有用なデータ分析をするには

データ分析で効果を出すには、「見るべきデータを見る」ということに尽きると思います。


そうでないデータばかりに目が向いてしまっていると、あまり役に立たないアウトプットしか出せません。


例えばあるサービスの売上が減少した原因を明らかにしたい場合に、全社員の入社時期や性年代といったデータをいくら調べたところで売上減少の原因はわからないでしょう。


また販促施策AとBのどちらを実施すれば良いか検討しているときに、担当者の体重や体脂肪率の推移を分析しても、施策の決断には影響がないでしょう。(担当者のダイエット効果はわかるかもしれませんがw)


流石にこれらの例ほど意味のないデータを分析したりはしてないよ!と思われるかもしれませんが、もし結果的に分析の効果が何も出せなかったならば、見るべきデータではなかったという点で上記の例とさほど差がないのかもしれませんよ。


また別の例を考えてみたいと思います。


顧客数前年比120%を目標に掲げている企業で、ある月の顧客数が増えるどころか昨年同月比で減少していたとします。その原因を探るために皆さんならどのようなデータ分析をしますか?


特に仮説も立てずにいきなり顧客データの深掘りをしてしまっていないでしょうか。

・男性客はそれほど減少していないが、女性客特に40代以降が大きく減少していた。


・既存顧客は変化なしだったが、新規顧客が昨年より全然獲得できていない。


・どのサービスの顧客も全体的に減少傾向が続いている


基本的に分析レポートにて何かのデータを示す際には、なぜそのデータを提示するのか、最初に背景なり理由をきちんと説明しないとなかなか理解してもらえないでしょう。


そうした説明もなく唐突に「こういうデータ分析結果が得られました。ここからこういうことが言えます」とだけ言われても、なかなか話が次に発展するかというと厳しい場合が多いのではないでしょうか。


そういう意味でも、最初に何らかの仮説を立てて、それを検証するためにこういうデータを分析してみたという流れの方が良さげです。


そしてその仮説を検証することに、クライアントが必要性や納得感を感じてもらえたら、分析結果は意味のあるものになると思います。



またあるいは論理の飛躍したストーリーや示唆出しを行っていないでしょうか。

・女性客が減少しているので、女性向けの施策を強化すべき。


女性客が減少していたとしても、それはただの相関でしかないのかもしれません。なのに女性向け施策を強化するのは本当に正しいのでしょうか?


また女性向け施策を強化するとは具体的にどのような対策をとれば良いのかも不明です。女性向けならどのような対策でも効果が上がるのでしょうか?


このように、分析による考察や示唆出しをする際にデータの裏付けや調査が十分でないことはないでしょうか。

・新規顧客の獲得が少ないので、広告宣伝をもっと増やすべき。


広告宣伝を今以上に増やせば新規顧客はたくさん獲得できるのでしょうか?


一般的には正しい示唆かと思いますが、当ケースでも本当にそれが当てはまるかはわかりません。


もし広告の獲得効率が悪化しているのであれば、広告を増やしてもあまり効果が出ないかもしれません。


その場合は別の対策が必要になってくるので、安易に広告を増やす提案をするのはちょっと乱暴な示唆に思えます。


当たり前の示唆を行うこと自体は問題ありませんが、その論拠が十分に示されていないままだと、そんなこと分析しなくてもわかってるよ!と分析の価値も低く見られてしまいます。

・全体的に顧客が減少傾向にあるので、新たなサービスの開発などが必要。


新たなサービスの開発を提案するといったものも同様です。


やはりそうした案自体は一般的には間違ってはいないのかもしれませんが、それは本当にデータ分析から導き出された示唆なのでしょうか?


顧客が全体的に減少傾向にあったとして、取るべき手段は競合対策ではなく、既存サービスの強化でもなく、なぜ新規サービス開発なのか?


少なくとも他の対応はあまり効果がないとか、新規サービス開発の効果が他よりも高いなどといった理由も併せて示さないと、論理が飛躍していて納得し難い/受け入れ難いと言われても仕方がない気がします。



以上、いくつかの例を挙げながら有用なデータ分析をするにはどうすれば良いかを考えてみました。


やはり一言でいえば、冒頭で述べた「見るべきデータを見る」なのですが、その見るべきデータとは何かを都度きちんと把握するのは簡単ではありません。


そもそも何を明らかにしたいのか、それを明らかにすることに意味はあるのか、このデータで明らかになるといえるか、データや調査に過不足はないか、など適宜意識しなければ、見るべきデータが足りない・間違っているということになりかねません。


この辺りの訓練になるような問題や研修などもそのうち作ってみたいなと思っていますが、データ分析の仕事に限らず日々の業務の中でも何らかの仮説や知りたいことなどを逐一データで確認する・簡単にまとめてみるということを繰り返しているだけでも、自然と有用な分析のやり方が備わってくるような気がしています。


新しい分析手法や学術的な統計理論の学習なども良いですが、こうしたことに取り組んでみるのも基礎体力の向上におすすめです。