしょうか?


私が過去に担当した案件では詳しいことは守秘義務のため紹介できませんが、大まかに以下の観点で分析をしてみました。



・ホワイトスペースの探索


自社の販売データを元に、顧客特性と商品特性から関連マーケットにおいて未進出の領域を明らかにしました。


マーケットのホワイトスペースが分かれば、そこに対して手を打つかどうかという判断が可能になります。


もちろん自社にとって未進出であっても、マーケットとしてそこはレッドオーシャンである可能性もあるので、安易に進出しても効果が出るとは限りません。進出の判断においてはさらに検討が必要なのでご注意を。



・マーケット特化傾向の分析


こちらは上記と逆にすでに強みのある領域で、その領域におけるハイレベルのニーズ等を明らかにし、さらに優位性を確保しようという戦略のための分析です。


分析方法としてはヘビーユーザを対象としたものになります。



・効果的な組み合わせ


親和性の高い商品の分析です。ケースによっては機能をまとめるとか、統合して商品の品質等を向上させることが可能になります。



・不要な部分のそぎ落とし


組み合わせの逆です。親和性の良くない商品・機能等を分析し、不要な機能をそぎ落としてコスト削減等が可能になります。



以上、商品開発におけるデータ分析例としていくつか紹介してみました。


当然これがすべてではないですし、最適解であるとも限りません。


というか、別段珍しい分析というわけでもなく、経験ある方ならどういうことをしたのかイメージも付くでしょうし、それほど難しいものでもないでしょう。


ただ上記の案件では、元々外部データはよく活用されていたものの、自社データの活用がまだあまり進んでいなかったため、新たな視点が得られたなどなかなか好評でした。


クライアントのTOBEをきちんと把握して、できること×相手の課題/ニーズの中から必要なデータ分析を判別することは基本でかつ重要ですね。

前向きでない意思決定のためのデータ分析

色んな意思決定


データ分析は意思決定のために行うもの、とよく言われています。


ただ意思決定といっても、色んな意思決定がありますよね。


新企画を実施するかどうか、人手を増やすかどうか、システムを変えるかどうか、スケジュールを変更するかどうか、、、などなど。


基本的に意思決定のパターンとしては、いくつかにまとめられるのかと思います。


・やるかやらないか


M&Aや企業提携といった大きなものから、現場での業務活動といったレベルのものまで、様々な施策を行うかどうかといった意思決定が成されています。


一般的に民間企業だと営利団体なので売上や利益を伸ばし続けていくという目的を持っています。


やるかどうかの意思決定も、基本的にはかかるコスト以上にこうした目的への貢献が見られるかどうかでGOかどうかも決まるのでしょう。


もちろん規模が大きくなればなるほど影響範囲も広がるので効果の判断も難しくはなりますが。


・変えるか変えないか


既存の組織、業務、人事、制度、システムといったものを改善するかどうかといったものです。


これも企業目的に通じるかどうかで判断されますが、その前に既存のものとの比較が入ります。


コストも考慮して既存のもの以上に効果がないのであれば変えないということになるでしょう。


・どれをやってどれをやらないか


上記二つにおいて、選択肢が複数の場合です。


それぞれにおいて複数の選択肢間での比較も必要になります。


基本的には最も効果が高いものが選ばれることになるでしょう。(状況によっては複数の選択肢を選ぶことが可能な場合もあるかと思います。)



それぞれ何を指標とし、何と比較するかでデータが使われるので、データアナリストの出番もやってきます。


一方で、本題の「前向きでない意思決定」というものもあります。


前向きでない意思決定


民間企業だと売上や利益を伸ばし続けていくという目的を持っており、その目的に対して効果が見込めるかどうかで判断されると先に述べましたが、その効果よりも「リスク回避」に重きをおいた意思決定です。


利益が上がるかもしれないが、その逆に損失を出すかもしれない。


後者の可能性や影響の大きさによっては、やらない/変えないという判断をとるパターンです。


また最初に「やる」という意思決定を下したものの、実際にやってみると効果が低いあるいは逆効果が見られた場合に、他の選択肢に移行あるいは被害拡大防止といったリスク回避のために、途中で「撤退」して「損切り」するかどうかというパターンもあります。


この場合、データ分析側にはその原因を調べてほしいとよく依頼されます。


もし原因が分かればその対応がとれるかどうかの判断ができ、それによって継続すべきか撤退すべきかの意思決定の材料にもなるからなのでしょう。


分析側としては「対応がとれるかどうかの判断が可能なレベル」の分析が必要になります。


つまり実は原因を特定できずとも良くて、自社内のどこかに問題があるかどうかが判明できれば基本的には十分なんです。


例えば販促施策をしたけれど売上が想定より伸びない場合、あるチャネルに問題があって告知が一部届いてなかったとかなら、そのチャネルを正しく改善すれば問題ありません。


一方でそもそもどこにも問題はないが全体的に低いとか、外部要因(政治・金融・自然災害など)の影響が考えられるといった場合は、自社で改善は難しいので、撤退(損切り)したほうが良い判断ということになります。


時々その意思決定(撤退)をせずに、何か分かるまで分析しろと言われることもありますが、おそらくあまり意味はないだろうなと思っています。


ちなみに行動経済学的には人は損失を避けたい傾向にあるので、損切りはなかなか選択されにくいものです。(株式投資などでもよく聞く話です)


よって実際に「やる」という判断をとってから、のちの状況によって「撤退(損切り)」の意思決定を下すのはなるべくなら避けたいものでしょう。


ということは最初の段階で「止める」という判断を下せていれば、無用な損を出さずに済んだかもしれません。


とはいえ、最初にありとあらゆる要素に関して将来のリスクの大きさや可能性を正確に予測しておくのは非常に難しいことでしょう。


リスクがほぼない、あるいは限定的といった場合ならばともかく、そうでない場合も多いでしょうから、効果がよろしくないと分かった場合に早めに撤退(損切り)できるようにしておくというのがベターなのではないかと思います。


そのためには、自社内のどこかに問題がないかどうかをモニタリングするKPIと、売上/利益といったKGIで撤退すべきラインをあらかじめ決めておくことです。


ようはPDCAをきちんと設計するということです。


最後に


意思決定という言葉にはどこか前向きなものというイメージが付きまとうような気がしていますが、当然そうでない場合もあるでしょう。


前向きでない意思決定が必要(と思われる)場面ではなるべく損切りをしたくないせいか、不確定なリスクを精緻に予測しろとか、マイナスの原因を徹底的に調べろとか、単純に分析結果に不満を持たれたりとか、データアナリストにとってやりにくい場面も多々あるかもしれません。


データアナリストは何かあったときに何とかしてくれと頼られることが多いような気がしますが、そうした場面での自らのリスク回避のためにも、なるべくなら事前に「何かあったとき」にどう備えるかといった方面でも仕事をしておきたいものです。

逆説的データ分析手法

データアナリストは通常「必要と思われたデータ」を抽出・整理してその結果を読み解きます。


必要と思われたデータとは、クライアントから依頼されたデータそのものであったり、アナリスト自身がこのデータを見れば仮説が検証できるかもしれないと判断したデータなどです。


しかし前者であればともかく、後者のように必要と思われるデータが明確でない場合は、試行錯誤の繰り返しになってしまう可能性もあります。


そうした努力を重ねて求めるデータが見つかるならまだしも、結局は労力をかけても成果が上がらなかったということもよくあります。


このあたりはデータアナリスト当人の仮説立案力に問題がある場合もありますが、肝心のデータが十分に蓄積・整備されていないケースもあるため、必ずしも熟練アナリストになれば避けられるとも限りません。


例えば、今度発売する新商品について特別プロモーションを行うために、その商品を購入してくれそうな顧客をリストアップしてメールを送りたいという場合を考えてみましょう。


購入してくれそうな人物像の仮説としては例えば以下などが考えられると思います。


・同カテゴリの商品を購入したことがある
・同ブランドの商品を購入したことがある
・類似商品を購入したことがある
・類似商品と併売されやすい商品を購入したことがある
・自社のヘビーユーザ
・新商品が出るたびに購入することが多い
・前回購入から商品サイクル的に購入しそうな時期に当たる
・割引きやインセンティブによく反応する
・etc


しかし、当然ながら上記は過去の購買履歴データが取得できていないと判別ができません。また商品に関しても、カテゴリ、ブランド、類似かどうか、併売状況、新商品かどうか、購入サイクル、割引情報なども、データとしてきちんと整備されていないと同じく判別は難しいでしょう。


データが不十分な場合、ありもののデータだけを使っても目的のデータを導き出せるかというと熟練アナリストでも厳しいでしょう。


こうした場合に、逆説的なデータ分析手法を行うことで少しでも目的に近づけることができるかもしれません。


それは「購入してくれそうな顧客」を探すのではなく、「明らかに購入しないであろう顧客」を見極めてそのセグメントを除外するというやり方です。(消去法ともいうかも。。。)


長期間取引のない休眠顧客、商品のターゲットとは明らかに異なる顧客、メールを開封しない顧客、などなど。


※休眠顧客は休眠期間、商品のターゲットと異なる顧客は代理購買にはご注意下さい


高い精度とはいえないかもしれませんが、無作為にリストアップするよりは効果が期待できると思います。


また履歴データが十分にない新規顧客はとりあえずすべてリストアップ対象(または非対象)とし、履歴データが十分にある既存顧客で絞り込みを行うという考え方などもあるでしょう。


仮説が思いつかなかったり、仮説を実証できるデータが入手できない場合は、こうしたアプローチをしてみるのも良いかもしれません。


それほど突飛なやり方ではありませんが、しばらく悩んでいる状態が続くと視野が狭まって意外とこうしたアプローチすら思いつかないことも多々あります。


目的のデータが得られなかったとしても、安易に諦めず視点を変えてトライしてみれば多少なりとも道が開けるかもしれませんね。

AIスキルの教育/トレーニングのやり方

データ分析、というよりAIやデータサイエンティストをテーマにしたトレーニングはよく見かけるようになりました。


数年前は統計知識や簡単な機械学習の使い方を教えるものくらいしかなかったと思いますが、現在は模擬プロジェクトやワークショップなどもカリキュラムに組み込まれて、より実践的なスキルを身に着けられると謳っているところが増えてきているようです。


そんな中、社内教育の先進事例としてダイキンの事例がニュースで紹介されていました。


www.itmedia.co.jp


新入社員を100名2年間教育するというのはかなりのコストがかかっているでしょう。当企業の覚悟と意気込みも強く感じます。


今年(2020年)には第一期生が現場に配属されはじめたようですが、現場で新たな問題も生じているとのことです。

PBLでは1年間学んだ100人の新人AI人材が各現場に入り、課題を解決しようとするわけだが、必然的にさまざまな問題が発生する。特に新入社員だと現場のニーズを的確に把握できるとは限らず、現場のベテラン社員もAIで何を改善できるのか十分に理解を示しているとは限らないからだ。


 新入社員はAI技術でこんなことができそうだと提案するが、現場のニーズに合わない。ニーズを見つけても分析に必要なデータセットがそもそもなく、それをそろえるところから始まる──などの壁に直面する。こうした課題をうまく解決できる新人もいれば、なかなかうまく解決できず悩みを抱える新人もいる。


せっかくAIの知識を身に着けた新人が現場でそれを活かすことができなかったとすると、くさってしまうかもしれませんし、果ては別企業に転職すら考えてしまうかもしれません。


ダイキンでは、新人だけではなく、AIをどのように活用するかを考えるマネジメント層や現場のベテランを対象としたトレーニングにも力を入れていくそうです。


さて、といっても「AIを活用できるようになる」にはどのようなトレーニングが必要なのでしょうか?


実際のところ上記のスキルを身に着けた人材は世の中にもまだまだ少なく、短期的なトレーニングで身につくものなのかどうかは未知数ではないかと思います。


業務経験の豊富なベテランや管理・企画能力に長けたマネジメント層とはいえ、本業の合間に「ちょっとトライしてみる」くらいで簡単にAI活用ができるものではありませんし、本業をさしおいてAI活用の研究開発に専念するというわけにもいかないでしょう。


また書類やハンコなどアナログなツールを使って業務を行っているところでは、AI導入といってもそれ以前に業務をデジタル化してデータを収集するところから必要になり、かなりの時間と労力がかかります。


AIに欠かせないデータ、それが既存の業務においてどこまで活用されているか、それによってAI導入のスタート地点も変わってくるため、画一的なAIのトレーニングだけでは十分ではないでしょう。


まずはその企業のデータ活用の習熟度を見極め、その習熟度をひとつずつ上げていくというアプローチでないとなかなかAI導入の実現にはたどり着けないのではないかという気がします。


そもそもデータ活用が全くできていない企業が、一足飛びにAIを活用できるかというと余程の条件が整わないとほとんど無理ではないでしょうか。


データ活用の習熟度に応じて、その段階での課題と改善方法を検討し、実際に対応しながらスキルを身に着けていくという着実なやり方がやはり効果的かと思います。


もちろんAIの知識や事例を学ぶことも将来的なロードマップを描くことにもつながるので無駄ではありません。


ただし、最終的に学んだことを活かすにはやはりその環境がないと厳しいので、今の状況と課題をまずきちんと把握して、そのために必要なトレーニングなり教育なりを優先して行うほうが良いかと思います。


そのほうが最終的にAI活用の近道になるかもしれません。


ちなみに、データ活用を進めていくとAIを使わずとも多くの課題が解決できるようにもなります。業務の進捗状況が可視化されることで、課題が見つけやすくなるからです。


データの有用性はAIだけではありません。データ活用のための戦略を考えることもおすすめです。

データ分析ビジネス

データ分析ビジネス


ビジネスにおける一般的なデータ分析は、そのビジネスの改善のために行われます。


データ分析を行うことで、そのビジネスの現状、課題などを明らかにし、次にどうすれば良いかのヒントを探るという使い方です。


ただし、そのためにはデータ、分析システム、分析人材などが必要です。


昨今では多くの企業でデータ活用の取り組みが行われており、データ分析に全く関心のない事業会社の方がむしろ少数ではないでしょうか。


しかし、そうしたデータ活用に取り組む企業がすべて上記の準備を備えているとは限りません。


そこで、彼らがデータ分析を行うことができるようにサポートすることをビジネスにする企業もたくさん登場しています。


データに関するビジネス


データに着目すると、まず思い浮かぶのはデータそのものを販売するビジネスです。


通常は自社のビジネスに活用するのは自社で蓄積しているデータが主となりますが、自社以外のデータに対するニーズもかなりあるようです。


他社を含むマーケットの動きを知りたい、顧客についてもっと多くのデータを集めて詳しく知りたい、といった場合に、様々な企業や顧客のデータを幅広く集めてそれを販売している企業に声がかかります。


販売されているデータとして代表的なのは市場調査データ、小売業のPOSデータ、地理データなどでしょうか。


最近はスマホアプリのマーケティングのためにダウンロード数や収益などのデータを有償で提供するといったサービスなども利用者が増えているようです。


個人情報保護法によって個人に紐づくデータには当然制限がかかるので、何でもかんでもデータを販売できるというわけではありませんが、データは一度収集すればデジタルで劣化しませんし、コピーが可能なので大量販売のコストは非常に低くなります。


ニーズの高いデータを所有していれば有望なビジネスになり得るでしょう。


日本ではデータの流通が促進されるように「情報銀行」という制度も数年前に導入されました。


ただ、まだまだ認定企業は少なく、GAFAのような巨大な顧客とそのデータを保有している企業は誕生していないので、正直この分野の今後は未知数ですね。


(データ販売というより、多くの会員を抱えて彼らに広告配信するなどのプラットフォームビジネスなら結構有望かと思います。会員数拡大のために企業の合併や協業などは日本でもどんどん増えているようですし)


またもうひとつ、データをデジタル化することでビジネス化するというケースもあります。


自社が所有するデータであってもそれが紙の書類であったり、適切に管理されていなかったりすると、それらを分析等にて再利用できないという問題も各所で起こっています。


業務そのものがシステム化されていなかったり、あるいは分析等にて再利用することを前提に設計されていなかったりするのが原因です。


今そうした業務のデジタル化が急務として声高に叫ばれています。


DX(デジタルトランスフォーメーション)はバズワード化されてITベンダーにとって大きな市場となっています。


DXでは主に業務をデジタル化することで人的コストや時間的なコストを削減するのが主目的かと思われますが、業務のログデータを再活用することで、業務の改善につなげたりマーケティングや戦略・企画立案に活かしたりすることも可能になります。


そのためこうしたDXを推進するサービスを提供したり、あるいはSansanのように名刺データをデジタル管理できるサービスを外向けに提供したことで大きく業績を伸ばした企業もあるので、デジタル管理できていないデータをデジタル化して収集することにビジネスチャンスを見出す企業は今後も増えてくるのではないかと思います。


分析システムに関するビジネス


次にデータ分析を支えるシステム面でのビジネスです。


こちらはデータ分析基盤を構築するシステムインテグレーションのサービス、それらの一部となる様々なソフトウェアやツールの販売などです。


SIer、ITベンダー、コンサルファームなどが既にビジネスとして市場を形成しています。


分析基盤やソフトウェアも色んなものがあるので、自社開発したり、利用者の多いものを活用したり、各社それぞれ色を出しているようです。


最近よく使われている基盤はやはりGCPAWSでしょうか。クラウド環境もだいぶ増えてきているようです。


またデータを活用した業務をアプリケーションサービスとして提供する企業もあります。


MA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客管理)、SFA(営業管理)、DMP(データ管理プラットフォーム)、SCM(サプライチェーン管理)などです。


もともとは業務用のアプリケーションですが、データ活用した機能強化などもどんどん図られているようです。


様々なレポート提供やアドバイザリー機能などは有用ですし、今後の業務システムでは生成されるログデータを再利用した分析関連の機能はほぼ必須になってくるのではないでしょうか。


各種業務システムにどのような分析機能を組み込むのが良いか、といった方向でのマーケットの成長も今後見込めそうな気がしています。


分析人材に関するビジネス


次に人材に関するビジネスです。


データ分析を行う人材がいない、あるいは足りていない企業に対して、データ分析に知見のある人的リソースを提供するという人材ビジネスは既に大きな市場となっています。


データサイエンティストが流行し出したころから、長年に渡ってデータサイエンティスト自体とそれに関連する職種、データアナリスト、エンジニア、プログラマ、コンサルなど幅広い職種が多くの企業で常に不足しているようです。


自社に足りていない機能を補ったり、あるいはデータ分析業務を丸投げしたり、あるいはプロジェクト単位でチームを組んだりと用途は様々で、多くの企業でそうした人的サービスが利用されています。


またデータ分析人材を自社内にて育成するためのサービスも多くみられます。


有償の研修、教育、セミナーなども色んなところで開催されているようです。


これらの育成サービスはあらかじめカリキュラムや内容が決められているものが一般的ですが、コンサル企業などではクライアントの要望に応じてカスタマイズした内容を提供することもあるようです。


また分析ツールを提供している企業では、そのツールの使い方などを教育メニューとして販売しているケースもよく見ます。


今はWebやブログで個人がノウハウを無償公開したり、無償のチュートリアルやトレーニングツール、書籍(有償ですが価格は安い)などのコンテンツも充実してきていますが、やはり人から教えてもらう方が理解しやすい/続けられるとか、書籍等に載っていない話を聞きたいといったニーズもなくならないため、今後も有償の教育サービスはある程度需要が続いていくでしょう。


そういう意味ではデータ分析のマーケットがなくならない限りは、こうした教育サービスもビジネスとして安泰なのかもしれません。


最後に


とりあえず思いついたデータ分析に関するビジネスを色々と紹介してみましたが、私の知らないものや見過ごしたものもまだまだあるかと思います。


またネタが増えれば続きを書くかもしれません。


データ分析のマーケットは、今後の自分のごはんのタネになるかもしれないので、これからも多種多様化および拡大していってもらいたいものです。