戦闘力ならぬ信用力を測るスカウター

信用力(信用スコア)とは


某漫画のネタに例えてみましたが、コンセプトは遠からずではないかと思います。


昔から主に金融機関でローンの申し込みがあった場合に、申込者の信用力によって融資額や金利などの条件が変えられていました。信用力の低い人には多額の融資は下りませんし、途中で返済できなくなるリスクも高いので金利も高くなります。一方信用力の高い人には他行に取られないように低金利の優遇条件が提示されたり、もっとたくさん借りてほしいと金融機関から融資の打診があったりします。


この信用力を定量的に扱えるように数値化したものが信用スコアになります。信用スコアは主にクレジットカードの返済履歴や貯蓄額といったデータを元に算出されているようです。元々は米国や英国で広まってきたようですが、日本でも返済履歴関連のデータが信用情報機関にて管理されており、金融機関等はローンの際に申込者の信用情報を照会して融資の判断材料のひとつとして利用されるといった似たような仕組みはあります。


そして近年中国ではアリペイなどの電子決済が普及してきたことを背景に、アリババグループの芝麻信用という信用スコアが世の中に浸透してきているというニュースがよく流れています。この芝麻信用は、スコアが高いと低金利で借り入れができるだけでなく、ホテルやレンタカー、シェアバイクのデポジットが免除されたり、商品を購入する前にお試しで利用できたりするなど、新たな優遇サービスもどんどん誕生してきており、信用スコアの活用シーンの広がりを見ることができます。


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芝麻信用のような信用スコアを活用した新たな優待サービスは色んな方面で注目されており、日本でもみずほ銀行ソフトバンクグループの共同出資会社で提供されている「J.Score」やLINEの「LINE SCORE」などが出てきています。これらもCMやニュースなどで見たことがある方も多いかもしれませんね。


データサイエンティストが信用スコアを算出?


芝麻信用の個人向けのスコアは、350~950点の間でスコア化されており(高いほど信用も高い)、スコアの算出方法は以下のような様々なデータが元になっています。

信用スコアの算出は、「身分特質」「履約能力」「信用歴史」「人脈関係」「行為偏好」の5つ観点から行われる。

「身分特質」は、学歴、会社、運転免許証などのデータ、「履約能力」は過去の支払い履行能力を示し、住宅購入積立金、不動産や車などの資産のデータ、「信用歴史」は、いわゆるクレジットカードなどの購入履歴だ。「人脈関係」はSNSなど他のアカウントとのつながりから交友関係を評価し、「行為偏好」は消費に関する特徴を指し、ショッピングや支払い、振り込みなどの特徴から算出される。

「信用をスコア化」する中国、芝麻(ジーマ)信用の仕組みが日本でも通用するワケ 連載:中西 崇文のAI未来論|ビジネス+IT


こうした話からも信用スコアを提供する企業では、優秀な機械学習エンジニアやデータサイエンティストが活躍していることが想像されます。日本でもメルカリグループのメルペイでは関連の求人情報が出てましたので、今後信用スコアのサービスの広がりの兆しが見えてくると、こうした求人が増えてきたり、新たなデータサイエンティストの投入先になったりする可能性も高いのではないでしょうか。


信用スコアを算出し新しい信用を創造したいデータサイエンティスト募集!


信用スコアが今後どうなるか予測


データは21世紀の石油であるという言葉をちらほら聞きますが、ただのログデータやデモグラフィックデータだけでは、ふつう直接ビジネスにつなげたりマネタイズすることは困難でしょう。ログデータは石油として精製される前の状態のようなものですし、デモグラフィックデータは個人情報保護法等によりそのまま活用できないものです。


しかし今回紹介した信用スコアは、実際にビジネスに活用されているという点からも、上述の「21世紀の石油」のひとつとして見なしてもよいのではないかと思えます。


これまで企業側は自社の商品やサービスをたくさん購入してくれるなど自社内の取引データでしか優良顧客を判別できなかったのが、信用スコアを利用することで予め優良となりうる可能性の高い顧客を見極めてアプローチすることが可能になりますので、興味を持つ企業も今後増えていくと思われます。


また現在の信用スコアが、「金銭の支払いや返済に関する信用」を表しているものであることから、他にも似たような信用スコアが今後生まれてくる可能性もあるのではないかと思います。


例えば、各種SNSの指標(フォロワー数や友達数、リツイート数)や発言内容などを元に情報の拡散力や影響力を表す信用スコアとか、Github上のコードや技術記事の投稿、QAサイトでの活動履歴などを元にエンジニアの経験値を示す信用スコアなどがあると、それらを活用した様々なサービスが考えられそうな気がします。


ただし、一方で信用スコアの影響が大きくなると、それだけで様々な物事が判断されてしまい、結果として不平等が発生する可能性も問題視されています。


信用スコアは上記の芝麻信用の例で少し紹介したように、ロジックはブラックボックスであってもどのようなデータを元に算出されているかわかれば、ある程度意図的に上げることも不可能ではありません。


また、現在の金銭の支払いや返済に関する信用のスコアが、変に拡張して解釈されてしまう可能性も低くないでしょう。例えば就職や結婚などの金銭の支払い等と関係のない場面でも、信用スコアが高い人ほど評価も高くなるという色眼鏡で見られてしまうことが起こり得るということです。


人の価値はひとつの数値指標だけで決まるものでもないのは自明ですが、実際にこうした信用スコアが普及していくのであれば、せめて他にも様々なスコアも普及してきて多角的および多用な価値観による評価・判断ができるようになって欲しいと思います。