Analytics translator is "must - have" role ?
最近表題の職種についてよく見かけるようになりました。元ネタはマッキンゼーのレポートのようです。
以前からビジネスとアナリティクスの間を埋める役割が必要とされているという話はよく聞こえていました。
確かにデータサイエンティストをうまく活用できない原因のひとつに、ビジネスサイドでの理解不足やコミュニケーション不全などもあるのでしょう。
しかし、新たにアナリティクストランスレーターなる人材を投入すればそれが解決されるのでしょうか?
上記のマッキンゼーのレポートでは、must have role と書かれていますが、実際のところは must have ではなく、nice to have なのではないかと思います。
つまり、「いたら便利かもしれないけれど必須ではない」ということです。
ビジネスサイドもアナリティクスサイドも求めているのはプロジェクトの成功やアナリティクスの導入・活用であって、アナリティクスの翻訳ではないはずです。
ある場面でアナリティクスの翻訳が必要なことはあるかもしれませんが、それを主とした役割の人材がいないとプロジェクトが成功しないなどという必須条件であるとはとても思えません。
おそらくそうした人材が無償かあるいはごく低価格で調達できるならばお願いしたいというニーズはあるかもしれません。
しかし、もしビジネスサイドやアナリティクスサイドの人材と同じくらいかそれ以上のコストがかかるというのならば、アナリティクスに知見のあるビジネスの人材やドメイン知識が豊富なアナリティクス人材を雇うほうが良いと判断されるのではないかという気がします。
Analytics translators need "project management skill" and "entrepreneurial spirit" ?
レポートでは、アナリティクストランスレーターには、プロジェクトマネジメントスキルと起業家精神が必要と書かれています。(あとドメイン知識と一般的な技術スキルもおそらく前提条件として必要とのこと)
確かに本来の目的であるプロジェクトの成功やアナリティクスの導入・活用を達成するためには、単なる用語や考え方の翻訳だけではなく他にも必要なスキルはあるでしょう。
ただそれが、なぜプロジェクトマネジメントスキルと起業家精神なのかはよくわかりませんでした。(私の読み方が浅いせいかもしれません)
個人的には以下のスキルの方が必要ではないかと思いました。
・アナリティクスの特性や注意点を踏まえたプロジェクト企画やプロダクト開発計画を立案できるようビジネスサイドを支援するスキル
プランニングスキル
アナリティクスプロジェクトの経験
・ビジネスサイドとアナリティクスサイドのコミュニケーション不全を解決して意思統一を行うためのスキル
ファシリテーションスキル
ネゴシエーションスキル
ヒューマンマネジメントスキル
調整力・根回し力
プレゼンスキル(説得力)
To success projects
一方でビジネス側がアナリティクスを学ぶ、アナリティクス側がビジネス(ドメイン知識)を習得するという流れも今や一般的です。
個人的にはこちらの方がしっくりきます。
というのも、最初に述べたようにアナリティクストランスレーターはプロジェクトの成功などの目的に対して必須の役割ではないので、わざわざそのポジションに人をアサインすることまで必要なんだろうかと思います。
現状ではビジネス人材もしくはアナリティクス人材がそのポジション「も」こなすほうが、お互いの理解も進みプロジェクトの成功につながる気がします。
IT業界においてもビジネスサイドとエンジニアサイドの間にITトランスレーターやエンジニアリングトランスレーターといった職種の人は通常いませんよね。両者の間の橋渡しは、プロジェクトマネージャーやシステムエンジニア、ITコンサルタント、営業などの人たちが業務の一部として行っているのではないでしょうか。
ただあえてそのポジションの必要性を考えてみると、ビジネスとアナリティクスどちらにも寄らない立場の人間がいれば、双方からの苦情・苦言・不満などを吸い上げやすくなり、ガス抜きもできるという意味で緩衝材などとしては有用かもしれませんね。
さらにビジネスとアナリティクスとの橋渡しや緩衝材としてだけではなく、彼らをともに理解し、まとめあげ、お互いの強みを活かして相乗効果を発揮させられるような付加価値を生み出せる人材なら、歓迎される可能性は高いでしょう。
そのような優秀なアナリティクストランスレーターの活用によってプロジェクトが成功に導かれたといった事例が増えてきたら風向きは変わるかもしれません。
Where can we find them ?
さて、そんなアナリティクストランスレーターはどのように調達すれば良いのでしょうか?
レポートでは、外部からの採用はその企業に対する知識が十分でないため厳しく、内部人材を育成する方が良いとしてマッキンゼーのトレーニング実績が紹介されていました。
半分ポジショントークかもしれませんが、今までなかった職種に適正のある人材を新たに探して見つけるよりも、ベーススキルや経験のある人材に成長してもらう方が合理的な点は確かに納得できます。
ただ、よほど高いマネジメントスキルやコミュニケーションスキルを持つ素養のある人材が社内にいるならば、プラスアルファのトレーニングでなんとかなるかもしれませんが、そうでない人材に対しては一人前まで育てあげるのは容易ではないでしょう。
ということで今のデータサイエンティストのように役割を細分化されてそれぞれ得意な人たちを集めてなんとかするということになるのでしょうかね。
それで結局アナリティクス用語と考え方を翻訳するだけの人しか集められなかったら悲しいことになりそうですね。