データアナリストが転職する理由

データ分析人材の不足が叫ばれる昨今、多くの企業では採用や育成で苦労されています。


そんな中、せっかく採用できた人材、あるいは育成してきた人材が転職などで退職してしまうと非常に痛手を感じることでしょう。


私自身かれこれ10年ほどデータ分析のお仕事をしており、これまで転職していく同僚たちを多少なりとも見てきました。


まあ自分も転職経験はあるので、自分自身の場合も一応ふまえてですが、なぜデータ分析人材が転職してしまうのかということについて考えてみました。


キャリアアップできない


一番多い理由がこれでしょう。


若い人であればスキルアップできる機会や仕事があまりない、ある程度スキルや経験のある人であればさらに実績を重ねたいのにスキルを活かして活躍できそうな機会や仕事が少ない、といったことで転職を考える人も多いようです。


これは一番解消しづらい問題ではないかと思います。


というのも彼ら・彼女らの充足を満たそうとするには、いわゆるヒト・モノ・カネといった環境(※)をしっかり揃えなければなりませんし、仕事面では単に儲かる仕事というだけではなく、データや分析技術が活かせる仕事、難解でチャレンジングな仕事、新規性や先進性のある仕事など、彼ら・彼女らがやりがいを感じる仕事を継続的に与えつづけることができないとなりません。

※ヒト・モノ・カネの例
優秀なリーダーやマネージャー、同僚、クレンジングされた多種多量のデータ、分析システム、待遇、納得のいく評価制度、研修・研究費など


自社以外にこれらの点で優良に見える企業があれば、そちらに移りたいと考えてしまうことは仕方ないことでしょう。


働きやすい環境ではない


エンジニアの求人などではよくありますが、PCや椅子を選べる、外部の有償セミナーを受講できる、書籍の購入ができる、もしくはそれらの補助が出るなどをアピールしている企業があります。あと、飲み物やスナックなどの軽食がタダとかもありますね。昔はおやつにバナナが出るなんてところもありました。。。


もちろんこうした環境に魅力を感じる人も多いと思いますし、迷っている人ならば後押しになるかもしれませんが、こうした点は転職の本質的な理由にはならないのではないかと思います。


なぜなら大体は自費でも実現できることだからです。無償ならそれにこしたことはありませんが、十分な条件にはならないと思われます。


ただし、古い社内システムや過剰なセキュリティ制約などのために情報共有・ドキュメント探索・業務手続きなどが著しく非効率であると、転職を考えてしまうきっかけとなるのは十分あり得ます。


そうした環境を変えたいと思っても、影響範囲も広く相当な費用もかかるのでどうにもならない可能性が高い、ならば転職したほうが早いし、それによって仕事の効率も上がれば活躍しやすくなるなど考える人がいても不思議ではありません。


人間関係でストレスがたまる


私は幸いにもこれまで人間関係を理由に転職を考えるほど厳しい環境には置かれてこなかったのですが、多くの関わってきたひとたちの中には、大人としておかしい言動・行動をとる人や生理的に合わない人たち、理不尽な指示を出してくる上長などもそれなりにはいました。


しかし、自分自身少々我が強い性格なせいか、言うべきことは言う、断るべきことは断るなど自分の意に沿わないことはなるべく避けることを意思表示してきたので、その時その時で衝突等によるストレスを感じることはあっても決してため込んでいくことはなかったので、そうした人たちともなんとか仕事上だけの関係と割り切って付き合ってこれたのかもしれません。(もっとも、後々それで低い評価をされるとか意趣返しや割を食うことなどは度々ありましたが)


ただ、ストレスをため込んでしまいやすい人であれば、いずれ限界を感じて転職等の選択を選んでしまうこともありえるでしょう。


最近、心理的安全性」という言葉が流行りだしているのもそうしたひとたちの転職を防ぐひとつの解なのかもしれません。


自分の所属する企業あるいは事業部の先行きが不安


ベンチャーなら経営陣の判断ひとつで会社の行く末が大きく左右されます。特に会社立ち上げの初期と比べて、経営方針や経営陣の発言・行動、新たに入社してくる幹部の人選などに大きな変化が表れてくると、違和感を感じるようになる人も増えてきて危険信号です。


大企業においても通常は他に様々なコア事業があるので、データ分析系の事業としての見通しや貢献度次第では撤退・解散・売却等の可能性は十分考えられます。データ分析関連の業界の市況が良くとも、自社でうまくデータ活用が進んでいないとか競合のサービスになかなか勝てないとならば、不安になって脱出を考える人が出てもおかしくありません。


データ分析人材が転職しないようにするには


これまでに挙げた要因など、彼らが転職しようと思う理由を少しずつでも解消していくのが基本と思われます。


しかし、なかなか一挙手一投足でできることばかりでもないので、ある程度転職者が出ても仕方がないと度割り切ることも必要なのではないかと思います。


またもし彼ら・彼女らが転職等によって会社を去っても残った人材で業務がきちんと回るように、業務の標準化や仕組化を進めることも対策になり得るでしょう。


あとひょっとすると今後データ分析人材に限らず何らかのスペシャリストは一般企業に所属せずに個人事業主やエージェント会社に所属という形で、得意とする仕事やプロジェクトごとに業務委託契約を結んで渡り歩いていくという働き方が多数派になっていくかもしれません。


これまではそうしたフリーランス的な働き方は、継続的に仕事を得られないかもしれないとか、一度選択すると再び正社員として働くのは難しくなるのではないかなどのリスクを避ける考えで選択肢から外している人も多かったと思いますが、副業の広がりなどによってそうした働き方にもトライできる機会が得やすくなったり、案件量やマッチングサービス等が増えて仕事の獲得がしやすくなってくると、時勢が変わってくる可能性もあるでしょう。


そうなると、データ分析人材を如何に採用・育成・定着させられるかといった考え方から、いかに彼ら・彼女らを活用して最大限の成果を上げられるかを考えなければならなくなるのではないでしょうか。それはある意味より本質的な方向性なのかもしれません。