少年ジャンプ+のデータ分析

少年ジャンプ+」では、様々なデータをマンガ作りに活用されているそうです。


ジャンプルーキー!のサイトに「少年ジャンプ+」のデータ担当の方のインタビュー記事が掲載されていました。


rookie.shonenjump.com


上記の記事では、マンガの1ページごとの読者維持率について紹介されています。


以下引用です。

ほとんどの読切作品では2~3割のユーザーは1ページ目で離脱しています。
その後、大体のユーザーは最初の3~5ページ、長くても10ページ前後で読むかどうかを判断している傾向にあります。
ページが進むにつれて読者は減りにくくなっていき、前のページの読者の99.8%以上が次のページを読んでいるような状態になると読者が定着したと感じられます。


この読者維持率が99.8%に到達するまでにどれくらいのページ数を必要とするかで、「掴みの強さ」を計測されているそうです。


この「掴みの強さ」はもちろん大事な指標ではあると思うのですが、こういった維持率や離脱率というのものは因果関係を逆に捉えられてしまうことが多くて、結構要注意な指標です。


掴みの強さを重視するあまり、「最初の数ページさえ継続して読んでもらえれば、最後まで読んでもらえるだろう。だから最初の数ページにとにかく引きの強そうな絵、キャラ、エピソードなどを持ってこよう」などと考えても、はたして成功するかというと疑問です。


上記のような構成にしたことによって、ストーリーに不自然な点や矛盾などが生じたり、最初以降どんどん盛り下がっていったりしてしまうのは論外ですが、そもそも読者も多種多様なのでそのマンガに元々興味を持てない層も一定数いると思われます。


なので、そうした人たちまで最初の掴みで何とか継続的な読者にしようとしてもそれはなかなか難しいことでしょう。(ひとまずその回は最後まで読んでくれるかもしれませんが、次回以降は読まれずに離脱されてしまう可能性は高そうです)


あくまで最初の掴みというのは、本来そのマンガに興味を持ってもらえそうな読者であるにも関わらず、「読みづらさ」や「わかりにくさ」などで離脱してしまわないようにするために確認する指標なのではないかと思います。


インタビューでも掴みを強くするには、「最初に見せ場を持ってくるべし!」などとは書かれておらず、最初の方の文字量を多くしないなど読者に負担をあまりかけないことが挙げられていました。


逆に言えば、いくら掴みを強くしても限界がある(そのマンガに興味がない読者まで継続し続けられない)とも言えます。


まあマンガの場合は路線転換もしやすいので、人気のあるバトルものに変えるなどして新たに興味を持ってもらえる可能性もゼロではないようですが。


よって、通常は継続率をあげたいならば、読みやすさなども大事ですが、そもそも元々そのマンガに興味のありそうな人にだけ読んでもらうことが一番効果的だと思います。


しかし、継続率にこだわるあまり、興味のある人にだけしか紹介しないなどして入口を狭めてしまうと「読者数を増やす」という観点では効果が低くなる可能性もあります。


とはいえ、誰彼問わず読者をたくさん集めても、継続率を軽視して離脱が増えてしまうと、穴の開いたバケツに水を入れ続けるという状態で結局のところ読者はほとんど増えてないなんてことになりかねません。


この辺りはマンガに限らず、各種サブスクリプションサービスや会員ビジネスなどでも共通するのではないでしょうか。


集客を広げれば継続率が下がり、集客を限定すれば継続率は上がる、といったトレードオフの関係になったりするので、トータルの顧客数を増やすにはどのバランスが最適か?の判断は難しかったりします。


基本はSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)戦略をしっかり考えて集客していくことだと思いますが、データしか見てないとどちらかに偏った分析になってしまったりするので注意したいところです。


ちなみに「ジャンプ+」でもこうしたSTPを踏まえたデータ分析などは行われていると思いますが、個人的にはこの領域のデータ活用が一気に進んで、その人に興味のありそうなマンガがお勧めされるレコメンドが非常に賢くなることを期待してます。


私はマンガ好きなのですが、まだ見ぬマンガの中にも読めば興味惹かれるであろう作品はたくさんあると思うので、そうした作品にひとつでも多く出会えるといいなと思ってたりします。