依頼者たちの悩み
データ活用が様々な業界・業務で進んでいることから、データアナリストが一緒に仕事をするパートナーも今や多様な業種の方々に拡大傾向にあります。
私の場合はマーケターやプランナー等とよく一緒に仕事をしています。
基本的にはそのようなパートナーとなるビジネスサイドの人間から依頼を受けて、データアナリストがデータ分析を行うという流れが一般的かと思います。
データ活用が進んでいて事例もたくさんある企業であれば、彼らはデータアナリストに何を依頼すれば良いのか理解しているのであまり問題はないかもしれません。
しかし、まだそうした文化が浸透していない企業では、そもそも依頼者たちはデータアナリストに何をどのように依頼すれば良いのかわからないと依頼の方法について困っている状況がよく見られます。
データアナリストはデータ分析?とやらをやってくれるらしいけれど、そこで何をどう依頼すれば具体的に何が出てくるのかイメージを持ちにくいようです。
そのため、結果としてデータ分析ではなくこれこれこのようなデータが見たいというデータ取得の依頼になってしまいがちです。
とはいえ、彼らが自らの課題解決や意思決定の判断材料としてどのようなデータが必要なのかをきちんと理解していて依頼しているのであれば特に問題ありませんが、そもそもそれが事前にわかっていないままとりあえず思い付きでこんなデータを見てみたいというだけで依頼しているものならば、そうしたデータを取得してもほとんど無駄に終わってしまうことでしょう。
なぜ依頼したデータを見ても意思決定につながらないのか?
通常彼らはデータを使った課題解決のプロフェッショナルではないので、課題解決や意思決定にどのようなデータが必要なのかをきちんと理解できている人は多くありません。
例えば、顧客数や売上を伸ばすミッションを持ったマーケターを元に考えてみましょう。
彼らは基本的に何らかの販促施策を企画・実行するのが主な仕事です。彼らの悩みや課題として代表的なものは、「どのような施策を企画すれば、顧客数が増やせるか」と「実際に実施した施策によって、どれくらい顧客が増やせたか」です。
これらの悩みを解決するためには、どのようなデータがあれば良いのでしょうか?
データとは単なる客観的な事実(ファクト)であって、悩みを解決するにはどのようなファクトがわかれば良いのかを考える「設計」が必要です。
後者の「実際に実施した施策によって、どれくらい顧客が増やせたか?」は、なんとなく施策後の顧客数から施策前の顧客数を引けば求められると考えてしまうかもしれませんが、本当にその設計で問いの答えが求められるでしょうか?
施策によって増えた顧客数を求めるには、施策後の顧客数から「施策を実施しなかったときの顧客数」を引かないと求められませんが、施策を実施しなかったときの顧客数は施策前の顧客数と考えてよいのでしょうか?
施策前と施策中は顧客数に影響する時期的な違いはないでしょうか?(天候やシーズンなど)
施策以外の影響はないでしょうか?(競合や市場の動きなど)
その影響はどちらの期間にも平等にもたらされているでしょうか?
施策を実施しなかったときの顧客数をどのように求めるべきかは、一般的には因果推論を元にした設計を行うなど統計的な知識が必要とされます。
データアナリストへの依頼の仕方
基本的には「何を見たいかではなく、何を知りたいか」を依頼するのが良いかと思います。
知りたいものを知るためにどのようなデータを見れば良いかの設計もデータアナリストに任せてしまいましょう。
その際、齟齬や誤解を防ぐために、なぜそれを知りたいのか背景や目的もきちんと伝えてあげてください。
目的があるわけではないがなんとなくこのデータを見てみたいとか、こんなデータがあったら良いかもという依頼は、データアナリストは非常に嫌がります。
彼らは論理的かつ合理的な人種が多いので、意味のない作業や無駄な作業をやらされるとモチベーションが大きく下がります。
もし課題解決や意思決定に必要なデータがあらかじめ明確である場合は、そのデータがどういったものか具体的にデータアナリストに伝えれば良いでしょう。
ただし、あいまいな伝え方をするとデータの定義に齟齬が起こる可能性があるので、データの定義や仕様についてデータアナリストとしっかり詰める必要があります。
なお、その際データ取得のプログラムを一から開発する必要があるかもしれないので、作業工数も相談してもらうと良いと思います。
どうしても今日中に必要なんだ!とか午後のミーティングに使うので午前中にデータを出してほしいと言われると、データアナリストもなんとか間に合わせようと頑張るとは思いますが、急がせるとミスが起こりやすくなるので、なるべく余裕をもって依頼することもおすすめです。
なんだか後半はデータアナリストのトリセツ(取扱説明書)みたいになってしまいましたが、今回は依頼者側に向けて書いた記事なので良しとしておきましょう。
ただ、データアナリストにとっても依頼者とのコミュニケーションは重要です。一方的に改善を要求するだけでなく、時には自ら依頼者の役に立つような分析を提案することがあっても良いと思います。相互理解が進むのが一番ですね。