リクナビの内定辞退予測と個人情報の扱い

リクナビ内定辞退予測の概要


リクナビの内定辞退予測が色々と話題になっています。


business.nikkei.com


学生のリクナビ内での行動履歴などから算出した内定辞退率というデータを外部提供することにあたって、学生側の同意を得ていなかったとして、個人情報保護法に違反する恐れがあるという内容です。


実際に個人情報保護法違反となれば問題であるのは明らかですが、それ以上に多くの学生に心理的な嫌悪感や不安を抱かせた点が大きな問題となっているようです。


リクナビ側はこうしたことを踏まえて内定辞退率データの提供サービスを廃止することにしたと発表しています。


データ分析と個人情報保護法


データ分析を行う上で、顧客データを取り扱うことはよくあります。特にBtoCビジネスを行っている企業であれば、一般消費者の属性や取引履歴等がデータとして蓄積されていることでしょう。


こうした顧客データは個人情報保護法にのっとって適切に管理されなければならないものです。


まず顧客データを収集する際には、顧客に対して事前に取得するデータの利用目的や利用範囲を明示して利用の許諾を得る、合わせてそれら個人情報を取り扱う場合の個人情報保護の方針(プライバシーポリシー)も明示するといったことが必要です。


そして実際にデータを扱う際には、その方針が遵守されるよう適切な管理・監視等も行われなければなりません。


データの利用目的は、マーケティング活動に活かすとか商品・サービスの品質向上などがよくあるケースかと思いますので、マーケターやプロダクトの責任者などは、業務上プライバシーポリシーを熟知してそれが守られているか適切な管理も行うことになります。


データ分析者はそうした業務の主管ではなく、途中の分析プロセスにおいて限定的に関わるのが一般的なので、分析業務を行う上ではあまりプライバシーポリシーを気にしない人もいるかもしれません。個人情報の漏洩を防ぐために、最低限分析に必要な個人情報以外はアクセスを制限されているとか、外部持ち出しできない環境で仕事をしているとか、アクセスログを取得して追跡可能な状態にされているとか、環境面での制約はあるかとは思いますが。


しかし、当然データ分析者もデータの利用目的に関わっているので、プライバシーポリシーを理解してそれがしっかり守られているか意識しておかなければなりません。


個人情報を扱う企業では、担当者や職種に関係なく全社員にセミナーを受講させるなど取り組みをしているところも多いと思います。


あと個人情報保護法は3年ごとに改正されるので、個人情報の定義や取り扱いに関する手続きやルールなどについては適宜キャッチアップしていく必要もあります。


個人情報を収集・利用されることに対する消費者側の意識


消費者の中には、企業に自分の個人情報を提供したくないとして利用許諾を拒否する人も多数います。


しかし、若い人たちの中にはそうしたことに対して、利便性を感じると評価する人も多くなっているようです。


gendai.ismedia.jp


確かにWebサイト等で、商品・広告・情報・検索結果などがランダムに表示されるより、自分にあったものが表示される方が便利に感じるのも納得です。


ただ一方で、若い人たちは個人情報が流出したり悪用されたりするリスクをきちんと認識できていないのではないかという意見もあるようです。


今回リクナビの事件が広く報道されていることで、若い人たちの個人情報に関するリスク意識もまた変わってくる可能性があるかもしれません。


今後の動向(想像)


消費者側もこうした事件を通じて、個人情報を収集されることに対する利便性とリスクについて改めて意識する人も増えると思われます。


リクナビ自身も、今回の事件が大きく取り上げられたため、新たに個人情報保護法を遵守する体裁を整えた上で同サービスを再開するということはおそらくしないでしょう。


しかし、これを受けて他の企業においても個人情報を収集・利用する動きが自粛・縮小傾向になるかというとそうはならない気がします。


一時的には影響があるかもしれませんが、基本的に企業は消費者の個人情報をビジネスに活用したいと考えているので、そうしたデータの収集・利用の流れは止まらないと思います。


ひょっとすると、リクナビの競合企業で個人情報保護法に違反しない形で似たようなサービスを始めるなんてところも出てくるかもしれません。


ただし、今回の事件でも話題になったように、個人情報の利用の目的や範囲等については、消費者にきちんと伝わるようにした上で利用許諾を与えるかどうか判断してもらわなければならないので、今後こうした点がさらに厳格化される可能性は高いと思います。


そうなると個人情報の利用目的の中身によっては許諾する人がまったくいなくなることも考えられなくはないので、企業側も個人情報保護法に違反しない範囲で表現や言い回しを工夫してくると思われます。


この辺の線引きは微妙になるかもしれませんが、消費者側にも自らの個人情報の利用許諾を与えるかどうかしっかり考えて判断することが求められるようになるでしょう。


データ分析者としてはデータの量や種類が増えればWelcomeなのかもしれませんが、その背景にある個人情報に関する事件、消費者の意識、法律なども無視できないものなので、必要なスキルとして今後も学び考えていきたいところです。