データアナリスト向けドメイン知識習得方法を考えてみる

ドメイン知識とは


データ分析に携わる方であれば、ドメイン知識の重要性はあちこちで語られるのを聞いたこともあるでしょう。

ドメイン知識とはある専門分野に特化した知識であり、一般的な知識と対比されるもの、とのことです。(wikipediaより)


担当する業界、業種のビジネス知識がないと、ピントのずれた仮説立案/分析結果の解釈/報告や提言をしてしまう恐れが出てきます。

そのためデータ分析職にはデータ分析のスキルだけでなく、ドメイン知識も身に着けるべきとしてあちこちで推奨されています。


では、そうしたドメイン知識はどのようにして身に着ければ良いのでしょうか。


業務経験を通じて身に着ける


どのような職業でもそうであるように、最も一般的な方法は業務経験を通じて身に着けるということでしょう。(いわゆるOJT


関連書籍を読むなど基本的な知識を学ぶことも必要ですが、おそらくそれだけでは十分ではありません。


同時になるべく業務担当者と近いところでデータアナリストとして仕事を行い、書籍では得られない実務の詳細や現場感などに触れる機会を多く持って学ぶこともたくさんあるでしょう。


まずは現場担当として配属


中途ならあまりないと思われますが、新卒ではまず最初に現場経験を積ませるために、研修後に半年~1年ないしは2年ほどは全員工場配属や営業配属とする企業をときどき見かけます。


データアナリストのように専門職扱いであっても例外はなく全員です。


特に現場からの叩き上げや過去に同様の現場配属を経験したことのある人が偉い立場にいると、なおさらそうした新人教育を課そうとする傾向にあるのではないかと思います。


しかし、これは当の新卒の方たちからすると大変不評です。


早く一人前になりたいのに、希望と異なる仕事をしろと言われるのは納得がいかないと思うのも無理がありません。


特にアナリスト志望だと、営業や支店配属などは自分には向いていないとして嫌がる人はたくさんいますが、最初にそうした仕事をしばらくやれと言われたらかなりショックでしょう。


私が所属していた企業でも同様のことがあり、中には事業部長に転属させて欲しいと直談判しに行った新人までいました。


おそらく上層部からも、現場経験を積むことが将来役に立つとか、これも研修の一環であるとか何らかの説明はあると思いますが、おそらく皆が納得できるとも限らないものなのでしょう。


せめて入社前からそのような配属情報やキャリアプランなどを明らかにしていたならば、それに納得した人だけが入社してくるでしょうが、もし後出しで伝えているならひどいですね。


ドメイン知識を習得するのに一定期間の現場配属はひとつの手段ではあります。


しかし、なぜ現場配属を行うのか、その目的を明確にすればほかのやり方も選択肢として考えられるのではないか?という気もします。


・どんな経験を積み、どのようなスキルを身につけさせたいのか

・期間が半年や1年というのはなぜなのか?
(頑張って早く結果を出せば短縮可能なのか?)

・受け入れ側の負担は問題ないのか?
(短期間でいなくなる新人に手間をかけて育成させる意味はあるのか?)


・とりあえず現場に放り込んでおけば勝手に育つだろうと思考停止していないか?

・ジェネラリストや幹部候補の育成のやり方と勘違いしていないか?


どのようなドメイン知識を身に着ければ良いのか


そもそもドメイン知識と言っても多種多様でそれだけでも膨大なものですが、それを全て身につけなければならないのならば半年や1年程度の現場経験だけでは無理でしょう。


長年その業務に従事している方々でさえ、常に学び続けておられると思います。


最低限必要な用語や業務フローなどは整理してドキュメントから学べるようにし、実際に業務上体験しないと学べないようなことはOJTで行うなど切り分けた方がよいのではと思います。


前者について、現場は人手不足で業務に必要な情報やマニュアルがまとめられていなかったり、情報があっても古いままであったり、最新版がどこにあるかわからないなど整備されていないことはよくあります。


通常は人の出入りが激しいなどの事情がなければそうした情報は工数をかけてまとめられておらず、現担当者から新担当者へ引き継ぎ時に口頭や簡単なメモ等で伝承されていくくらいかもしれません。


現場に新人を配属するならば、そのような知見の整理と共有を担ってもらうなどもありだと思います。


以前新人にOJTをやってもらう中で、業務で扱う用語集の作成、業界状況、TIPSや注意点をレビューの上Wikiにまとめることも担当業務としてやってもらったことがあります。(基本的な業務マニュアル等はあらかじめ私のほうで整備済)


それらのコンテンツは新たな新人が配属されたときや中途入社の方の早期キャッチアップに役立っています。


さらに他のチームメンバーからのナレッジや実プロジェクトのアウトプットなどもそこに加えるなどして日々充実を図っています。


また机上だけで学ぶのが厳しい業務については、いくつかのテーマごとに業務を一通り回すことを経験してもらうために、疑似プロジェクトを複数回実施し、報告・レビューを経て一定の基準をクリアすれば次からは実担当としてアサインするということも行っていました。


なお、疑似プロジェクトは営業等の担当としてではなくデータアナリストとして参画してもらったので、現場配属はせずに実施しています(個人的には現場配属しなくても現場の方と一緒に仕事できる環境があればドメイン知識は身に着けられると思ってます)


疑似プロジェクトを通じて、報連相ヒアリング、プレゼン、ドキュメンテーション、スケジューリング等一通りの業務を回すために必要な基礎スキルを磨き、かつ現場の方々との関係性構築やフィードバックを通じて彼らの考え方や現場の背景や事情なども学んでもらえたと思っています。今後また彼らと一緒に仕事をする上では必要な準備となったのではないでしょうか。また報告の場ではアナリストの先輩たちからもフィードバックしてもらっていたので、分析面での甘さや不十分さなども指摘され学べるものがあったと思います。


現場配属を行い一定期間現場担当者について回ってもらうというだけでは、現場担当者によって学べる内容も統一されませんし、その期間に発生する仕事内容も各新人で異なってくる可能性もあります。そもそもそこで何が学べるのかも実際に担当者がついてみないとわからないというのでは新人も先行きが見えずに不安でしょう。


疑似プロジェクトのようなものもベストな手法とは限らないでしょうが、実業務に近いカリキュラムのひとつとしては有力な選択肢ではないかと思って紹介してみました。


ドメイン知識の習得とひとことでいっても、正解が決まっているわけではないので基本的には試行錯誤の連続になるのでしょうけれど、こうしたこともチームで色々と考えながら取り組めると成果も大きくなるのではないかと思っています。