データサイエンティストじゃないけど、データ分析する人たち

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データサイエンティストという職種が生まれる前からデータ分析という言葉はありますので、表題の「データサイエンティストじゃないけど、データ分析する人たち」もたくさんいます。シチズンデータサイエンティストなどと呼ばれたりもするようです。


例えば、経営者や財務担当者は自社の財務データや経営指標データを分析し経営判断や投資判断などを行います。管理職であれば、管理対象の進捗状況のチェックと改善のために業務ログデータを分析します。企画職は、企画立案のために市場調査データなどを分析します。


彼らの分析は、業務目標を達成するために関連する業務指標を見極め、そのデータを分析することで改善箇所を特定するためのものであり、その後実際に改善のためのアクションを行います。そのため業務目標の達成や改善を実際に実現できたかどうかが重要で、統計学機械学習のようなデータを処理する専門性よりも、適切な業務指標を見極める力、その数字を上げるための企画立案力、その企画を実行するための行動力や人を巻き込む力、そしてそのベースとなる業務知識などが必要とされます。


表題の方々は元々自らの業務の一部として分析業務も自分たちで行っていましたが、データサイエンティストというデータ分析の専門家(?)が現れたことで、データ分析業務をそこに頼もうとする人たちも増えてきました。専門家にまかせることによって、おそらく今まで以上により良い経営判断、業務改善、企画立案などができるようになるのではないか?との期待もあったと思われます。


しかし、結果的にはそうした期待通りのアウトプットどころか、今まで自分たちで実施していたレベルのものすら出てくることはあまりなく、「データサイエンティストは役に立たない」となってしまうケースもいまだに少なくないようです。


データサイエンティストに言わせると、自分たちはクライアントの業務の全てではなく一部(分析部分)を担当する役割であるため、そもそも最初から業務全体に精通しているわけでもなければ、分析を通して全体最適につながる業務設計とその推進を行う役割でもない、少なくとも分析のゴールイメージくらいは共有してもらえないと何をして良いのかわからないとのことです。


彼らの代表的な仕事は機械学習を使って精度の高い予測を行うことのようですので、基本的に彼らはクライアントにそうした作業によって解決できる課題を求めます。もしそうした課題がない状態で機械学習を使ってあれこれしたとしても、結果を評価されない可能性が高いので、そうした仕事は受けたくないという考えの人さえいます。


実際のところ表題の人々のデータ分析は「業務目標の達成のために」様々な業務の様々な場面(一部)で行われるもので、データ分析の部分だけきれいに役割分担して外に切り出せるとも限りません。よくよく聞くと、そもそもは分析を含めた業務全体の最適設計を行うことや、分析と企画と実行を高いレベルで推進・管理できることが求められていたりするわけで、分析の専門家よりはその業務の専門家に相談した方が良いというケースも多々あります。そうなるとデータ分析とは何をどこまでやるの?データサイエンティストって必要なの?となってしまってもおかしくありません。


ただ、当然ながら表題のひとたちとデータサイエンティストはお互い相容れない存在というわけではありません。表題の人たちの分析に掛かる業務をよくよくヒアリングしてみると、非効率なやり方や統計的に間違った解釈をしていたりすることもあります。プログラミングに長けている人たちばかりでもないので単純にデータの集計が間違っていたり、Excelによる手作業で属人的かつメンテナンスが大変な業務になってしまっていることもよくあります。そもそもデータ自体もバラバラに集められていたり管理もしっかりなされておらず、いつ失くなってしまってもおかしくない状態であるということすらありえます。分析手法も昔ながらの枯れたやり方を踏襲していることも多いので、他業界やデータサイエンス界隈で実績のある手法を取り入れることなども可能かもしれません。


また繰り返しですが表題の人たちにとって分析は業務の一部でしかなく、全てではありません。彼らは分析をすれば業務として完了というわけではなく、それ以外にもやるべきことはたくさんあります。そのため、例えば業務指標の設計やそのためのデータ収集の部分などは、他の人にアウトソースできるもしくはシステムで自動化できるとなると、業務工数の削減につながるため有難いという人も多いでしょう。


このように彼らの分析業務における課題をしっかり理解し、そのために何をすれば喜ばれるかをきちんと考えれば、データサイエンティストも彼らと協調して活躍できる場面は出てくると思われます。データサイエンティストというと、分析の専門家として彼らにしかできない「高度な分析」をまずやりたがる人たちが多いようですが、クライアントありきの仕事でもありますので、まずクライアントの課題の把握とその解決のために何をすべきかを傾聴することは忘れないようにしなければならないのではないかと思います。


「データ分析しないけど、データサイエンティストな人たち」では定義や役割の細分化が進むと述べましたが、データサイエンティストがどのような課題でも解決できる万能の存在としてハイレベル人材であり続けるというよりは、この課題を解決するにはこのスキルや経験のある人、また別の課題では別の人が適切といった具合に役割分担がしやすくなることで、データサイエンティストへの依頼にアンマッチが起こりにくくなるようにもなっていくのだろうと思います。


また一つの役割を深堀りしてスキルアップしていくだけでなく、必ずしもひとつの役割に閉じる/限定する必要もないと思うので、複数の役割をこなすとか新たな役割を生み出すといったキャリア・スキルの多様性を磨くことで、データサイエンティストの幅の広さを追及していくことも可能になるかもしれません。