社員が辞めない会社は良い会社なのか

データ分析をしていると、ある数字を上げたいとか、逆に下げたいという要望をよく聞きます。


その数字は本当に上げるのが良いのか、あるいは下げるのが良いのか、少し気にしてみるのもおすすめです。


というのも基本的には上げる(下げる)ほうが良いのだけれど、上げすぎる(下げすぎる)と逆効果になるものもあるからです。


例えば、広告を打つ回数


広告を増やすとそれだけ多くの顧客を獲得できる可能性は上がりますが、同じ顧客に複数の同内容の広告が届いたり、短期間に何度も広告が届けられたりしてしまうと、顧客側がうっとうしいと思って逆効果になる場合もあります。メールマガジンなどであれば解約されてしまうかもしれません。SNS系のチャネルであれば低評価にされてしまうかもしれません。スマホアプリであればアンインストールされてしまうかもしれません。


顧客の離脱を招いてしまうような販促施策は、穴の開いたバケツに水を貯めようとする行為に近くなるので、やりすぎないように(バケツに穴が開かないように)ある程度の制約が必要になってきます。


例えば、離職率


離職率は低いほど良いことのように思えますが、あまり低すぎると社員が全然辞めないということなので、逆に辞めてほしい社員も留まっているということになります。社員が長く会社に在籍できるような環境や制度を整えることは、社員にとって安心して働けるとか会社へのロイヤリティが高まるといった良い面もありますが、一方であまり仕事をしなくてもそれなりの給料が安定してもらえると考えてしまう生産性の低い社員も増えるという負の面もあることでしょう。


昨今では終身雇用を維持するのが厳しい情勢となりましたので、業績が悪くなると急にリストラを実施して離職率を上げる企業も多々あり、離職率を低い水準で維持し続けることが果たして良いことなのかは押して知るべしですね。とはいえ、突然のリストラは社員にとって大きな混乱を招くので、あまり良策ではないのかもしれません。ある企業では人材の流動性が上がるように全ての社員に特定のタイミングで退職すれば退職金を上積みするなどのメリットを用意して、離職率を一定水準にキープするためのマネジメントを行っているそうです。普段からそうした方針を明確に示されているほうが、突然リストラ発表されるよりは安心でしょうし、前向きなキャリアプランも立てやすいのではないかと個人的には感じます。


例えば、企画のヒット率


ネットフリックスの創業者はインタビューの中で、「(Netflixオリジナル作品の)ヒット率は高すぎる」と話していたそうです。より積極的にリスクを冒すことで、失敗作を出しながらもより大きなヒットを狙うべきだとの考えをお持ちのようです。確かにヒット率が最重視とされてしまうと、前例のない大胆な企画よりも前例ある無難な企画などにまとまりがちな気がします。しかし、そうした企画では小さなヒットは狙えても大ヒットの期待は非常に低いのかもしれません。


施策や企画の成功率が高ければ高いほど良い、あるいはミスや失敗の割合が低ければ低いほど良いというものではない場合もあるということは重要ですね。



ちなみに分析やってる人は似たケースとして最適化問題に対応したことがあることと思います。ただ通常は与えられた問題のように制約条件が明示されているとは限らないので、自分で制約条件を見出せないと誤った目標を立ててしまったりするかもしれません。指標や数値を上げすぎる(下げすぎる)と何か問題はないか常に意識してみると、良い示唆や分析につながるかもしれませんね。