データアナリストの肩書きを外して仕事する

データ分析関連の仕事をしている人は、データアナリスト、データサイエンティスト、データ分析官など様々なジョブタイトルが名刺に入っていると思います。


おそらくその中に「データ」という単語が入っていないタイトルはほとんどないのではないでしょうか。


またそうした方々が所属する部署名やチーム名にも、「データ」という文字が入ってるところは多いかと思います。


社内外のクライアントがそうしたデータ○○の担当者に仕事を依頼するとき、アウトプットは「データ」で出てくると考えるであろうことは想像に難くありません。


これはつまりクライアントの課題解決の手段が暗黙のうちに限定されてしまっていることにもなりかねません。


あるいは課題解決というよりも、有用と思われる「データ」をいかにたくさん提供してもらうか、に目的がすり変わってしまうことすら起こりえます。


あまり例えはよくないかもしれませんが、株式投資をしていて保有銘柄が目標の株価に到達しても、もっと上がるかもと思って欲張ってしまう心理が働いてしまうようなものでしょうか。


クライアントと打ち合わせをしていると、途中でこんなデータを見たい、あんなデータを見たいという発言がよく出てきます。


どうも会議が進むと、目的が何だったのか、どんな課題を解決したかったのか、何を明らかにしたかったのかなどを忘れてしまいがちなようです。


いつのまにかデータマイニングをすることになって、その作業の洗い出しになってしまうこともよくあります。


もしそのように方向性がずれてきたら、こちらから逐一目的や課題を改めて再確認し、それに必要なデータはどういったものかを考えましょうという方向に軌道修正する必要が生じ、なかなか苦労します。


なんとか本当に必要なデータを理解してもらえたとしても、まだ安心はできません。


最後に「念のため」とか「一応」という枕詞をつけて、結局は最初に見たいと言っていたデータの提供も依頼されます。


本当に必要なデータはすでにクライアントの元にあったとか、あるいは諸条件により取得不可であったなど、我々が改めて作業する必要がないような場合であっても、我々に何かタスクをさせる=データを提供させることをしないと気が済まないのか、どうしても何らかのデータも出すことが落としどころになってしまうこともあります。


なお、結果的に彼らの目的に照らして意味のないデータを提供するという余計な仕事をしてしまっても、それでクライアントが満足するのであれば無駄な仕事ではなかったということで良しとする考え方もありです。


ただこういう仕事が増えてくると、モチベーションに影響してくる担当者も少なくありません。


クライアントのデータリテラシーの問題なのか、データ○○担当に対する先入観のせいなのか、あるいはデータ○○担当がうまく彼らを納得させられていないためなのか、原因は色々考えられます。


データ○○担当としては、そうした原因をそれぞれ解決していくために、クライアント向けにデータ分析の仕事をより理解してもらうトレーニングや啓蒙活動を行うとか、自身のデータ分析スキルや交渉・ファシリテーション等のスキルを磨くなどの取り組みも考えられます。



前置きが長くなりましたが、一方でデータ○○担当としてはクライアントの課題解決に向けてはデータ分析という手段をとることが前提ですが、逆に自らが考え方をそう縛られてしまっていないかということも最近ふと考えます。


データ○○担当はデータ分析で課題を解決できるように、クライアントに目的をきちんと定めてほしいとか、エンジニアや会社にデータおよび分析環境を整えてほしいといったことをよく言います。


しかし、それは必ずしも別の誰かにまかせるべきタスクかというと、そうでもないのかもしれません。


対クライアントでは、データ○○担当も事業目的の理解や仮説出しにより関わろうとしてドメイン知識の習得に力を入れる人もいます。対会社では、データの利用者側としてフィードバックを行うなどエンジニアとともにデータ整備に取り組む担当者もいます。


データ分析周辺の業務に関わることで、よりそちらに主軸を置く判断をした人たちは、データ○○担当からプロダクトマネージャやマーケター、AIエンジニアあるいは専門コンサルタントなどにキャリアチェンジすることもあります。


例えばプロダクトの責任者になった人は、仕事領域は幅広くなり、分析以外のタスクも数多く抱えることになりますが、プロダクトに関して一番の裁量と権限を持つことができます。


また自ら効果的なデータ分析や活用を考えたり実践したりもできるので、分析スキルや経験のないプロダクトマネージャよりも強みを持っています。そのスキルや権限を活用し、プロダクトをより良いものにしていくことに注力できることにやりがいを感じるのも理解できます。


以前データサイエンティストとデータアナリストの違いとして、前者は専門性を高めることを重視し、後者はビジネスへの貢献を重視する傾向にあると考察したことがありましたが、特に後者のタイプの人は必ずしもデータ○○といった肩書に縛られなくても良いのかもしれません。


特にデータ分析スキルは様々な業務において役立つ汎用性の高いスキルだと思われますので、それを活かして次のキャリアをどう選ぶかは広い視点で考えたいところです。