データアナリストの役割と期待されていること1

データアナリストの役割


データアナリストの仕事は多岐にわたりますが、何を期待されているかで考えると大きく2つに分かれるかと思います。


1.データを提供する

2.データ処理を自動化する


今回は上記1のデータを提供するという役割について論じてみたいと思います。


データの提供


クライアントは、ちょっと見てみたい数値から意思決定材料になるものまで色々なデータを分析者に求めてきます。特に最近はデータ活用やデータドリブンマーケティングなどの気運が高まってきていることもあり、ニーズはどんどん増えているのではないでしょうか。


分析者側としては、提供するデータはビジネス目的のためにきちんと活用してもらいたい、あるいは折角提供したデータを無駄にしたくないという思いがあるので、ただデータを提供するだけではなくそのデータを元に示唆や提言まで行うこともあります。


しかし、提供されたデータを元に次にどのようなアクションをとるか考えるのはクライアント側の仕事なので、クライアントにとっても分析者からの示唆や提言があっても参考程度に受け止めておくくらいの扱いで終わることが多いようです。


つまり、全ての依頼で示唆や提言といったことまで求められているわけではないため、やはりデータアナリストに本来期待される役割としてはデータ提供までということに帰着するのではないかと思います。


ただ、「データ提供」というと、現場を知らない上長や経営サイドなどからすると「単なる作業」と見なされてしまうケースはよくあります。もちろん、誰にでも簡単にできる程度の作業とまでは思われていないでしょうが、データの提供は単にモノ(データ)を右から左に流すだけで、それ自体では価値を生まないものと考えているような節は彼らと会話しているとところどころで感じます。そのため、当たり前の結果や予想通りのデータが出てきてもそれらにはあまり興味を示さず、むしろ何らかの付加価値を生むようなインパクトのある発見を分析者に期待するというのは昔からよく聞く話です。


データ提供はもちろん誰がやっても同じただの作業という位置づけのものではなく、それ自体で付加価値を生む仕事です。


ただし、提供されたデータを活用してどのような効果が生じたかによって、データそのもの、引いてはデータを提供する仕事の価値も決まってきます。


データの価値


クライアントが分析者に求めるデータの一例を紹介します。


・使うかどうか不明だが念のため手元に置いておきたいデータ
・誰も興味ないが報告書を埋めるため必要なデータ
・気になるからちょっと見てみたいデータ
・KPIの進捗を確認するためのデータ
Webサービスの改善点を調べるための利用状況のデータ


これらのデータは活用目的がそれぞれ異なりますが、いずれも何らかの必要性があってクライアントから求められるデータです。ただしデータの価値はバラバラです。


一つ目は、もし実際に使用されることなく終わってしまったならば、価値なきデータであったということになります。


二つ目は、そのデータが記載された報告書が完成できたという効果は生まれますが、そのデータの記載の有無によって報告書自体の価値が変わらないのであれば、やはりそのデータの価値はほぼないものと言えるでしょう。ただ、その報告書を作成するミッションを持つ人がクライアントであった場合、報告書の中身よりも報告書を完成させること自体が目的なので、彼にとってのみ価値あるデータであったと言えるのかもしれません。


三つ目は、二つ目と同じく依頼者にとってのみの限定された範囲における価値でしかない可能性が高いですが、その後の活用の仕方によっては大きな効果につながる可能性も否定できません。データの価値についてはこの時点では未知数です。


四つ目は、KPIの進捗が順調であればKPIを把握することができたというだけの効果となりますが、途中でKPIが落ち込みを見せた場合にいち早く状況を把握することで改善策をとることができた、などデータの状況次第でその後の評価(価値)も変わる可能性があります。


五つ目は、どういったデータをどこまで確認するかによって改善点が見つかるかどうかが左右されます。それによってその後のWebサービスの売上にも影響することが予想されるので、提供するデータによって価値は大きく変わります。


以上まとめると、目的によってデータの価値も変わるということ。目的や必要性があってもクライアント個人の主観的な範囲の価値でしかない可能性があること、データの価値が未知数のまま依頼される場合があること、実際のデータが出てきてから価値が決まる場合があること、どのようなデータを出すかによって価値が大きく変わることなどが言えると思います。


データの価値を見極めてそれを高めるには


我々が提供したデータをクライアントが適切に活用することによって大きな効果が生まれれば、そのデータの価値も同様に評価されるでしょう。


しかし、そもそも求められるデータが大した効果も生まないものであったり、大きな効果を期待して依頼されたデータが適切なものでなかったりすると、せっかく提供したデータも結局は価値なきものとして扱われてしまってもおかしくありません。それは悔しいですよね。


特に求められるデータと本来必要なデータにギャップがあることはよくあります。比較対象(コントロール設定)が間違っているため仮説検証になっていないデータや、目的を見失って探索型になってしまった多数の切り口のデータ、目的に適うかどうかという点で論理的におかしいデータ、etc...


よってデータアナリストとしてはただ求められたデータを提供するだけではなく、価値あるデータを提供することを念頭に置いておきたいところです。


そのためには、求められるデータの価値をきちんと見極めることができる必要があります。クライアントがなぜそのデータが必要なのか、そのデータをどのように活用しようとしているのか、それによってどのような効果・価値が生まれるのか、目的・効果に対して求められているデータが適切なのかどうか、他により適切なデータはないかといったことをクライアントにあらかじめ確認・相談できると良いのではないでしょうか。


またクライアント側でも目的や価値を生む活用方法を考えていても、実際にそのために必要なデータが具体的にどのようなものかまで落とし込むことが難しい場合も多いので、分析側でデータの具体的な定義やアウトプットイメージまで含めて設計するのもありだと思います。実際に私自身こうした設計はよくやります。


ただし、一方で実際のデータが出てきてからでないと価値が評価できない、価値が未知数といったものもあるので、価値のあるデータでないと提供しないというわけにもいかないでしょう。またデータを求められること自体今後もどんどん増えてくると思われるので、依頼される案件のデータ全てについて価値を精査・議論することがどこまでできるかも課題です。データ提供と併せて、データを提供する業務の効率化にも取り組む必要は出てくるでしょう。(BIツール等によるデータ自動提供や、優先度調整、簡易なデータ取得手段の提供、データ設計の標準化など)



長くなったので、2つめの「データ処理を自動化する」役割についてはまた後日(↓)。


custle.hatenablog.com