データアナリストのマネージャーに必要なスキル

部下目線のマネージャー


・相談しやすい
・いざというときサポートしてくれる


いわゆる360度評価を行うと、上記のような上司へのコメントがよく上がってきてます。


確かに最近身近にもそのような管理職が増えているように感じます。


元々そうした性格の人が管理職についているというのもありますが、昨今の働き方改革や人手不足などの風潮も相まって、特に若手の部下が辞めないように気を遣っての行動という面もあるのではないかと思います。


一方同時に下記のような不満が出てくるのもよく耳にします。


・属人的な業務が多々残っている
・不要な会議や報告書作成など無駄な業務が多い
・ノウハウやマニュアル等がきちんと蓄積・管理・共有されていない


これらの声は直属の上司への不満というよりは、自部署以外も含めて会社全体への不満なのかもしれませんが、実際のところは会社の問題というよりやはり各部局の管理の問題に帰着するのではないかとも思います。


すなわちだれの責任かと言われれば、管理職の責任であるということになるのでしょう。


ただ、上司は上司で部下に辞められたくない・嫌われたくないと思っている、あるいは部下が指示待ちではなく自発的に仕事をすることを望んでいるので、部下が助けてほしいといえば助けるが、基本は自由にさせて細かく口出ししないようにしていた結果なのかもしれません。


ちなみに上司がこのような対応をしていても、部下が優秀であれば上記の不満・問題はあまり出てこないだろうとも思います。


優秀な部下は全て自己判断で突っ走るというようなことはせず、関係者には適切な報告・連絡・相談を自分から行いますし、情報等も自分ひとりで抱え込むようなことはせずに必要なドキュメントとしてきちんと作成・管理・共有します。そうすることが、自身の業務効率化にもなるということをわかっているからです。


すわなち、上記の不満の原因はある意味部下側の問題というのも少なからずあるとは思います。


しかし通常はそのような優秀な部下ばかりでもないでしょうから、そうでない部下に合わせた管理もやはり必要です。


部下の自立心を養うためといっても、何でも部下任せにして放置しすぎるのも良くないでしょう。(もちろんガチガチにマイクロマネジメントするのもダメでしょうが)


さらに部下の目標設定を部下にさせるというのも私からすると結構不思議な慣習に感じます。


部下からすると基準もわからないし、達成したところでどう評価されるのかもわからないままではないでしょうか。


部下個人がこうなりたい、こうしたいとか、あるいは上司の目から見てここが弱いとか苦手なものを克服させようとして設定するのは、チームの目標に関連するものならともかくどちらかといえば育成計画とかキャリアプランであって、評価のための目標設定とは別にした方が良いと思います。


チーム目線のマネージャー


上司にとって負荷はかかりますが、上司がチームの目標達成を前提に、他のメンバーとのバランスを見ながら、かつ部下に何を期待しているのか明確に伝わるように設定すべきではないかと思います。


ということで、管理職は少なくともチーム目標をもとに各メンバーの目標や期待値、合わせて基本的な業務方針やルールなどをきちんと整備するくらいはやるべきではないでしょうか。


特にデータアナリストなどはどうしても業務の進め方が固定ではなく各人の経験やスキルに依存する部分が大きいので、担当が変わると全くやり方やアウトプットが変わるということが起こりやすい職種です。


仕事の進め方を一から全て部下任せにしていると、品質にもかなりバラツキも出てくることでしょう。


かといって上司が細かく仕事の進め方を指導したり管理したりするのはやり過ぎかもしれませんが、最低限仕事の進め方のテンプレートやマニュアル、過去の案件の事例や資料、Wiki掲示板等の情報共有ツール、トレーニングコンテンツなどは整備しておいたほうが良いと思います。


またデータの集計や統計・分析の解釈等でミスがなるべく出ないように、チェックを行う仕組みもあった方が良いでしょう。


チームのパフォーマンスを最大化するマネージャー


マネージャーのミッションは管理するチームのパフォーマンスを最大化することであるとよく言われます。


部下がそれぞれパフォーマンスを発揮できるように、余計な口出しをせずにただフォローに徹するという上司であれば、チームのパフォーマンスは部下次第ということになります。


部下が優秀であれば達成できる可能性が高く、そうでなければ可能性が下がる、それは果たしてマネージャとしての評価につながるものなのでしょうか。


もちろんマネージャにも様々なタイプがいるので、一概にどれが正解というのは難しいでしょう。(チームとしての評価という意味では結果させ出せばあり、と見なされることもあります)


マネージャーにはコーチングも含まれるので、仮にスポーツの世界で例えると、超一流選手を相手にするコーチもいれば、学校の部活や子供向け教室等で青少年育成を主とするコーチもいます。選手の自主性に任せてのんびり育てるのが得意なコーチもいれば、スパルタで厳しく管理するのが得意なコーチもいます。またバランス派もいます。


データアナリストの世界でも各種タイプがいると思いますが、スポーツの世界等と異なりごく少数の超一流選手を輩出するよりも、人手やスキル不足といった環境の中でもチーム全体を底上げして結果につなげることのできる、有名高校の野球部監督のようなタイプのマネージャのほうが今のところは必要とされているのではないかと思います。


ただ今後は、超ハイスペックデータアナリスト(ビジネスマン)を短期間で育成することを専門に手掛けるコーチングビジネスなんてのも出てくるかもしれないので、それはそれで結構興味があったりします。

データ戦略の立て方

最近、大規模顧客を抱える企業・サービスの提携が進んでいます。


・ヤフーとLINE
・ドコモとリクルート
・ドコモとメルカリ
KDDIとローソン(w/Ponta


一番の目的は顧客数の大幅拡大で、提携によってお互いの顧客を送客し合うことが狙いでしょう。


ただ、個人情報保護法もあるので、顧客データを丸ごと相手に渡すということはせず、自社サービスを他方の顧客にプロモーションして、自社顧客登録を促す形になると思われます。


お客が顧客登録を行い会員になれば、企業は会員とコミュニケーションをとれるチャネルを持つことができます。


そのチャネルを使って、会員がまだ購入していない商品やサービスを勧めたり、しばらく取引が減少している会員のフォローを行い離脱を防止するなどして、会員のLTVアップを狙うことができるようになります。


特に通信業界などは顧客の奪い合いが日常化しているので、離脱率は重要なKPIとされているようです。


いかに顧客を囲い込むかを苦心してこれまではサービスの価格や品質で競合と差別化していたことが、お互いの企業努力でなかなか差別化が難しくなったために、「いかに顧客から離脱されにくくするか」にも注力せざるを得なくなっています。


アプリ一つで、様々な買い物から旅行の予約・各種支払いの決済・SNS・ゲーム・音楽や動画を楽しむなど様々なことができるようになる「スーパーアプリ」という言葉も誕生していますが、これも企業側からすれば顧客に便利さを提供するとともに、他のサービスに簡単に乗り換えにくくする囲い込み戦略のひとつなのでしょう。


また昨今多くの会員が集まるプラットフォームは、外部の企業からも広告の出稿先として魅力的に映るため、広告媒体(メディア)としてのビジネス価値も向上します。


グーグルなどは正に売上の大部分が広告収入で利益率も非常に高いことで有名です。


そのため、最初は利益を度外視して多額の費用をかけてでもまずは会員を大量に獲得することから始めようとする戦略の企業も散見されます。


こうした状況を見ていると、昔はいいものを作れば売れるというプロダクトアウトの戦略が主流だったのが、顧客の多様化からニーズに合ったものを提供するマーケットインの戦略に代わり、今は顧客を集めることが重視され、そのコミュニティの構築・維持・拡大の戦略にシフトしているような気がします。


もちろんその上で、個々の顧客のニーズや満足度を満たすにはどうすれば良いのか、新たなニーズを満たすような新商品を開発できるかなどの戦略を考えることも引き続き必要だと思います。


一方でデータをビジネスに活用するために、データ戦略として、データを集める、整備することに取り組んでいる企業もいます。


それはそれで重要なことで、最初に紹介した大規模提携を行っている企業でも取り組んでいることだと思いますが、大局的な視点ありきの戦略であるかどうかは重要なポイントではないでしょうか。


ただデータを集めて整備して、あとそれを分析するだけでは売上は増えないので、まずはビジネス拡大につながる絵図をきちんと描いた上で必要なことを見極めて実践することが大切だと思います。

年収2000万円のデータサイエンティスト

年収1000万円のデータサイエンティスト


数年前からデータサイエンティストという職業に注目が集まり、需要に対して供給が足りていないことから高給が期待できるとの話があちこちで叫ばれています。


大手IT企業では、データサイエンティスト等を含む高度IT人材に対する報酬を、通常の給与体系とは別に定めて最大数千万円まで支払う制度を導入することも発表されています。


そうした気運を受けて、最近東大生の間でもデータサイエンティストが人気職業になっているようです。


https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2001/14/news038.html


上記の記事ではタイトルにもあるように、新卒でも年収1000万円が期待できる企業が増えているようです。


フリーランスであれば月に150万円ほどの単価の案件もあるとのことなので、年収換算では2000万円弱に到達できるようです。


一応相当な知的レベルとビジネスセンスも求められるのでハードルは高いという注意喚起もなされています。


私が就職活動をしていたころは、今のデータサイエンティストと同じような感じで、当時の高給取りの代名詞であった外資系コンサルや外資系金融に高学歴の学生が殺到していたので、いつの世も似たような風潮だなあと感じます。


ただ当時の外資コンサルや外資金融は企業数も多くなく募集人数も少数だったためかなり狭き門だったのですが、今のデータサイエンティストはあちこちで需要の声が上がっているので、頑張ればなんとかなるんじゃないか感を持つ学生も当時よりは多くいるのかもしれません。


ところで日本の企業の求人募集では、一般社員や管理職クラスで年収2000万円以上の案件はほとんど見かけないのではないでしょうか。給与幅の上限値も、高くとも2000万円までとされていたりすると思います。


これは2000万円を超えると確定申告が必要となるため、一般的な会社員であればおおよそこれくらいが上限とみなされているからではないかと推測します。あるいは、年収2000万円を超えているのは日本企業では主に役員や経営者なので、そことの一応の線引きをしたいのかもしれませんね。(日本企業の経営者の中には、社長や役員よりも給与の多い社員はけしからん!という考えの人も未だに存在しています)


※ちなみに今年(2020年)から税制改正で850万円以上の会社員も増税になるため、~850万円までという求人の数も増えているように感じます。


ということで、外資系企業やフリーランスを除いた場合、データサイエンティストとして仮に新卒で1000万円をもらえる企業に就職できたとしても、役員以上に出世できるようになるまでは昇給しても天井は2000万円くらいまでという可能性が高いのかもしれません。


※当然役員に出世することも狭き門なので、ほとんど給料が上がらずに頭打ちになってしまう可能性の方が高いのでしょうけど。


といっても、世の中の平均年収が400万円ほどと考えると年収1000万円は十分に高給です。これで十分満足という方も多いでしょう。


年収2000万円のデータサイエンティスト


中にはもっと稼ぎたいという人もいるでしょうが、前述の通り年収2000万円以上はさらにハードルが高くなります。


フリーランスでも2000万円以上となると、月170万円以上の単価の案件をこなす必要があります。なお税金や社会保険等を考慮して会社員と同水準の手取りとなるともう少し高単価が必要です。


そうした高単価案件は今のところは数は少なく非常に狭き門のようです。


※ただしエージェント会社経由ではなく、個人の伝手や業界ネームバリュー等で案件獲得できればより高単価も意外とあっさり獲得できるかもしれません


では年収2000万円を超えるにはどうすれば良いのか?


データサイエンティストとして高スキルになるとしても、一人での生産性には限界があるので(難易度も高いので)、複数名で稼ぐというのが現実的な路線ではないかと思います。


知り合いにデータ分析系人材を集めて多数のクライアント企業のデータ分析関連業務を業務委託契約でこなしている会社を経営している人が数名います。


仮に一人月100万円で契約し、うち半分は会社の取り分とすると、10人いれば年間で6000万円になります。20人いれば年間1.2億円です。固定費がたくさんかかるビジネスでもないので社長の取り分(役員報酬)を高く設定することも可能でしょう。


またデータ分析関連のソフトウェアの代理店をやってる人もいます。


こちらはデータサイエンティストというよりは、そうした領域に詳しいセールスやコンサルタントを集めてソフトウェアを販売し、マージンを得ます。


こちらもセールスの数を増やせばそれに応じて売上も伸びるので、高い年商が期待できます。


まあこれらの人たちはデータサイエンティストというよりも経営者な側面の方が強いので、年収2000万円のデータサイエンティストといって良いのかは微妙かもしれませんが。


あとは、WebサービスECサイトを運営する企業と売上に応じて報酬を受け取れるインセンティブ契約を結んでグロースハック的な仕事をするデータサイエンティストも高報酬が期待できると思います。残念ながら私の知り合いにはいないので実情はわかりませんが、コンサル企業ではそうした案件もあるそうです。もし個人でやれるならアフィリエイターのように腕一本で売上をスケールさせることもできるかもしれません。


高年収を目指す場合は、どこかでサラリーマン的なキャリアから独立や経営者的なキャリアにシフトするのが一般的なのではないかと思います。


とはいえデータ分析(に限らずビジネス一般)は、年収だけなくやりがいや社会貢献などといったモチベーションもあるので、そちらの観点を追求した結果、年収も自然とついてきたというのが理想なのかもしれませんね。高年収の人ほど幸福度も高いというわけでもないようですし。



以下からは宣伝です。


「データ分析思考のトレーニング」講座をUdemyで販売しています。


データ分析を実務に活かす考え方を、いくつかのケースで学んでいただける内容です。


www.udemy.com


問い合わせフォームからご連絡頂ければ最安クーポンもご提供させていただきますので、ご興味あれば是非どうぞ!


また、データ分析に関するお仕事のご相談などがあれば、以下もご覧ください。ご対応可能なメニューを記載しております。


custle.hatenablog.com

ログ分析とデータ分析

ログ分析とは


むかしIT業界にいたころ、ログ分析という業務がありました。(今もありますが)


今でいうところの「データ分析」とは少し異なり、ITシステムのログを元に下記のような業務を行うことです。


・システムリソースが枯渇していないかの確認
バッチ処理など定期的かつ自動的に実行される処理の稼働確認
不正アクセスやイレギュラーな使用がされていないかの監視とその保全


目的はITシステムをユーザが適切に利用できる状態に維持すること(品質担保)で、分析を行うのもデータアナリストではなく、ITシステムの運用担当者です。


基本的には各種監視項目を自動検知してアラートを上げる仕組みが実装されていたり、ログの管理ツールで状況がわかりやすく可視化されていたりするので、担当者が生ログを目検で分析するということは何か異常がない限りあまりありません。


当然専門的な統計の知識も不要です。


特に現在の様々な業務はITシステムの利用がほぼセットになっているため、ITサービスが使えないと業務が停止してしまう恐れがあり、安定的な稼働・供給は欠かせません。そのためそれを支える(運用業務の一環としての)ログ分析も重要な仕事です。


ただ、ログ分析自体は通常売上増加などにつながるものではなく、なかなか投資対効果の図りにくい業務でもあります。


もちろん優秀な運用担当者であれば、何か問題が起こったときにいち早く要因を特定し問題解決を早期に実現することが可能なので、それが引いてはシステムの停止時間を短くし機会損失の極小化につながるという金銭的な効果も見込めます。


しかし、基本的にはそうした属人的な対策に費用をかけるよりも、最初から問題が起こらないように予防する仕組みにコストをかける方が実用的とされています。


ログ分析をデータ分析に取り入れる


一方データ分析においては、データマイニングのイメージのせいか、売上改善やコスト削減などが期待されることが多いです。


そのためマーケティング、広告・宣伝、販売(レコメンド)などの売上に直結する効果の最大化、あるいは製造・調達・流通などの領域のコスト削減のために使用されるケースが多いようです。


しかし、周知の通り上手く成果を出せていない企業も多々存在します。


そうした企業は、データ分析に問題があるのではなく、業務そのものに問題があるのではないかという気がします。


業務が属人化しており担当者によって成果が大きく変わる、しかもそれを形式知化できていないため横展開できないなどといった状況に覚えはないでしょうか。


そうだとすると売上も優秀な担当者の活躍や企画が偶々ヒットするかどうかといった偶発性の高い要因しか見込めなくなり、データ分析はあまり役に立ちません。


あるいは逆に業務のやり方やプロセスが過去の慣習からからずっと同じで、変えようとしてもリスクやコスト面で非常に変えにくくなっており、情勢の変化に柔軟に対応できないという状況であれば、おそらく戦略を練ったりデータ分析したりをいくら行ってもそれが実務に反映されないので、大した効果は出ないでしょう。


「一発当てる」のを狙うのもよいですが、それしかないとビジネスがただの博打になってしまうので、構造的な改革も合わせて取り組むべきではないかと思います。


そのためには、まず各種業務の進捗やプロセスが定量的に可視化されている状態が必要です。そしてPDCAを回していけば、構造的な面での改善も進めていけるのではないでしょうか。


とここでようやく冒頭のログ分析の話とつなげますが、ITシステムのログ分析のように、データ分析が期待される各種業務のログもきちんと収集・管理して分析する仕組みを実装することで、適切に回っている状態を維持できることが期待できないでしょうか。


また何か問題が発生したときに、その要因をつきとめ対策をとることもスムーズかつ柔軟に行うことも可能かもしれません。


データ分析にとって、ログ分析を参考にそれを取り入れることも有用ではないかという気がします。


しかし、特に売上に直結する業務などでは全てがシステム化されていないことが多く、ログを収集することでさえ一筋縄ではいかないことが多々あります。


顧客や案件等のリストをいまだにエクセルで属人的に管理しているところも多いでしょう。


昔からそうした領域で業務の標準化&システム化を進めるためのソリューションとして、マーケティングオートメーション(MA)やCRM、SCM、SFAなどの導入も進められていますが、合わせてそのログの収集・管理・活用も進めていきたいところです。


データアナリストとしても、ありもののデータしか分析しないのではなく、業務改善等の目的に即して、新たなデータ収集の必要性を提案するなど広い視野を持ちたいものです。

データアナリストの今後のキャリアを考えてみる(定期イベント)

最近、機械学習を簡単に実行できるソフトウェアはあちこちで見かけるようになりました。


AI人材やデータサイエンティスト育成サービスも流行しているので、機械学習の知識を持つ人も今後増えていくことでしょう。


BIツールも相変わらずの状況です。使われないレポートや類似レポートが乱立したり課題もありますが、データ活用の第一歩として導入企業は増え続けています。新しい製品を開発する新興企業も出てきています。


またマーケティングの領域では、マーケティングオートメーションのソフトウェアやCRMのソフトウェアもたくさん世に出ています。


デジタルトランスフォーメーションによって、業務がどんどんデジタルのツールに置き換わると、データの処理や業務上でのデータ活用に慣れる人も増えていくと思われます。


こうして様々な業務においてデータを活用するということはさらに広がっていくことでしょう。


ただ一方で、データ分析を自動的に行ってくれるツールはまだ世の中にありません。(私の知る限り)


データ加工や集計を手軽にできるツールや、機械学習で使用する用に簡単な前処理や変数生成をある程度自動的にしてくれるツールは見かけますが、KPI設計を自動的に行ってくれるツールや数字の因果関係を自動的に判別してくれるツールなどはまだ出てきていないかと思います。


IBMのワトソンなどは、今後それに近いツールになっていくかもしれませんが、まだまだ時間はかかりそうです。


こうした現状と今後の見通しの中で、現在データ分析を生業にしている人間は、どのようにキャリアを考えていけば良いのでしょうか。


ざっくり考えると、3つほど方向性がありそうです。


1つ目は、データ活用を推進するためのソフトウェアの開発。


ただ、現在すでにレッドオーシャンに近い状況になってきているので、よほど他にない利便性の高い機能を備えるか、既存の高シェアツールを買収して多くの既存ユーザを最初から囲い込んだ状況で始めるか、あるいはまだ手作業の業務領域(ブルーオーシャン)を見つけてそこで先行者となるか、なかなか厳しい戦略を実現しなければならなさそうです。


2つ目は、まだ自動化などが難しい人手による業務で専門性を発揮すること。


先に述べたように、KPI設計や数字の因果関係の判別などはまだ人が行う業務なのでそうした領域で実績と経験を積んで仕事にありつくことはまだ可能かもしれません。ただし、どんどん便利なツールが開発され、それほど高い知見や専門性がなくとも業務をこなせる人が増えてくれば、単価が下がったり仕事を確保するのが難しくなる可能性もあります。また逆にそうした領域をカバーするソフトウェアを自らがいち早く開発できれば、1つ目の方向に転換して成功できるかもしれません。


3つ目は、データ活用がシステム化していく中で、それらをさらに推進・補完する役割。


現在ではシステムの提案・導入・開発・運用・教育などの事業を行っているSIerやソフトウェアベンダー、コンサルティングファームなどがそうです。市場としては今後拡大の見込みなので、彼らが引き続き大口の顧客との関係を維持し高シェアのソフトウェアやツールを手掛けることができれば今後もある程度仕事は確保できることでしょう。


その中でも競争や各社独自の動きは出てくるでしょう。コンサルファームなどはデータ活用のための組織設計や業務プロセスの整備など体制面のサポートから入るなど提案やサービスの間口を広げていますし、SIerは人手を確保しないとビジネスが拡大できないため、昨今のエンジニア不足の背景も相まって、利幅がよくコストもあまりかからない1つ目のソフトウェアビジネスの方も併せて手掛けるという方向に目が向いてるところもあるようですね。


いつまでもデータ加工しかできないとか、機械学習モデリングしかできないなどと業務領域や学習領域を限定していると、そのうちコモディティ化が進めばツールや他の人に置き換えられる可能性が高くなります。


データ分析の実業務をこなしていれば、データ分析スキル以外にも様々なスキルが身に付きます。


担当する業界および業務知識に長けてくる、クライアントとの交渉や提案・ヒアリング等のコミュニケーションスキルが鍛えられる、プレゼン・報告書作成・会議のファシリテーション・プロジェクトマネジメントといったビジネススキルも身につくなどの副次的な効果も得られます。


データ分析スキルと別のスキルを掛け合わせてより希少な人材を目指すも良し、データ分析スキルを強みに他業務をキャリアの主軸に置くも良し、どうコモディティ化の流れに抗っていけるか、あるいはうまく波にのっていけるかを考えなくてはいけないのかもしれません。


特に2つ目においては、すでにジレンマを感じてきている人も増えているようです。私自身もそうです。まだ今のところは役に立てているのではないかと思っていますが、今後の見通しは不透明なので今のうちから何か考えておかねばと悩むことも少なくありません。


個人的には、いずれに方向に進むにせよ交渉や提案のスキルはなるべく経験を積んで磨いておくことは良いのではないかと思ってます。他で活かせる汎用性の高いスキルであるだけでなく、意味のあるデータ分析や、効果の見込めるデータ分析につなげられる確率も上がるからです。


とまあ、先週に引き続き同じようなテーマの記事になりましたが、今後も定期的にデータアナリストのキャリアについて少しずつ考えていきたいと思います。その時々の情勢などによって中身も変わっていくかもしれないですしね。

データアナリストの肩書きを外して仕事する

データ分析関連の仕事をしている人は、データアナリスト、データサイエンティスト、データ分析官など様々なジョブタイトルが名刺に入っていると思います。


おそらくその中に「データ」という単語が入っていないタイトルはほとんどないのではないでしょうか。


またそうした方々が所属する部署名やチーム名にも、「データ」という文字が入ってるところは多いかと思います。


社内外のクライアントがそうしたデータ○○の担当者に仕事を依頼するとき、アウトプットは「データ」で出てくると考えるであろうことは想像に難くありません。


これはつまりクライアントの課題解決の手段が暗黙のうちに限定されてしまっていることにもなりかねません。


あるいは課題解決というよりも、有用と思われる「データ」をいかにたくさん提供してもらうか、に目的がすり変わってしまうことすら起こりえます。


あまり例えはよくないかもしれませんが、株式投資をしていて保有銘柄が目標の株価に到達しても、もっと上がるかもと思って欲張ってしまう心理が働いてしまうようなものでしょうか。


クライアントと打ち合わせをしていると、途中でこんなデータを見たい、あんなデータを見たいという発言がよく出てきます。


どうも会議が進むと、目的が何だったのか、どんな課題を解決したかったのか、何を明らかにしたかったのかなどを忘れてしまいがちなようです。


いつのまにかデータマイニングをすることになって、その作業の洗い出しになってしまうこともよくあります。


もしそのように方向性がずれてきたら、こちらから逐一目的や課題を改めて再確認し、それに必要なデータはどういったものかを考えましょうという方向に軌道修正する必要が生じ、なかなか苦労します。


なんとか本当に必要なデータを理解してもらえたとしても、まだ安心はできません。


最後に「念のため」とか「一応」という枕詞をつけて、結局は最初に見たいと言っていたデータの提供も依頼されます。


本当に必要なデータはすでにクライアントの元にあったとか、あるいは諸条件により取得不可であったなど、我々が改めて作業する必要がないような場合であっても、我々に何かタスクをさせる=データを提供させることをしないと気が済まないのか、どうしても何らかのデータも出すことが落としどころになってしまうこともあります。


なお、結果的に彼らの目的に照らして意味のないデータを提供するという余計な仕事をしてしまっても、それでクライアントが満足するのであれば無駄な仕事ではなかったということで良しとする考え方もありです。


ただこういう仕事が増えてくると、モチベーションに影響してくる担当者も少なくありません。


クライアントのデータリテラシーの問題なのか、データ○○担当に対する先入観のせいなのか、あるいはデータ○○担当がうまく彼らを納得させられていないためなのか、原因は色々考えられます。


データ○○担当としては、そうした原因をそれぞれ解決していくために、クライアント向けにデータ分析の仕事をより理解してもらうトレーニングや啓蒙活動を行うとか、自身のデータ分析スキルや交渉・ファシリテーション等のスキルを磨くなどの取り組みも考えられます。



前置きが長くなりましたが、一方でデータ○○担当としてはクライアントの課題解決に向けてはデータ分析という手段をとることが前提ですが、逆に自らが考え方をそう縛られてしまっていないかということも最近ふと考えます。


データ○○担当はデータ分析で課題を解決できるように、クライアントに目的をきちんと定めてほしいとか、エンジニアや会社にデータおよび分析環境を整えてほしいといったことをよく言います。


しかし、それは必ずしも別の誰かにまかせるべきタスクかというと、そうでもないのかもしれません。


対クライアントでは、データ○○担当も事業目的の理解や仮説出しにより関わろうとしてドメイン知識の習得に力を入れる人もいます。対会社では、データの利用者側としてフィードバックを行うなどエンジニアとともにデータ整備に取り組む担当者もいます。


データ分析周辺の業務に関わることで、よりそちらに主軸を置く判断をした人たちは、データ○○担当からプロダクトマネージャやマーケター、AIエンジニアあるいは専門コンサルタントなどにキャリアチェンジすることもあります。


例えばプロダクトの責任者になった人は、仕事領域は幅広くなり、分析以外のタスクも数多く抱えることになりますが、プロダクトに関して一番の裁量と権限を持つことができます。


また自ら効果的なデータ分析や活用を考えたり実践したりもできるので、分析スキルや経験のないプロダクトマネージャよりも強みを持っています。そのスキルや権限を活用し、プロダクトをより良いものにしていくことに注力できることにやりがいを感じるのも理解できます。


以前データサイエンティストとデータアナリストの違いとして、前者は専門性を高めることを重視し、後者はビジネスへの貢献を重視する傾向にあると考察したことがありましたが、特に後者のタイプの人は必ずしもデータ○○といった肩書に縛られなくても良いのかもしれません。


特にデータ分析スキルは様々な業務において役立つ汎用性の高いスキルだと思われますので、それを活かして次のキャリアをどう選ぶかは広い視点で考えたいところです。

顧客分析をやる前に必要なこと

顧客分析とは、基本的には以前の記事で紹介した通り、顧客をセグメントに分け、そのセグメント間の違いをデータで明らかにすることです。


custle.hatenablog.com


顧客分析を行うケースとは


では顧客分析を行う場面はどのようなときなのか?


例えば見込み客を初回購入客にしたい場合、見込み客から初回購入に至った顧客と、見込み客のままの顧客の違いを分析します。


もし前者の顧客に特徴的な行動などが見られた場合、それを後者の顧客にも促進させることで初回購入につながる可能性が上がる場合があります。


あるいは逆に初回購入につながりそうもない見込み客を見極めることで、不要な販促コストを削減するといったことも可能でしょう。


このように顧客との関係性を改善したい場合、既存顧客のデータから改善の前後のセグメントを分析してその違いを明らかにすることで、改善のためのヒントを見つけるのが顧客分析の一般的なやり方となります。


闇雲に顧客のデータを見て何か探そうとするのは非効率なのは言うまでもありませんが、もしそうした作業に陥ってしまいがちな場合は、その要因として顧客との関係性をきちんと整理できていないというのがよくある話です。


顧客との関係性の定義


顧客との関係性は、一般的には「潜在顧客」⇒「見込み客」⇒「新規客」といったように顧客化するまでの段階であったり、「一見客」⇒「リピート客」⇒「ロイヤル客」のように顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を最大化させるための顧客の成長段階で区分されることがよくあります。


CRMに注力している企業などではこうした段階で顧客を区分けして管理されているところも多いでしょう。


こうした区分を設定するのは、顧客区分ごとにニーズやペルソナイメージなどが異なっていたりするためです。


例えば顧客数を増やすための施策を行う際などに、顧客全体に一律の条件や特典で実施するよりも、こうした区分を使って対象ごとに適切な設定を行ったほうが、さらに高い効果を出すことも可能になったりします。


唐突ですが、ソーシャルゲームなどでは新しいボスキャラを1種類しか出さないとすると、それが強いボスならばヘビーユーザは満足できるかもしれませんが、ライトユーザは全く歯が立たずに楽しめません。弱いボスならばライトユーザは楽しめるかもしれませんが、ヘビーユーザは物足りないでしょう。弱いボスから強いボスまで様々なランクのユーザが楽しめるように設定されるのが通常です。


この区分は非常に大事です。


もしマス向け(顧客全体)の施策1種類しか実施しないのであれば、顧客のセグメント間の違いを明らかにする顧客分析は不要といってもいいのかもしれませんが、そうでないのであればこうした区分を設定しないまま顧客分析に取り組んでもあまり成果は得られません。


ダメな例としてよくあるのは、顧客のニーズ等の違いがあることを認識しないままマス向け施策を実施したにも関わらず、結果を分析するときになってなぜか顧客を詳細に区分してデータを見ようとするなど、ちぐはぐなことをやってしまうケースです。


こうしたケースにおける顧客の区分も、かなり適当に行われることが多いです。


先ほど紹介した「顧客化するまでの段階」や「顧客の成長段階」といった区分ではなく、単なる性年代別とか、新規客と既存客に分けるだけとか(既存客も詳細に設定したがる人が多いですね、準既存とか復活とか)、ありもののデータを使った区分がよく使われるようです。


ちなみにこうした適当な区分でデータを見て、もし仮に新規客がたくさん獲得できたということが発見できたとしても、なぜ新規客に響いたのか理由が特定できないので、基本的に再現性もなく次の施策にも活かせないということで特に意味のない発見だったというのもよく聞く話です。


目的が顧客との関係性の改善であるならば、顧客との関係性が現状どうなっていて、それがどのようになれば良いのかということを具体的に定義しなければなりません。それをデータで定量的に示すのが顧客分析の使い方となります。


そのために、当たり前ですが、分析官自身も自社の商品・サービスについてきちんと理解する必要があります。


顧客のどのような課題を解決するものなのか、それはいつどのように利用すれば効果が出るのか、それをどのような顧客にどのように伝えれば響くのか、また顧客はどのように認知するのか、競合との違いなどなど。


とりあえずデータを見てみようではなく、まずはいち顧客として商品・サービスを試して顧客を知る、そして多様な顧客の視点を学び、顧客との関係性を具体的に整理することから始めてみるのも良いかと思います。