前向きでない意思決定のためのデータ分析

色んな意思決定


データ分析は意思決定のために行うもの、とよく言われています。


ただ意思決定といっても、色んな意思決定がありますよね。


新企画を実施するかどうか、人手を増やすかどうか、システムを変えるかどうか、スケジュールを変更するかどうか、、、などなど。


基本的に意思決定のパターンとしては、いくつかにまとめられるのかと思います。


・やるかやらないか


M&Aや企業提携といった大きなものから、現場での業務活動といったレベルのものまで、様々な施策を行うかどうかといった意思決定が成されています。


一般的に民間企業だと営利団体なので売上や利益を伸ばし続けていくという目的を持っています。


やるかどうかの意思決定も、基本的にはかかるコスト以上にこうした目的への貢献が見られるかどうかでGOかどうかも決まるのでしょう。


もちろん規模が大きくなればなるほど影響範囲も広がるので効果の判断も難しくはなりますが。


・変えるか変えないか


既存の組織、業務、人事、制度、システムといったものを改善するかどうかといったものです。


これも企業目的に通じるかどうかで判断されますが、その前に既存のものとの比較が入ります。


コストも考慮して既存のもの以上に効果がないのであれば変えないということになるでしょう。


・どれをやってどれをやらないか


上記二つにおいて、選択肢が複数の場合です。


それぞれにおいて複数の選択肢間での比較も必要になります。


基本的には最も効果が高いものが選ばれることになるでしょう。(状況によっては複数の選択肢を選ぶことが可能な場合もあるかと思います。)



それぞれ何を指標とし、何と比較するかでデータが使われるので、データアナリストの出番もやってきます。


一方で、本題の「前向きでない意思決定」というものもあります。


前向きでない意思決定


民間企業だと売上や利益を伸ばし続けていくという目的を持っており、その目的に対して効果が見込めるかどうかで判断されると先に述べましたが、その効果よりも「リスク回避」に重きをおいた意思決定です。


利益が上がるかもしれないが、その逆に損失を出すかもしれない。


後者の可能性や影響の大きさによっては、やらない/変えないという判断をとるパターンです。


また最初に「やる」という意思決定を下したものの、実際にやってみると効果が低いあるいは逆効果が見られた場合に、他の選択肢に移行あるいは被害拡大防止といったリスク回避のために、途中で「撤退」して「損切り」するかどうかというパターンもあります。


この場合、データ分析側にはその原因を調べてほしいとよく依頼されます。


もし原因が分かればその対応がとれるかどうかの判断ができ、それによって継続すべきか撤退すべきかの意思決定の材料にもなるからなのでしょう。


分析側としては「対応がとれるかどうかの判断が可能なレベル」の分析が必要になります。


つまり実は原因を特定できずとも良くて、自社内のどこかに問題があるかどうかが判明できれば基本的には十分なんです。


例えば販促施策をしたけれど売上が想定より伸びない場合、あるチャネルに問題があって告知が一部届いてなかったとかなら、そのチャネルを正しく改善すれば問題ありません。


一方でそもそもどこにも問題はないが全体的に低いとか、外部要因(政治・金融・自然災害など)の影響が考えられるといった場合は、自社で改善は難しいので、撤退(損切り)したほうが良い判断ということになります。


時々その意思決定(撤退)をせずに、何か分かるまで分析しろと言われることもありますが、おそらくあまり意味はないだろうなと思っています。


ちなみに行動経済学的には人は損失を避けたい傾向にあるので、損切りはなかなか選択されにくいものです。(株式投資などでもよく聞く話です)


よって実際に「やる」という判断をとってから、のちの状況によって「撤退(損切り)」の意思決定を下すのはなるべくなら避けたいものでしょう。


ということは最初の段階で「止める」という判断を下せていれば、無用な損を出さずに済んだかもしれません。


とはいえ、最初にありとあらゆる要素に関して将来のリスクの大きさや可能性を正確に予測しておくのは非常に難しいことでしょう。


リスクがほぼない、あるいは限定的といった場合ならばともかく、そうでない場合も多いでしょうから、効果がよろしくないと分かった場合に早めに撤退(損切り)できるようにしておくというのがベターなのではないかと思います。


そのためには、自社内のどこかに問題がないかどうかをモニタリングするKPIと、売上/利益といったKGIで撤退すべきラインをあらかじめ決めておくことです。


ようはPDCAをきちんと設計するということです。


最後に


意思決定という言葉にはどこか前向きなものというイメージが付きまとうような気がしていますが、当然そうでない場合もあるでしょう。


前向きでない意思決定が必要(と思われる)場面ではなるべく損切りをしたくないせいか、不確定なリスクを精緻に予測しろとか、マイナスの原因を徹底的に調べろとか、単純に分析結果に不満を持たれたりとか、データアナリストにとってやりにくい場面も多々あるかもしれません。


データアナリストは何かあったときに何とかしてくれと頼られることが多いような気がしますが、そうした場面での自らのリスク回避のためにも、なるべくなら事前に「何かあったとき」にどう備えるかといった方面でも仕事をしておきたいものです。