新型コロナ影響下におけるデータ分析

新型コロナによる影響そのものについては、日々のニュース等によって感染者数の日次推移やエリア別の分析が紹介され、医療や感染症の専門家による今後の見通しなどが語られています。


さらにそうした環境においては、様々な商品やサービスも平常時とは異なる需給状況となっています。


マスクや消毒液などはずっと需要が供給を上回っていますし、一時期はトイレットペーパーや一部の食料品の買い占めが発生していました。


旅行や外食などの業界は自粛の影響もあり、大幅な売上ダウンとなっています。業種によってはお店を閉めたりオープン時間を短縮するなど、サービス提供形態まで変化しています。


一般企業では平常時においてはいかに売上を増加させられるか、コストを削減できるかといった収益面の改善が主たるビジネス目標ですが、今の状況では顧客や従業員の生命や健康をいかに守れるかを一番に考えてビジネスを行うところが多数になっていると思います。


そのため、顧客の来店や社員の出社を制限するなどの環境を前提とした上で、いかに事業としても継続性を保っていけるかというBCPが改めて注目されています。


そうした中データ分析の領域で求められるものは、現状の正しい把握や今後の予兆やリスクを分析することなどでしょう。


新型コロナ影響以前や昨年同時期と比べた需要の変動の確認、平時とは異なる環境下における今後の売上の見立てなどは早期に確認が必要となるでしょう。また今後の戦略を立てる上では、チャネル・商品・地域・体制などどういう形でリスク分散をしつつ事業継続が可能となるか検討されるでしょうから、その際のシミュレーション等において活用するために、現在の売上やコスト、リソース状況などを様々な粒度で分析することも求められるでしょう。


現在の状況では売上の落ち込みやコスト増加などマイナス要素があっても、それが新型コロナが要因であればこちらからのアクションによって改善できる見込みは薄いため、マイナス要素そのものをどうなくすかというよりも、マイナス要素を他でどうカバーするかがよりポイントになってきます。


そのための手がかりとなる客観的なデータを提示して、BCP観点での戦略立案にどう貢献できるかが今はデータアナリストにも求められてくると思います。


売上アップやコスト削減への貢献といったわかりやすい成果は出しにくい領域かもしれませんが、この状況を乗り切ることで大きなやりがいにもつながると思いますし、我々もできることをしっかり頑張っていきたいですね。

データアナリストにとってのやりがいとは

ビジネスマンなら誰しも仕事にやりがいを求めているのではないかと思います。


やりがいを感じられるとモチベーションも上がります。思考や行動もポジティブになります。また結果につながれば待遇や給与にも好影響をもたらす場合があります。


ではどうすればやりがいを得られるのでしょうか。


そもそもやりがいとは一定のハードルを越えた際にそれを自己あるいは他者からの評価によって実感することです。


ありがとうと感謝された、自分が成長できたと感じた、大きな結果を出すことができたなどの場面は正にやりがいを感じる瞬間だと思います。


さて、そうしたやりがいを得るためにはそれなりのハードルを越える必要があります。低いハードルであればなかなか自分や他者からの評価にはつながりにくいでしょう。


そのために自己研鑽やスキルアップが必要になります。


そこで新卒や若手のビジネスマンはまずはとにかくスキルアップできる環境を求める傾向が強いのではないでしょうか。


そしてある程度経験を積みスキルを身に着けてきた中堅になってくると、どのような種類のやりがいを重視するかタイプが分かれてきます。


ざっくり分類すると、高い評価を得たいか安定的に評価を得たいか、また他者からの評価か自己評価かどちらを重視するかで分けられるでしょうか。


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高評価×他者評価重視


こちらはコンサルタントタイプと思われます。クライアントの課題を解決したり、彼らに実利のあるメリットをもたらすことによって評価されることを好みます。


彼らはクライアントやその関係者から目の前で感謝や労いの言葉をたくさんもらえたり、上司や会社からの評価も上がって自らのリターンにつながるなど直接的かつ明解な評価を得ることでやりがいを感じます。


当然ながら成果の大小によって評価の大小も変わります。高い評価を得て多くのリターンにつなげたいとか直接的でわかりやすい評価を得たいという人はこのタイプでしょう。


安定評価×自己評価重視


こちらは高い評価を目指すというよりも、こつこつと評価を重ねていくことにやりがいを感じるタイプです。


日々の自己研鑽や目の前の課題をひとつひとつこなしていくことで経験を積み、自身の成長を実感したり経験値が上がっていくことに、よりやりがいを感じます。


こちらは技術者に多くみられるタイプかと思います。「継続は力なり」という言葉が好きな人が多そうです。



高評価×自己評価重視


こちらも他者よりも自己評価を重視するという点で技術者と似ていますが、非常に高い評価を得たいという点が異なります。おおげさにいうと、まだ世の中にないものを生み出したいとか、世紀の大発見をしたい、歴史に名前を残したいなどを目指して己を奮い立たせるタイプです。あえていえば、学者や研究者タイプとなるでしょうか。


安定評価×他者評価重視


最後はマネージャータイプです。彼らは個人としての仕事で大きな結果を出すとか自己の成長にこだわるなどよりも、小さなことでもチームに貢献することで周りの関係者などから評価・重用されることにやりがいを感じるタイプです。野球でいえばホームランを打って目立ちたいというよりも、チームの勝率を上げるためにバントや四球も厭わないイメージでしょうか。


このタイプは着実に結果を出して評価を積み重ねていきたいので、他のタイプよりもミスに過敏に反応しやすいかもしれません。しかしその分失敗が少なく信頼感を蓄積していくことができればやりがいや満足感も醸成されていくことでしょう。



それぞれのタイプを先ほどの分類図に貼ってみたものが下記となります。


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データアナリストにはいずれのタイプも存在します。


データ分析によってクライアントの課題解決や意思決定の支援をしたいコンサルタイプも、各ステークホルダーの縁の下の力持ちとなるような技術者タイプも、新たなアルゴリズムを開発したり予測精度の追求に力を注ぐ研究者タイプも、そして多数のデータアナリストを取りまとめてチームを運営するマネージャタイプもいます。


なお、こうした分け方は一例なので、さらに細かく分けたり別の分け方もできるでしょうが、みな何がしかのやりがいを得られるからこそ、その仕事をしているのだと思います。


もし今仕事にやりがいを感じられなくて環境を変えたいなどと悩んでいたとしても、その前にそもそも自分にとってどのような仕事がやりがいを感じるのかを改めて見直してみることはおすすめです。そして改めて周りを見渡してみると、必ずしも環境を変えなくても自分にとってやりがいを得られる仕事が見つかるかもしれませんよ。


また企業側にとっても、自社のビジネスモデルや各部署・ポジションがどのようなやりがいを重視している人に向いているのか理解することは、採用や育成面で重要です。


さらに企業・組織の成長につなげるためには、各社員のやりがいを充足できるような評価や環境なども合わせて必要になってくるのではないでしょうか。企業の理念やビジョン、コアバリューといった共通の価値観を整えるだけではなかなか十分ではないでしょう。

顧客満足度の測り方

先週は顧客分析が求められる背景を紹介しました。

custle.hatenablog.com


今回は先週の続きで、顧客分析においてよく出てくる顧客満足度について考えてみたいと思います。


顧客満足度とは


顧客満足とは、顧客の期待を超えることとよく言われます。


リッツカールトンや星野リゾートなどの事例は有名で色んなところで見かけますね。


ただ顧客の期待を超えようとして行ったサービス等が、本当に顧客の満足につながったのか、単なるおせっかいに過ぎなかったのかを判断するのは難しいことです。


常に顧客からフィードバックをもらえるとは限りませんし、もし感謝や満足の言葉をもらったとしてもひょっとしたらそれは社交辞令で本心は違ったりするのかもしれません。


さらにその感謝や満足の言葉が顧客の本心からのものだったとしても、収益面では特に効果がなかったのであれば果たしてその取り組みは成功といって良いのかどうかも悩ましいところです。


前回紹介したバランススコアカードで言えば、顧客志向指標を重視するあまり、顧客収益指標が変わらなかった(むしろコストが余計にかかってしまっただけだった)というようなケースも実はたくさんありそうです。


よって様々な事例が本当に成功事例なのかどうか実際のところは収益指標が見えないとわかりません。そのため公開事例に感銘を受けて真似しようとしても失敗してしまう可能性もあります。おそらくそのような失敗事例も世の中に知られることなく陰で数多く埋もれていることでしょう。


できれば真似する前にかけたコストに対してどれだけのリターンが上がるかなどの顧客収益指標をきちんと見積もった上で取り入れるかどうかを考えたいところですね。


とはいえ、顧客収益指標はサービスを提供したそのときのリターンだけでなく将来的なリターンや口コミ等による他の顧客への影響なども考慮が必要かもしれません。そうしたリターンの定義や範囲をどう決めるのか悩ましい上に、実際にやってみないと測れない類のものなので、見積もるのも簡単ではありません。


ただ成功企業では従業員に顧客サービスのためにxxx円まで使ってもよいといった形で基準となる予算内であれば個々の裁量に任せているところもあるようなので、見積もりの難しいリターンよりもコスト管理の方をしっかりすることで、収益指標に大きくマイナスの影響を与えないようにしているといったこともあるのかもしれません。


アンケートによる顧客満足度の計測


顧客満足度、特に顧客志向指標の計測方法で代表的なものは顧客へのアンケート調査です。


商品やサービス等に対する満足度を聞かれたアンケートに答えたことがある人も多いのではないでしょうか?


大変満足した/やや満足した/普通/やや不満だった/不満だった


といったような5段階評価のアンケートで、「大変満足した、あるいはやや満足したと回答した人が80%おり、高い満足度を得られることができました」といった内容のレポートを見たことがある人もいるかもしれません。


ところでみなさんは上記の回答でどれにチェックをつけるか悩んだことはないでしょうか?


特に可もなく不可もなくといった場合だと「やや満足」と「普通」で回答が割れる気がしませんか?


こうしたアンケートではなかなか明確な基準を設けるのは難しいものです。


人によって「やや満足」と「普通」の感覚が異なるかもしれないので、アンケートを集計しても正しく顧客全体の満足度を反映したものになっているとは限りません。


さらに満足したかどうかといった言葉ならまだしも、10点満点で何点でしたか?といったような聞き方だと、それこそ7点の基準と8点の基準が万人で全くそろうということはないでしょう。


選択肢にしても5段階、3段階、10段階とアンケートごとに満足度の聞き方がバラバラだと、複数のアンケートを比較したり時系列的な推移を測ることも難しくなります。


ところでそもそもこうしたアンケートで聞いた顧客の満足度が高いことがその企業にとって良いことなのでしょうか。


上記でも書きましたが、顧客志向が高いことがイコール顧客収益も高いとは限りません。例えば、満足度が高いと回答したからといって、継続して顧客になってくれるかどうかはわかりません。競合製品と比較検討するなどじっくり考えて回答した人もいれば、なんとなく感覚で回答したという人もいるかもしれません。満足度という言葉自体が人によってその意味するところや範囲なども様々です。収益性指標との関連性は不明です。


しかし昔ながらの方法であるということや他にやり方がないということで今もこうした満足度調査を継続しているところは多いと思います。


NPS(ネットプロモータースコア)による顧客満足度の計測


マーケティング界隈では数年前くらいから、NPS(ネットプロモータースコア)という指標に注目が集まってきています。


これは簡単にいうと、顧客に対象の商品やサービス等に満足したかどうかではなく、知り合いに勧められるかどうかを聞いたものになります。


勧められるかどうかを11段階で回答してもらい、強く勧める(9~10点)と回答した人の割合から、あまり勧められない(0~6点)と回答した人の割合を引いた値で算出します。


このNPSは事業の業績や成長率などと相関が高いそうです。つまりNPSを上げることは業績アップにつながり、投資対効果が見込まれるということで上層部やスポンサーの理解を得やすいということでもあります。


バランススコアカードでいう顧客志向指標でもあり顧客収益性指標でもあるという、一つで二つの役割を担う便利な指標ということですね。


ただ事業の売上や収益との相関が果てしてどのようなケースでも当てはまるのだろうかは気になります。また点数のつけ方も定義が統一されていたりある程度はっきりした回答しか使用しない点は客観性が高いものの、やはり個人の感覚による判断は完全に除外されているわけではないのは気になるところです。


それでも現在のネット社会ではSNS等による情報の拡散性の影響は非常に強いのでこうした指標は効果の面で期待は持てそうです。実際の活用事例や効果が色々なところで叫ばれるようになってくると今後広がってくる可能性は十分あるでしょう。


顧客満足度という言葉にとらわれ過ぎない


元々は企業の売上や利益を上げたい、そのためには顧客の視点でいうと、顧客数や顧客単価を増やしたりコストを削減することが重要です。


しかしどうすればそれが実現できるのか?


顧客満足度が高くなれば、コストをかけなくても顧客数や単価も上がるだろう、それに満足度を上げるためのアクションも思いつきやすいということで、顧客満足度を重視する流れになったと思われます。


顧客満足度が高いと、顧客は離反しにくくなります。次回もまた購入してくれる可能性も高いです。新規客や競合客に比べて宣伝や販促コストもそれほどかかりません。


顧客満足度を向上することは間違いではありませんが、重要なのはそのためのアクションが本来の目的である顧客収益指標に結びついているかどうかです。


顧客収益指標ではなく、顧客満足度が目的であると現場に勘違いさせてしまうと、リターンとコストに対する意識が希薄になって収益指標を低下させかねなくなります。


さらに顧客満足度という言葉も具体性に欠いた言葉なので、そのまま現場に伝えても現場側も自らの思い込みで行動してしまい、結果顧客にとって余計なお節介で本来の満足度はむしろ下がったなんてことも起こりかねません。


よって顧客満足度はそのまま指標として扱うのではなく、収益指標に効果があり具体的に定義したものに言い換える必要があります。


とはいってもどうやって定義すれば良いのかも悩ましいですよね。


なかなかこれといった正解があるというわけでもなく、事業やサービス、ビジネス形態などによっても異なってくるでしょう。それにひとつではなく、複数の指標になるかもしれません。


一つのヒントとしては、収益指標の高い顧客と低い顧客、常連客と離脱客などの違いを調べてみるのが良いかと思います。


おそらくは収益指標の高い顧客は満足度も高いであろうと思われます。彼らが何に満足を感じていて一方で収益性の低い顧客は異なるのかを明らかにすると収益性につながる指標が見つかるかもしれません。


ひょっとすると、その商品・サービス・ブランドのとある情報を知っているかどうかとか、見た目がインスタ映えするかどうかなど意外と単純なことだったりするかもしれませんよ?

顧客分析が求められる理由

顧客志向の経営


企業の経営戦略やビジョンの中に「顧客志向」やそれに類するキーワードを掲げているところはたくさんあります。


「顧客の理解を深めよう」「顧客の声により耳を傾けよう」「顧客満足度を上げよう」などといった方針が経営陣から現場に出されます。


それらに関連してか、顧客に関するデータ分析を求められたことのあるデータアナリストも多々いることでしょう。


経営層が顧客を重視すること自体は違和感はないと思いますが、ではどのような経営をすれば顧客志向や顧客重視になるのか?具体的な戦略な戦術といった詳細にまでどのように落とし込めば良いのか?ということは経営陣もおそらく頭を悩ませるところだと思います。


とりあえずそのための示唆を出すために、何か顧客分析をしろと言われて困った経験のあるアナリストもいるのではないでしょうか?(私はあります)


バランススコアカードを参考にした経営計画


経営の教科書のひとつにバランススコアカード(BSC)というものがあります。


経営計画を立てる際に、売上や利益といった財務指標だけではダメで、他に「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」からもビジョンと戦略を立てて管理するというフレームワークです。


企業の中期経営計画においては、このBSCを参考にされることが多く、中身に上記の視点に関する記述が出てくるのをよく見ます。


中でも顧客の視点に関しては、どの企業の中計でも似通った内容に落ち着いているのではないでしょうか。表現は多少異なれど大体は「顧客満足度を高める」といった傾向の内容です。


本来このBSCでは各戦略はKPIという定量的な指標によって管理されるようですが、一般に公表されている中期経営計画にKPIの記述まであるところは少ないので、BSCをKPI管理まで活用している企業はあまり多くないのかもしれません。


まあ公開していないだけで内部的にはKPI管理をしている可能性もあるのですが。。。


いずれにせよ、顧客志向という方針を立てるのであれば、具体的な戦略とその管理のための定量指標は必要です。


顧客分析も基本的にはその指標が現在どのような状況にあるのか進捗を管理することと、指標が見通し通りの進捗にない場合にどこが問題なのかを明らかにするために行うことになるでしょう。


しかし、顧客満足度を高めるという戦略を定量指標に落とすのはなかなか難しいと思います。


顧客満足度が高いというのはどういう状態のことをいうのか?そしてそれはどのようにデータとして客観的に把握できるのか?といったことを事前にしっかり定義しておかねばなりません。


例えば商品・サービスのシェアが高ければ、それだけ競合ではなく自社商品が選ばれていることなので顧客満足度が高いといって良いのか?


あるいはもっとシンプルにクレーム発生率や解約率などで顧客満足度を測れば良いのか?


また忘れてはならないのが財務的な目標(売上や利益向上)との兼ね合いです。例えば単純に利益度外視で商品やサービスの価格を下げれば顧客の満足度は上がるでしょうが、売上や利益向上にはつながらなくなり本末転倒になります。


なおバランススコアカードでは、顧客側の視点と企業側の視点の2種類があって、それぞれ顧客志向指標と顧客収益性指標と呼ばれます。


例えば前者はクレーム発生率などで、後者は顧客一人当たりの売上やコストなどがあたります。


財務的指標との関連性を重視する場合は、顧客収益指標が重視されます。が、顧客収益指標だけに着目するとコストを削るあまりサービス品質を低下させてしまうなど顧客志向に逆行してしまう恐れもあり、両方の視点でKPIを立てることが必要です。


長くなりそうなので次回顧客満足度の指標や測り方について考察してみたいと思います。

分析に必要なデータの集め方

人事の領域における代表的なデータ活用に「離職者予測」があります。


各種データから辞めてしまう可能性の高い社員を見つけ出すことです。


離職者予測はそれほど難しいものでもなく、よくある人事・勤務データや面談記録のデータ、定期的に実施されるアンケートデータなどがあれば結構高い精度を出せます。


なんとなく想像できると思いますが、辞めてしまう人間は現職に対してやる気をなくしていたり、ストレスや不満を感じているため以下の傾向が見られることがよくあります。


・面談で現状維持やネガティブな発言が多い
・周りとの関係が良くなく、評判が悪い
・長時間残業が恒常化している
・休みが増えた、残業が減った
・評価が高くない
・評価は高いが給料が低い、役職が低いまま
・転勤など環境に大きな変化があった
・社内イベント、研修などに参加しなくなった
・節目の勤続年数を迎えている
・などなど


もし退職して欲しくない社員の退職可能性のスコアが高い場合は、その影響要因を取り除くように上長等がフォローするなどが行われます。


例えば人間関係であれば部署異動や配置転換、単純なものなら席替えなど。


例えば待遇や給料に不満があるのであれば、昇格や昇給など。


例えばキャリアに関するものならば、彼らの望む経験やスキルが身につく仕事のアサインなど。


こうした対策をとることで離職率を下げることに成功している企業もあるようです。



さて、先ほど離職者予測は難しくないと述べましたが、それは離職要因に関するデータが最近は結構そろってきているからに他なりません。


とはいえ面談などのデータなどはテキストのままで残されていたりするため、構造化するための前処理が結構大変だったりしますけどね。


昨今の風潮からも社員の満足度調査や360度サーベイ、各種研修などを通して、社員の勤務状況や価値観等に関するデータの収集が進んできています。


こうしたデータは人事異動や組織変更などの参考にするという明確な目的をもって収集されているので、離職者予測などにも活用しやすいものが多く含まれています。


できれば分析で利用しやすいようにフリーテキストではなく、選択肢形式等で構造化しておいて欲しいところですが。。。


すなわち、目的を設定 → そのために必要なデータ収集 → 分析 となっています。


これが、とりあえずデータ収集 → データの使いみち(目的)を検討 → 分析 となっていると後で必要なデータが足りないとかデータがなくて分析できないということに陥りやすくなります。


このご時世データは各種業務システム等から取得されていてたくさんあるから、そのありもののデータで十分分析に足ると信じて疑わない人が何故かよくいるのですが、そろそろそんなことはないと認めて欲しいところです。


例えば、材木を適当に集めてきてここにある材料で何か我々が喜ぶ建物を建ててくださいと言っても大工さんも困ってしまうことでしょう。


とりあえず建物を建てるだけならひょっとしたらなんとかなるかもしれませんが、クライアントのニーズに合うものかどうかは博打になってしまいます。それにそもそも材木しかないのに欲しいのは鉄筋コンクリートの建物だったと言われたらどうしようもありません。


データ分析においても、まず最初にそもそも目的は何かを確認するのはほぼ鉄則となっていますが、ざっくりとした目的だけでなくそれを達成するために明らかにしなければいけないことは何で、そのためにどのようなデータが必要で、現状使用できるデータと足りないデータが何で、足りないデータはどうするかといったことも、クライアントと具体的に詰めておくべきです。


特に必要と思われるが取得できてないデータがある場合は、新たに取得するためにシステム改修を行うか、手運用等で収集を行うか、あきらめるかといった判断も必要になります。


手運用でやるとなると、最初の離職者予測の事例のときのように顧客等の対象者に定期的にアンケートや面談などのインタビューを実施したり、あるいは業務ログ等のデータに目検で新たなタグ付けを行ったりするなどのやり方で収集することが考えられます。


一時的にだけ必要とかデータ収集の頻度が低いといった場合は手運用でも事足りるかもしれませんが、それなりの頻度で定期的に収集が必要となればやはりシステム化など自動的に収集できる仕組みやその運用が必要になります。


また最近はデータバンクやオープンデータなど外部からデータを集められるようにもなってきていますが、おそらく業務目的で使えるデータは社内の基幹システムから取得できるログデータがまだまだ主流かとは思いますので、まずは社内システムから目を向けることになるでしょう。


とはいえ新たなシステム導入や既存のシステム改修などは気軽にできるものではないのと、改修してすぐはデータが貯まっていないので分析できるようになるまでさらに時間がかかることも考えられます。そのためできればシステム開発や機能改修等が計画されているなどのタイミングで、業務で再活用するために必要なログの取得も検討項目に入れるよう働きかけるなどはおすすめです。


そもそもデータ活用、データ分析といった言葉の「データ」とは今手元にあるありもののデータのみに限定した言葉ではないはずです。


データアナリストとしては、新たに必要なデータは何か、どうやって取得できるか、その運用をどうするかといった視点も合わせて考えたいですね。

社員が辞めない会社は良い会社なのか

データ分析をしていると、ある数字を上げたいとか、逆に下げたいという要望をよく聞きます。


その数字は本当に上げるのが良いのか、あるいは下げるのが良いのか、少し気にしてみるのもおすすめです。


というのも基本的には上げる(下げる)ほうが良いのだけれど、上げすぎる(下げすぎる)と逆効果になるものもあるからです。


例えば、広告を打つ回数


広告を増やすとそれだけ多くの顧客を獲得できる可能性は上がりますが、同じ顧客に複数の同内容の広告が届いたり、短期間に何度も広告が届けられたりしてしまうと、顧客側がうっとうしいと思って逆効果になる場合もあります。メールマガジンなどであれば解約されてしまうかもしれません。SNS系のチャネルであれば低評価にされてしまうかもしれません。スマホアプリであればアンインストールされてしまうかもしれません。


顧客の離脱を招いてしまうような販促施策は、穴の開いたバケツに水を貯めようとする行為に近くなるので、やりすぎないように(バケツに穴が開かないように)ある程度の制約が必要になってきます。


例えば、離職率


離職率は低いほど良いことのように思えますが、あまり低すぎると社員が全然辞めないということなので、逆に辞めてほしい社員も留まっているということになります。社員が長く会社に在籍できるような環境や制度を整えることは、社員にとって安心して働けるとか会社へのロイヤリティが高まるといった良い面もありますが、一方であまり仕事をしなくてもそれなりの給料が安定してもらえると考えてしまう生産性の低い社員も増えるという負の面もあることでしょう。


昨今では終身雇用を維持するのが厳しい情勢となりましたので、業績が悪くなると急にリストラを実施して離職率を上げる企業も多々あり、離職率を低い水準で維持し続けることが果たして良いことなのかは押して知るべしですね。とはいえ、突然のリストラは社員にとって大きな混乱を招くので、あまり良策ではないのかもしれません。ある企業では人材の流動性が上がるように全ての社員に特定のタイミングで退職すれば退職金を上積みするなどのメリットを用意して、離職率を一定水準にキープするためのマネジメントを行っているそうです。普段からそうした方針を明確に示されているほうが、突然リストラ発表されるよりは安心でしょうし、前向きなキャリアプランも立てやすいのではないかと個人的には感じます。


例えば、企画のヒット率


ネットフリックスの創業者はインタビューの中で、「(Netflixオリジナル作品の)ヒット率は高すぎる」と話していたそうです。より積極的にリスクを冒すことで、失敗作を出しながらもより大きなヒットを狙うべきだとの考えをお持ちのようです。確かにヒット率が最重視とされてしまうと、前例のない大胆な企画よりも前例ある無難な企画などにまとまりがちな気がします。しかし、そうした企画では小さなヒットは狙えても大ヒットの期待は非常に低いのかもしれません。


施策や企画の成功率が高ければ高いほど良い、あるいはミスや失敗の割合が低ければ低いほど良いというものではない場合もあるということは重要ですね。



ちなみに分析やってる人は似たケースとして最適化問題に対応したことがあることと思います。ただ通常は与えられた問題のように制約条件が明示されているとは限らないので、自分で制約条件を見出せないと誤った目標を立ててしまったりするかもしれません。指標や数値を上げすぎる(下げすぎる)と何か問題はないか常に意識してみると、良い示唆や分析につながるかもしれませんね。